ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Little Broken Hearts / Norah Jones

Little Broken Hearts
Little Broken Hearts
 いまや押しも押されもしないビッグ・ネーム、ノラ・ジョーンズの新譜で、オリジナル・アルバムとしては通算5枚目になります。前回の「The Fall」は個人的にはとても良い出来だったと思いますが、さて本作やいかに?

1. Good Morning 
2. Say Goodbye 
3. Little Broken Hearts 
4. She's 22 
5. Take It Back 
6. After The Fall 
7. 4 Broken Hearts 
8. Travelin' On 
9. Out On The Road 
10. Happy Pills 
11. Miriam 
12. All A Dream

 今回もプロデューサーが変更となり、Danger Mouseという聴きなれないミュージシャンが担当しております。シンセサイザー使いの方のようで、一曲目「Good Morning」のたゆたうようなフェイド・インから終曲「All A Dream」の静かに消えいるフェイド・アウトまで、 最小限の楽器とシンセで統一感のある音作りをしています。楽曲も粒揃いで良い意味統一感の取れた、悪く取ればやや小粒なアルバムとなっています。そして少々気になるのは、多くの楽曲でノラのボーカルにまでエフェクタをかけているところでしょうか。彼女の声だけは生のまま聞かせて欲しかったですね。

 今日の一曲でかけたように「Happy Pills」がまずシングルカットされています。軽快なギターのリズムが印象的な曲ですが内容は失恋の歌。そして全体的にもトーチソングが多く、この曲の様に明るい歌はむしろ少なめで「暗い」「地味」という評価が多いのも頷けます。でも一曲一曲をじっくり何度も聴いていると、ノラの真摯で内省的な歌への取り組みに首肯してしまう自分がいます。

 多くの批判する人たちは、やはりデビュー作の「Come Away With Me」のような作品を望んでいるのだと思います。しかし、今の彼女が作る作品はアコースティック・ジャズっぽくもなく、カントリーっぽくもなく、ノラにしか作れない独特の世界を形成しています。

 インパクトが強さからいうともちろんデビュー作が圧倒的で、たとえばノラがもしこのアルバムでデビューしていたとしたら、今ほどのビッグ・ネームにはなり得なかったとは思います。ただ、私としては彼女の創作意欲が衰えない限り、いろいろな事にチャレンジして欲しいし、今後も自らの信じる道を歩んで欲しいと思います。

 秋には来日公演も決定していますし、できれば久しぶりに彼女のライブに参戦して実際どう昔と変わっているか、見てみたいと思います。