ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]
 三浦しおん直木賞作品を映画化した「まほろ駅前多田便利軒」です。リーブル系の映画館でポスターを見て、観たいなあと思っていました。瑛太松田龍平という、個性派俳優二人のキャスティングが期待を抱かせますが、まずまずの出来栄えでした。

『2011年 日本映画

監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをんまほろ駅前多田便利軒」

キャスト
瑛太松田龍平片岡礼子鈴木杏本上まなみ柄本佑、横山幸汰、梅沢昌代、大森南朋松尾スズキ麿赤兒高良健吾岸部一徳

ペットの世話、塾の送迎代行、納屋の整理、そんな仕事のはずだった-。
東京郊外のまほろ市で、けっこう真面目に便利屋を営む、しっかり者の多田啓介。そんな多田のもとに、風変わりな同級生、行天春彦が転がり込んできた。1晩だけのはずが、行天は一向に出て行かず、多田はしぶしぶ便利屋の助手をさせることに。こうして、水と油のような2人の奇妙な共同生活が始まった。
多田便利軒を訪れるのは、まほろ市に住むくせ者たちばかりで、なんだかんだと彼らを放っておけない多田と行天は、やっかいごともしぶしぶ請け負っていたが、やがてある事件に巻き込まれていく-。
ともにバツイチ、三十路の男2人の痛快で、やがて胸に熱く迫る便利屋物語が始まる-。(AMAZON解説より)』

 ペットの世話、塾の迎え、バスの間引き運転がないかどうかの監視、そんななんでもない仕事に、風変わりな同級生が絡んできて仕方なく同居を始めたと思えば、夜逃げやヤクの密売などという思わぬトラブルが絡んできて、と、演出の仕方によってはコミカルなドタバタ劇にもなりうるストーリー展開ではあるのですが、そんな期待とは裏腹に結構ダークな色調でドラマは進んでいきます。

 そして裏に隠されていたテーマが実は、主人公二人の歪んだ親子のあり方だったりするあたり、感動する人もいれば、そういう映画ってちょっと食傷気味かなあと辟易する人もいると思います。
 この二人が喧嘩しては仲直りしたり、とんだトラブルに巻き込まれたりして、最後には過去の傷を引きずらず前向きに生きていこうとする姿はそれなりに良く描かれているとは思うのですが、演出がちょっと重いかな、と思いました。日本映画独特の「間」を大切にした演出と言われればそうなんでしょうが、その割には心に染み入ってくる度合いが少ないかな、と。
 そう言えば漫画の「フランダースの犬」が頻繁に映し出されて、

「主人公のネロが最後に死ぬのはハッピーエンドなのかどうか?」

という問いかけが一つの鍵となるのですが、面白くて分かりやすい分やや安っぽいかなと思わないでもありませんでした。

 さて、そのような内容はともかくとして、瑛太松田龍平はそれぞれにその個性をうまく出していたと思います。瑛太は、過去に引きずられ前に進めないまま、淡々と便利屋をこなしていく主人公の日常を、抑え気味の演技(演出)でうまく表現していました。松田龍平も変わり者でありながら実は彼も過去を引きずっているという役柄を、彼の個性そのままに演じていて、今の日本映画において貴重な人材だと再認識させてくれました。先日紹介した「探偵はバーにいいる」においてもそうでしたが、主役に絡む準主役をやらせると当代一かもしれませんね。

 ということで、やや地味でダークではありますが、佳作だと思います。特に主役二人のファンには必見でしょう。

評価: C: 佳作
((A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)