ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

阪急電車 片道15分の奇跡

Hankyudensha
 私の地元ではかなり話題になっております「阪急電車」を観てきました。主な舞台である阪急今津線(宝塚~西宮北口)だけでなく、しっかり神戸界隈の観光スポットも押さえてありました(w。

『 2011年 日本映画

原作 有川浩
監督 三宅喜重
脚本 岡田惠和

キャスト
中谷美紀 戸田恵梨香
南 果歩 谷村美月 有村架純 芦田愛菜 小柳 友/勝地 涼/玉山鉄二
宮本信子

宝塚~西宮北口間を約15分で走る、えんじ色の車体にレトロな内装の、阪急今津線
その電車に、さまざまな「愛」に悩み、やりきれない気持ちを抱えながら、偶然乗り合わせただけの乗客たちがいた。

後輩に婚約者を寝取られたOL。
彼氏のDVに悩む女子大生。
息子夫婦との関係がぎくしゃくしている老婦人。
セレブ気取りの奥様たちとの付き合いに疲弊する平凡な主婦。
おしゃれな大学になかなか馴染めない地方出身の男女。
年上の会社員と付き合いながら憧れの大学を諦めきれない女子高生。

電車内という限られた空間で、それぞれの人生がほんのちょっと重なり合い、影響し合い、そして離れていく―――。
東宝WEB SITEより)』

 人気作家有川浩さんの原作の緻密に構成された多様な人間模様をどう映画化するのかな、と以前から楽しみにしておりましたが、原作に比較的忠実なオーソドックスな作りとなっていました。
 沢山の登場人物と彼等彼女らにまつわるエピソードが数珠繋ぎ的に出てきますので原作を知らない人には把握が大変だろうなと思っていましたが、脚本の岡田氏は結構うまく処理していました。
 まず冒頭で主要な登場人物のバックグラウンドを短時間のカット割りで次々に説明し、その後タイトルロールが流れ、本編往路の話が始まる、という手法。それが功を奏し、すんなりと物語の世界に入っていく事ができました。

 東宝の解説にあるように、大きなものだけで6つの物語がありますから、電車の中でほんのちょっと関わりを持たせつつどんどん場面は変わっていきます。単純に考えて2時間程度の映画なら一つのエピソードに片道10分ずつ位しか時間をかけられないはずなんですが、その割りに関西弁で言う「忙しない(せわしない)」感じがしないし、どのエピソードもだれたところが無かったのは脚本と監督の演出の腕でしょう。ちなみに通常運転の合間に臨時電車を出してもらっての撮影だったそうですから、ミスカットを出すとやり直すのが大変ですから、スタッフもキャストの皆さんも大変だったでしょう。

 どのエピソードが良かったかと問われると、まあどれも平均点で、飛びぬけたものはなかったです。敢えて言うと中谷美紀さんが演じた「寝取られたOL」編に力が入っていたとは思いますが。ちなみに映画の冒頭で別れ話を持ち出される場面に用いられた、贅を尽くした豪華な建築の喫茶店は三宮のフロインドリーブ本店です、多分。あんなとこで愁嘆場になると分かっている別れ話をするか、普通(苦笑。
 そしてさすが、と唸らせるのが貫禄の祖母役宮本信子さんと上手い子役の芦田愛菜ちゃんのコンビ。原作を読んだ時この祖母役が成功の鍵を握るんじゃないか、と思っていたんですが、宮本信子さんとはちょっと意表をつかれました。そしてその凛とした演技に脱帽してしまいました。その宮本さんに一歩も引けをとらず絡む愛菜ちゃんも見事ですが。
 一番コミカルな田舎者大学生同士のカップルもなかなか良かったです。彼らだけCGも使ってコミカルな面を強調してるところも、ベタとは言え心憎い演出。

 映像もジモティだけでなく、どなたでも楽しんでいただけると思います。阪急電車というのは関西では一番上品な路線だと言われております。それだけに沿線の風景も美しいですし、各駅の雰囲気などもうまく描いているなと思いました。

 というわけでホノボノ系の佳作と思います。唯一残念だったのは、阪神大震災がらみのエピソードがばっさりカットしてあったこと。以前見たメイキングのニュースではそのシーンもあるように思われたのですが、今回の東日本大震災に配慮したのでしょうか。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)