ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

おおかみこどもの雨と雪

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 「時をかける少女」「サマーウォーズ」と、良質のアニメを世に送り出している細田守監督が、「スタジオ地図」を設立して最初の作品「おおかみこどもの雨と雪」が先日から公開されています。
 スタッフも脚本に奥寺佐渡、キャラクターデザインに貞本義行と「サマーウォーズ」と同じ強力布陣で、公開前から注目を集めていましたが、週末興行成績では「海猿」に次いで二位の興行収入を挙げているようで、順調な滑り出しです。日テレの宣伝戦略もうまいのでしょうけれど、とにもかくにも良質な邦画アニメに結果がついてくることはまことに喜ばしいですね。
 ただ、今回ちょっと気になっていたのは、おおかみおとこと人間の間に産まれた子ども二人の育児、という今までの細田作品とは随分毛色の違うテーマ。ちょっと無理な設定じゃないかな、と思っていましたが、百聞は一見にしかず、家内と二人で観てきました。

『 2012年 日本映画 製作:スタジオ地図、配給:東宝

監督: 細田守
脚本: 細田守 奥寺佐渡
キャラクター・デザイン: 貞本義行

声優: 声の出演 宮崎あおい 大沢たかお 黒木華 西井幸人 林原めぐみ 他

人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”に恋をした大学生の花。やがて妊娠し、雪の日に女の子の、雨の日に男の子の《おおかみこども》を産む。姉弟は雪、雨と名づけられる。ところが、ある日突然“おおかみおとこ”が帰らぬ人に。遺された花は子供たちを人間として育てるか、おおかみとして育てるか悩み、山奥の古民家に移り住む。日々成長する快活な雪と内気な雨。小学生になった2人にそれぞれ転機が訪れる。(Goo映画等より)』

 まず予想にたがわないクオリティの高い作品であったと感じました。自然描写のクオリティの高さは今のジブリを凌駕するのではないかと思うくらいです。また、おおかみこどもが森の中を駆けるシーンの疾走感の爽快さはハリウッド顔負けの見事さ。そして今回は音楽も素晴らしかったです。ちなみに主題歌はオーディオファイルご用達のアン・サリーが歌っております。狼やおおかみこどものキャラクターデザインも良かったと思います。貞本義行の常で、主人公の男がみんな加持リョウジに見えてしまうのはまあご愛嬌でしょう(w。

 おおかみこどもの幼年期、少女・少年期の描写自体もうまく描けていましたし、脚本もさすが「サマーウォーズ」「八日目の蝉」の奥寺佐渡だけあって御伽噺に堕しかねない物語を破綻なく展開させていき、随所に泣かせどころのポイントも押さえていました。

 が、問題はやはり、あまりにも安易な「おおかみおとこ」と「ひと」との恋、出産、子育て。都会での暮らしの難しさ、田舎での暮らしの難しさ、双方を現在の社会問題も包含しつつリアルに描いているだけに、その中ではどうしても浮いてしまいます。正直なところ母親である主人公の奮闘がすんなりと受け入れられず、違和感、無理無理感ありまくりのシーンが多かったです。このあたりを敢えて気にせずにすんなりと受け入れるか否かで、この映画への評価は大きく割れると思います。

 さて、声の出演者ですが、宮崎あおいは悪くはなかったと思います。細田守が探しに探して彼女に行き着いたそうですが、では絶対に彼女でなければいけなかったかというと、そうでもないような。以前からの私の持論ですが、やっぱりアニメには専門の声優さんを使ってほしい。

 というわけで、良質で日本のアニメのレベルの高さを証明できる映画であると思いますが、テーマ設定自体が今回はちょっと無理がありすぎたと思わざるを得ませんでした。細田氏への今後への期待も込めて、イマイチと評価させていただきます。

評価: D:イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)