ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

Sn3n0064
(公開2日目にして売り切れ続出の特設エヴァグッズ売り場)
  先週金曜日のTVで劇場版第二作「」再映後冒頭6分38秒を放映するという、過去に例を見ない宣伝戦略に打って出た「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」が翌土曜日に公開されました。私は最初から映画館で観たかったので金曜日の映像は見ずに昨日の日曜日に行ってきました。
 「序」「破」とオリジナルを踏襲しつつ新たな展開を見せていた劇場版ですが、ここに来て全くオリジナルから逸脱し、完全新シナリオの「新たなる物語(パンフレットより)」となっておりました。ファンサイトや2CHでは早くも賛否両論沸騰しておりますが、とにもかくにも映像、新しいエヴァや新戦艦の造型、音楽、音響、声優、どれをとっても日本のアニメの質の高さを実感できる、とても見応えのある映画となっておりました。

『 2012年 日本映画 制作:スタジオカラー 配給:ティ・ジョイ、カラー
(同時上映: スタジオジブリによる特撮短編映画『巨神兵東京に現わる 劇場版』)

スタッフ:

企画・原作・脚本・総監督: 庵野秀明
監督: 摩砂雪前田真宏鶴巻和哉
主・キャラクターデザイン: 貞本義行
主・メカニックデザイン: 山下いくと
テーマソング: 宇多田ヒカル桜流し」(EMIミュージック・ジャパン)
音楽: 鷺巣詩郎

声優:

碇シンジ: 緒方恵美
アヤナミレイ:林原めぐみ
式波・アスカ・ラングレー宮村優子
真希波・マリ・イラストリアス坂本真綾
渚カヲル石田彰
碇ゲンドウ立木文彦
冬月コウゾウ清川元夢
葛城ミサト三石琴乃
赤木リツコ山口由里子 』

  12月25日に修正しています。ほぼ公開も終了したので、伏字を解除します。

 まずはTVで公開された冒頭の宇宙での戦闘シーン。いきなりクライマックス!、と思わせるくらい見事な映像でした。ここでまずアスカが登場。左目に眼帯をしていますが生きていましたね、とりあえず良かったです。搭乗するのは大破した2号機を修理改造したエヴァ改2号機です。もう一体のエヴァは鮮やかなピンク色の8号機パイロットは誰になるか楽しみにしてましたがやっぱりマリでした。気が強く文句の多いアスカとそれをさらりと受け流すマリのコンビは、陽性の新しい魅力があります。

 ちなみに相変わらず気が強く口の悪いアスカはマリの事を「コネメガネ」と呼んでいます。マリが碇ゲンドウのことを「ゲンドウ君」と呼んでいたり、物語途中で冬月がシンジに見せる母ユイの写真にマリらしき人物が写っていたりするので、碇の家族と何か血縁があるのかもしれません。

 閑話休題、彼女たち二人がミサトの命を受けて何とか回収したのはエヴァ初号機でした。「破」において初号機が覚醒し、サードインパクトを起こしかけたところで渚カヲルエヴァ6号機で降臨し、サードインパクトを食い止めたはず。。。だったのですが、詳しくは語られないものの「ニアサードインパクト」なるものが起こり、地球上は相当の壊滅状態に陥ったようです。その責任を追及され、初号機はシンジとレイを載せたまま封印され宇宙に追放されてしまったという設定です。

 そしてこれが一番の驚きですが、それから冒頭の初号機回収シーンまでなんと

14年

の歳月が経過しております!にもかかわらずエヴァ・チルドレンは外見がそのままです。その理由をアスカは「エヴァの呪縛」とシンジに説明しています。何と便利な設定、というか、エヴァファンの呪縛じゃないですかね(笑。ちなみにミサトやリツコ、ゲンドウなどはそれなりに年齢を重ねた風貌になっております。

 さて、なんで14年も経ってから初号機の回収作戦をミサトは敢行したのか?放映された冒頭のシーンにおそらくミサトが映っていたと思いますが、彼女がいるのはネルフ本部でない事は明らかです。彼女はニアサードインパクトが作為的に起こされたのではないかとゲンドウたちの計画に疑問を抱き、リツコたちとともにネルフを離反し、今はWILLE(ヴィレ)と名乗る敵対組織のリーダーとなっていました。ちなみにアスカとマリもミサトについていったわけですが、ネルフがよくもまあ簡単に彼女らとともにエヴァ2体を手放したもんです。そのあたりの説明や14年間の経緯は全く描かれません。

 ちょっと話がそれてしまいましたが、彼女が乗っている旗艦AAA Wunder動力源としてエヴァ初号機が必要だったので回収させたという設定です。ちなみに何で初号機が動力源になるのか、全く説明はありません。改2号機や8号機ではダメなんでしょうかね。

 さて、おまけとしてついてきた碇シンジ君ですが、14年間眠り続けていた彼も当然ながら外見に何の変化もありません。拘束され調べられ、覚醒してからもミサトには「エヴァに乗る必要はない」と冷たく言い放たれ、アスカからは「バカシンジ」と罵倒され、訳が分からないまま、首には「万が一エヴァに搭乗して覚醒したら殺す」とチョーカーを巻かれる始末。彼がニアサードインパクトを起こしたのですから、隠すのは温情なんでしょうけれど、何の説明も受けられないのはあまりにも可哀想。この映画は徹底してシンジには冷たい(苦笑。

 そして動力源を得たAAA Wunderはいきなりの敵の攻撃に試運転も何もないまま発進、見事敵(使徒っぽいんですがネルフの攻撃なんでしょうかね?)を撃破します。このAAA Wunderの造型は一見の価値あり、凄いです。

 さて、戦闘に加われず隔離されているシンジ君ですが、綾波レイは回収された初号機には存在せず、残っていたのはDATレコーダーだけだったと聞かされ意気消沈しております。そこに突然レイの声が聞こえてきます。「なんだ生きていたんじゃないか!」と喜ぶシンジ君の部屋の外壁が破られ、レイの乗るエヴァの手が伸びてきます。ミサトたちはシンジを制止しますが、シンジは自らの意思でエヴァの手に乗り移り、そのままネルフ本部へ。

 ここで描かれるネルフは昔のネルフとは大違い、まるで廃墟です。ジオフロントまでの隔壁が悉く破壊されたままで、何と空が見えます。ちなみに碇ゲンドウと冬月しか人間は描かれていません。組織としては崩壊してるんじゃないかと思えるほどで、一体ミサトたちはこんなネルフと本当に敵対してるんでしょうかねえ?

 上に載っていた第三新東京市はおそらくニアサードインパクトで崩壊したとみられ、影も形もありません。おそらくトウジたち友達も死んだ、とシンジに思わせるシーンが一回だけ出てきます。

 さて、シンジが再会した(と思った)レイは明らかに別のクローン。シンジの記憶もなく、物語最初の頃のような無機質なロボットのような感じに戻っています。ちなみにクレジットには「アヤナミレイ」とあります。そのレイにつれられて歩くシンジの耳にピアノの音が聞こえてきます。

 ここでYAMAHAのグランドピアノを弾くカヲルが登場。以後中盤は濃厚にホモセクシュアルな雰囲気が漂うシンジカヲルの親密な交感の時間が流れていきます。そのカヲルにニアサードインパクトの真実と現実世界の惨状を見せられ、またも凹むシンジ君。それを励ますカヲル。カヲルはセントラルドグマリリスに刺さったロンギヌスの槍カシウスの槍があれば世界を元に戻せると告げ、更にはシンジの首のチョーカーを外して自らにつけるに至り、シンジ君は完全にカヲル君のトリコとなり、エヴァに載る事を決意します。ちょっと考えればチョーカーを外せるなど、彼が人間とはとても考えられないのに、恋は盲目というやつでしょうか。

 これと平行して碇ゲンドウと冬月の会話、ゼーレのモノリスの封印なども描かれますが、相変わらず難解。とにもかくにもゼーレの人類補完計画を利用したゲンドウのシナリオが最終局面に来ている事だけは間違いありません。とか何とか言いながら14年もシンジをほっといてカヲルも飼い殺しにしてたのは何故?と突っ込みを入れたくなりますが。

 まあとにもかくにも、ダブル・エントリープラグのエヴァ13号機にシンジとカヲルが搭乗、レイの載る9号機を伴い、セントラルドグマへの降下に成功します。しかしそこでカヲルが見た槍はロンギヌスとカシウスではなく双方ともロンギヌス!どういうことだ!?と悩むカヲル、一方もう精神的に完全に前のめりになっているシンジは早く抜こうと焦りまくり。そこへ急襲するアスカとマリ。。。

 果たしてフォース・インパクは回避できるのか?ここから先はさすがに伏せておきますが、最後に一言、クライマックスはカヲルファンには涙無しでは見られない内容となっております。

 まあ、こうやって冷静に振り返ると突っ込みどころ満載ではありますが、見ている間はハラハラドキドキ、何しろ全くの新展開ですから全てが新鮮で充実しておりました。シンジ君がいじめられキャラなのは相変わらずで気の毒ですが、とにもかくにも生き残ります。さて、次回完結編の予告もエンドロールのあとに流れましたが、タイトルは

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」

シンはSin(罪)とかけているのかな、と思わせますが、最後のマークは音楽記号の反復指示ですね。まさか無限ループの展開に!?今までのサイクルより大幅に短縮され、来春公開の予定だそうですが、まあ過度には期待せずに待ちましょう(w

評価: B: 秀作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)