ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Secret Symphony / Katie Melua

Secret Symphony
 Katie Meluaの新譜が届きました。前作「The House」で育ての親ともいうべきプロデューサーであるマイク・バットから少し距離を置き、独り立ちを目指したケイティでしたが、以前レビューしたように、残念ながら成功作とは言いがたかったと思います。
 本人もそのあたりを自覚していたのか、本作では再びマイク・バットがプロデュースと編曲を全曲で担当し、美しいメロディ・ラインと多彩なアレンジが復活、ケイティの歌声も吹っ切れたのびやかなものとなっており、快作だと思います。

1. Gold in them Hills 
2. Better than a Dream 
3. The Bit That I Don’t Get 
4. Moonshine 
5. Forgetting All My Troubles 
6. All Over the World 
7. Nobody Knows You When You’re Down and Out 
8. The Cry of the Lone Wolf 
9. Heartstrings 
10. The Walls of the World 
11. Secret Symphony

 11曲のうち、マイク・バットが6曲の作曲に関わっており、ケイティ一人で作った曲は5だけとなっています。カバーは3曲で1がRon Sexsmith、4がTravisFran Healy、7はベッシー・スミスの歌唱で有名になった古いブルースで作者はJimmy Coxという人です。

 基本はアコースティックのギター、ベース、ドラムというシンプルな構成で、このアコの音色はとても美しいのですが、更に「The Secret Symphony Orchestra」というマイク・バットがタクトを振るオケが各曲の編曲を多彩にしています。まあ早い話が「Pictures」の世界が戻ってきた感じですね。一曲目はRon Sexsmithのカバー曲なんですが、もう完全にマイク・バット・サウンドになっており、彼のサウンドが好きな人には安心して聴けるアルバムとなっております。スタンダードの7なんかは当時のブルース・アレンジを踏襲しており、これも粋な編曲。

 そのサウンドをバックに歌うケイティはのびのびとしており、あのどこか郷愁を誘う声にさらに艶がのって良い雰囲気を醸し出しています。全曲平均点レベルをクリアしていると思いますが、自作の5「Forgetting All My Troubles」、バットとケイティの共作で粋な歌詞としっとりとしたケイティ節が印象的な8「The Cry of the Lone Wolf」、タイトル曲である終曲「Secret Symphony」などがとても美しいバラードで、本アルバムの聴き所でしょう。とは言え、代表作ともいえる「The Closest Thing To Crazy」をしのぐような、おおっと驚くキラー・チューンには今回もお目にかかれなかったのはいささか残念。

 最後に録音ですがDramaticoレーベルの音質はとても良いと思います。ということで輸入盤が買い、だと思います。