ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

のぼうの城

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Official HPより、この画像をマウスオンしても何も起こりません<m(__)m>)
 水攻めのシーンがあるため、東日本大震災津波被害に配慮して1年間公開が延期されていた「のぼうの城」が先日公開になりました。配慮は当然であったと思いますが、小説(元々は脚本が先でノベライズが後)自体は大変面白かったので、日の目をみてよかったと思います。昨日観てきましたが、映画館の大スクリーンに映える壮大な規模の映画でした。

『 2012年、日本映画、配給:東宝、アズミック・エース

監督 犬童一心 樋口真嗣
原作・脚本: 和田竜

キャスト:野村萬斎榮倉奈々成宮寛貴山口智充上地雄輔山田孝之平岳大、西村雅彦、平泉成夏八木勲中原丈雄鈴木保奈美前田吟芦田愛菜市村正親佐藤浩市 他

第29回城戸賞を受賞した和田竜による脚本「忍ぶの城」を、「ゼロの焦点」の犬童一心監督と「ローレライ」の樋口真嗣監督が共同でメガホンをとり映画化。主演は野村萬斎、共演に佐藤浩市成宮寛貴ほか。舞台は武蔵国忍城(埼玉県行田市)。“のぼう様(でくのぼうの意)”と領民から慕われる城代・成田長親は、天下統一を目指す豊臣秀吉方2万人の大軍を指揮した石田三成の水攻めに、わずか500人の兵で対抗する。(映画.comより)』

 珍しい監督二人体制ですが、犬童一心監督が主体でスペクタクル・シーンに定評のある樋口真嗣が所謂特撮監督という布陣かと考えていましたが、二人のインタビューを読むと、どのシーンも必ず二人がいて作り上げたそうです。それも北海道に壮大なセットを組み、構想から8年かかったといいますから、その苦労は並大抵のものではなかったでしょう。お二人ともお疲れ様でした。

 さてその問題の城の水攻めシーンをはじめとする壮大な戦闘シーンはやはり樋口真嗣ならでは、と感心させられる出来栄えでした。とはいえ、やはり水攻めの場面はカット割りの時間も短めで、人が流されたり溺れたりするシーンは殆どなく、東日本大震災に配慮しての苦心の編集であった事が偲ばれます。仕方ない事とは言え、映画としてはやや迫力に欠ける結果になったことは残念でした。

 また原作では忍城側も緒戦において成宮寛貴演じる知将が水攻めを仕掛けて見事成功するのですが、それも削除され山口智充演じる猛将の援軍になってしまっており、佐藤、山口、成宮各将のバランスと、それぞれの戦い方の違いを丁寧に説明していた原作の良さが生かされていなかったのは残念でした。

 さて、ドラマとしてはもう狂言師野村萬斎の独り舞台と言っていいくらい、萬斎の魅力全開で、彼のために作られた映画と言っても過言ではないでしょう。なにしろこの映画のハイライトシーンが水攻め後、敵方堤近くまで漕ぎ出した船上での田舎田楽の舞いですから、もともと彼以外の選択肢は極めて少なかったと思いますが、その田楽舞はもちろんのこと全編にわたって好演しています。もちろんサポートする俳優陣も豪華そのもので各々熱演していますが、それも独楽の中心にぶれない萬斎いてのことでしょう。
 残念なのは2時間40分という長尺に編集しながら、「のぼう(でくの坊)」が百姓たちに何故あれほど慕われていたのかを十分説明しきれていなかったように思われることです。実は原作小説でもそこがちょっと弱いかなと思っていました。ですから、やむを得ぬ事情で水攻めシーンを短く編集するのであれば、そのあたりを原作以上にオーバー目に描けば後半の「のぼう」を撃たれた百姓たちの怒りに説得力が出たのではないかと思いました。

 と、いろいろ文句はつけはしましたが時代劇娯楽映画として良くできている映画で、大スクリーンで是非ご覧いただきたいと思います。

評価: 佳作: C
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)