ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

カンディンスキーと青騎士展@兵庫県立美術館

Photo
 (花嫁、カンディンスキー、1903)
 4月26日から「カンディンスキーと青騎士」展が兵庫県立美術館で開催されております。ミュンヘンのレンバッハハウス美術館に収蔵されているカンディンスキーを中心とした絵画が多数展示されており、堪能してきました。

『20世紀初頭のドイツ・ミュンヘン。ロシア生まれの巨匠ヴァシリー・カンディンスキー(1866-1944)は、仲間とともに斬新な絵画作品を生み出し、1911年、新しい美術運動を展開させるべくグループを結成しました。それが「青騎士」です。
彼らは展覧会の開催や書籍の刊行を通して、モダン・アートの歴史に輝かしい足跡を残しました。
 この展覧会では、カンディンスキーの伴侶であった画家ガブリエーレ・ミュンター旧蔵の作品を中心に、ミュンヘン市立レンバッハハウス美術館が所蔵する世界屈指の青騎士コレクションのなかから、代表作を含む約60点の作品と当時の写真や資料によってこの美術運動を紹介します。(兵庫県立美術館HPより)』

 ミュンヘン市レンバッハハウス美術館は、20世紀初頭の革新的芸術運動「青騎士」グループの世界的コレクションで知られています。この大邸宅の持ち主であったレンバッハ自身は青騎士とは関係が無く、当時相当裕福な肖像画家だったそうで、今回もビスマルクの肖像が展示されていましたが、なかなかの大作でした。

 閑話休題、この展覧会はレンバッハハウス美術館の全面的協力により、日本では初めて「青騎士」グループの活動を本格的に紹介しています。カンディンスキー、ミュンター、ヤウレンスキー、ヴェレフキン、マルク、マッケ、パウル・クレーなど約60点。そしてその中心はやはりカンディンスキーで、彼の初期の具象的な作品から後期抽象画まで系統的に追える構成となっていました。

 作品的には、初期の素描画的試みが見られるもののまだ具象を残している「花嫁」や、後期の簡素化された構図を重ねそこに強烈な色彩を塗りこめた抽象画、特にシェーンベルクの無調音楽のコンサートに触発された「印象III」や後期の傑作のハーフサイズの習作「《コンポジションVII》のための習作」が強く印象に残りました。

Photo_4ムルナウ近郊の鉄道、カンディンスキー、1909) 一方で系統的に追いかけてみると、第二章「ムルナウの発見」と題された部屋の1908-1910年の作品群の画風の変化がとても興味深かったです。ミュンヘン南方のアルプスに程近い風光明媚なムルナウという村を発見しミュンターとともに移住、画風の確立に没頭した時期で、ごく短期間の間に劇的に具象から抽象への移行したその過程が良く理解できる印象的な展示室でした。特に「ムルナウ近郊の鉄道」は簡素な構図と色彩が抽象を志向していながらも、郷愁を覚える風景画の趣もある面白い作品でした。

Photo_3 (虎、マルク、1912) その他の「青騎士」と称される芸術家たちの作品も、一くくりにされてはいるものの夫々に個性があり面白かったです。クレーが一品だけというのは少々寂しかったですが。
 その中でもマルクマッケの色使いなどは興味深かったです。しかし、残念な事にこの二人は1914年に勃発した第1次世界大戦で若くして戦死しました。その後カンディンスキー等もドイツを離れ、「青騎士」活動は短期間で幕を閉じます。

 以上、カンディンスキーを中心としたモダンアートの萌芽期の興味深い作品群が展示されている特別展で6月26日まで開催されていますので、機会があれば是非どうぞ。