ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

プリンセス・トヨトミ

Princesstoyotomi
 「プリンセス・トヨトミ」を観てきました。先日ご紹介した万城目学の同名小説の映画化で、華々しいTV等マスコミでの宣伝効果もあってか観客動員も好調なようですが、昨日は平日と言う事もあってか、夕方からの上映時間にもかかわらず入りはまばらでした。
 まあ、それはともかく問題は映画の出来なんですが、これが竜頭蛇尾と言うか大山鳴動鼠一匹というか、終盤の処理を誤った感が否めず惜しいなあ、というところでした。元々が「豊臣家の末裔を守るための大阪国」という荒唐無稽の大風呂敷を広げておきながら、最後の対決でテーマを父と子の絆にすり替えて無理矢理終わらせるという、やや尻すぼみ的小説でしたので、そこを映画らしく作り変えて盛り上げて欲しかったのですが。。。

『 2011年 日本映画

監督: 鈴木雅之 
原作: 万城目学 
脚本: 相沢友子 
音楽: 佐橋俊彦 
エンディングテーマ: ケルティック・ウーマン 『princess Toyotomi ~永遠の絆』
キャスト: 堤真一綾瀬はるか岡田将生沢木ルカ森永悠希笹野高史和久井映見中井貴一

 東京から大阪にやって来た3人の男女。彼らは国の予算が正しく使われているかを調べる会計検査院の調査官たち。リーダーは、超エリートにして、税金の無駄遣いを決して見逃さない“鬼の松平”の異名を持つ松平元、その部下で、普段は脳天気ながら時々驚くべき勘を発揮する“ミラクル鳥居”こと鳥居忠子、そして鳥居とは対照的にクールな日仏ハーフのイケメン新人エリート、旭ゲンズブール。調査対象を順調にこなしてきた彼らは、次の調査のため空堀商店街へと向かう。そして、財団法人“OJO(大阪城趾整備機構)”の調査を開始する。それは、何の問題もなく簡単に終了するかに思われたが…。(AllCinemaより)』

 冒頭でいきなり宣伝でも盛大に使われた「大阪全停止」のCG映像で観客を惹き付け、更には綾瀬はるかの胸をありえないほど揺らせて男性観客に大サービスするというアコギな手段は、大変好もしい(笑。
 そしてそこから5日前に遡り物語を開始する、というのは常套手法の一つではありますが、とりあえず上手いと思いました。

 原作のレビューでも述べましたが、鳥居(綾瀬はるか)とゲンズブール岡田将生)の性別を入れ替えたキャラ設定も、いかにも映画的でかつ今が旬の人気俳優二人を活かす上でも効果的だったと思います。
 そして対決する二人会計検査院堤真一と大阪国大統領中井貴一の存在感と演技力も主役に相応しいものであったと思います。大阪弁が関西出身の堤真一でさえやや違和感があったのはご愛嬌でしょう。
 と、この辺までの導入部は比較的快調でした。

 が、性同一障害に悩みいじめられる大統領の息子と彼の幼なじみであるプリンセス・トヨトミ(ちなみにOJOはお嬢と読むべきで王女ではおかしいと思う)の二人のエピソードあたりから歯車が狂い始めます。原作を省略改変するのはある程度仕方ないにしても、子役の演技が今一つである上に扱いがぞんざいです。そして積極的に綾瀬はるかと絡ませる脚本が災いし、後半話の流れに整合性を欠いてきます。
 映画は子役を光らせないと生気が失せるもの、だからこのあたりで早くもペースダウンしてしまいます。

 でもって、原作とは異なるトンデモな勘違いで大阪国民を招集してしまうことになるのですが、まあそこはそれ、亀山千広の豪腕でしょうか膨大なエキストラを使い、CGを駆使した「大阪全停止」シーンは見応えがあります。
 個人的にはそのあたりから原作を離れた壮大なアクションシーンなり、主役二人の丁々発止の絡みなどを期待したんですが、残念ながら冒頭にも述べたようにプリンセス・トヨトミはどこへやら、父と子の絆を強調した話し合いを落としどころとし、更には堤真一が銃撃されたにもかかわらず、怒りも怨みもせずに譲歩してしまうという、原作の改変には唖然。。。
 ついでに言うとゲンズブールこと岡田将生に与えられた密命の内容の変更にも少々ガッカリ。彼、良い雰囲気を出していただけに余計に残念でした。
 結局原作に忠実に作った方がまだしも良かったようです。

 もっとトホホだったのはエンディングの時代劇シーン。あんなの入れるくらいなら暴力団事務所の代紋騒動の結末をコミカルに描いて欲しかったと思ったのは私だけではないはず。。。

 まあ、細かいところで関西では人気のアナウンサー、ヤマヒロさんこと関西TVのアナウンサー山本浩之がメインキャスターの番組「アンカー」が出てきたり、鹿男こと玉木宏がチョイ役で出ていたりしていたところなどは楽しめました。

 というわけで綾瀬はるかファンには美味しいプレゼントが用意されているけれど、TV宣伝に期待していったファンには落胆の落とし穴が待っているという結構リスキーな映画なのでした。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)