ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

山本二三展@神戸市立博物館

Humikiri
踏切 時をかける少女、2006)
 神戸市立博物館で催されている、日本を代表するアニメーション画家・美術監督である山本二三(にぞう)の展覧会を観てきました。山本氏みずからが選択した、アニメーション用の背景画、その前段階のスケッチ、イメージボード(監督の要請をうけて描くアニメーションのための下絵)など約180点を一堂に紹介する展覧会です(神戸市立博物館HPより)。

 山本二三氏の代表作としては「未来少年コナン」(1978)、劇場版「じゃりん子チエ」(1981)、「名探偵ホームズ」(1982)、「天空の城ラピュタ」(1986)、「火垂るの墓」(1988)、「もののけ姫」(1997)、「時をかける少女」(2006)などがあり、いずれも細密な描写、しっかりとした構図の中に詩情溢れる世界を構築されています。

Shishigami
獅子神の森もののけ姫、1997) 個人的にはスタジオジブリのアニメーション美術の最高峰と思っている「もののけ姫」の獅子神の森、獅子神の島が特に興味深かったです。展示解説によりますと、山本氏は

「頭が痛くなるほど描いた。死んだら棺桶に入れてほしい」

とまでおっしゃっておられます。渾身、とはまさにこういうことを言うのでしょう。

 一方、光の輝きとさまざまな表情を見せる雲の描写が氏の持ち味で、その雲は「二三雲」と呼ばれているそうです。一番有名なのはジブリの作品の中でもとりわけ人気の高い「天空の城ラピュタ」の積乱雲、そして冒頭の細田守監督の傑作「時をかける少女」の背景画でしょう。この二作品の様々な背景画も映画の一シーン一シーンを鮮明に思い起こさせてくれました。

 その他にも神戸周辺を入念に取材した成果である「火垂るの墓」、ポスターカラーではなく水彩画で描きあげたという「じゃりん子チエ」などが印象に残りました。

 最近のジブリのクオリティの低さはこの人がいないからか?と勘ぐってしまいたくなる程というのは半分冗談半分本気ですが、とにもかくにも日本の高度なアニメーション美術をこれからも是非牽引していっていただきたいと思います。

 獅子神の森の限定サイン入りの額装画が十万円で出ていたのに後ろ髪を引かれつつ、博物館を後にしました。9月25日まで催されていますので、お近くの方は是非どうぞ。