ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

白夜行

Byakuyakou
はむちぃ: 皆様こん**は、本日の映画レビューは只今公開中の「白夜行」でございます。
ゆうけい: 先日東野圭吾の原作をレビューしたもので、気になっておりました。
は: 実はこの原作、TVドラマ、韓国映画についで3回目の映像化だそうでございます。
ゆ: らしいですね。TVドラマは殆ど観ないので全く知りませんでしたが、綾瀬はるか山田孝之主演だったそうで、それなりに惹かれますね(笑。
は: TVドラマですと、比較的十分な時間を取れますが、映画ですと2~3時間という制約がございます故、あれだけの長編の映画化となると難しい面がございましょうね。
ゆ: ひとえに脚本の出来にかかってくると思いますね。前回の原作レビューを再掲しますと

19年にも及ぶ長い期間の二人の心の闇の深さを敢えて二人に語らせることなく終わってしまう事によってそれなりに深い余韻を残す小説ではあると思うのですが、ではこれを映画にすると、この心の闇を上手く描けるのか?19年の物語をどう取捨選択するのか?最初の殺人事件の原因となる背徳的・非倫理的な真相をどこまで描くのか?そして堀北真希はどの年代から上を演じるのか?

といったところに興味がありましたが、さてどうだったでしょうか?

『2011年日本映画、149分

監督:深川栄洋
原作:東野圭吾
脚本:深川栄洋、入江信吾、山本あかり

キャスト:堀北真希高良健吾船越英一郎戸田恵子田中哲司姜暢雄

昭和55年、廃ビルの中で質屋の店主が殺された。刑事の笹垣は被害者の10歳の息子・亮司と会い、彼の暗い目に驚く。殺害された日、被害者が西本文代という女性の家を訪ねていたことが判明。文代には雪穂という10歳の娘がいた。やがて文代が自殺し、被疑者死亡のまま捜査は終了するが、笹垣は納得できないままだった。数年後、雪穂は遠縁に引き取られ、美しい女子高生に成長した。ある日、雪穂の同級生がレイプされる事件が起こる。(goo映画等より)』

は: う~む、これは原作ファンから大ブーイングが来そうでございますね。
ゆ: やっちまったな~、をい。
は; 久々のクールポコですか(-_-;)。勿論時間の制約上登場人物を削ったり、ある程度ストーリーを改変したりする事は止むを得ないんですが、これは相当ひどいですね。
ゆ: 質屋の店主が殺されて次々と関係者や容疑者が登場し、様々な伏線が提示されるあたりはテンポも良くってこれはいけるな、と思ったんですけどね。
は: 肝心の主人公二人の成長とそれとともに起きる事件を描き出してから急に展開が性急にかつ平板になってしまいました。
ゆ: そこから主演の二人が出てくるんで、つまらなくなっては困るんですが(ーー;)。あれを省くか?、あの人物とこの人物を一緒くたにするか?、のオンパレード。
は: それでも人物が活き活きとしていれば許せるんですが、出てくる人物みんな生気がなくて原作よりくすんでしまっておりました。
ゆ: これじゃ映画としての魅力も半減です。ストーリーにしても、分かり易い展開と言う好意的な見方ができないわけではないけれども、あれだけの原作の映画化にしてはお粗末な脚本と言わざるを得ないですね。

は: 特に主人公である亮司雪穂の凄みのある悪徳と壮絶な生き方が十全には描けていなかったと思います。
ゆ: 亮司は原作ではもっと怜悧で頭の切れるワルなんですが、あれじゃ女の言うままにレイプと殺人を行うだけの平凡な犯罪者にしか見えませんね。
は: ただ一人刑事の笹垣の執念の捜査だけが目立っておりました。
ゆ: その時点でこの物語がノワール小説から刑事ドラマに変質してしまいました。その刑事に船越英一郎を使えば、彼がどんなに頑張っていい演技をしても見る方は2時間ドラマを連想してしまいますよ(-_-;)。

は: というわけで起承転結は良くて承転でだれてしまい、はこれまた原作から大きく改変されてしまいました。
ゆ: 当初の殺人事件の真相を明らかにするシーンは映像ならではの見るべきものがあるとは思いましたし、原作を知らない方にはそれなりの衝撃を与えると思います。が、大詰めの場面で笹垣亮司をやっと見つけた時のあの言語明瞭意味不明の臭いセリフは一体なんですか?そして亮司のとった行動にどんな意味があるんですか?
は: わざわざ原作から大きく変更する意味が理解できませんね。
ゆ: 船越英一郎の刑事役の演技を引き立てるだけの効果しかないですよね。あれじゃ原作を知っている人間は勿論、知らない人間も納得できないんじゃないでしょうか。

は: というわけで主人公二人を演じられた高良健吾様と堀北真希様には気の毒でございました。
ゆ: 特に高良健吾は可哀想ですよね、あれじゃ端役扱い。もう少し刑事笹垣の出番を減らして、原作どおりの怜悧冷徹なワル役を増やしてあげればいいのにと同情してしまいました。彼なら相当の演技ができたと思うけどねえ。
は: 堀北真希様はおそらくホリプロがこの映画で大人の女優へのステップアップを図ったのでございましょうね。
ゆ: その分、確かに高良健吾よりは出番も多く、演技もそれなりに頑張っていたと思います。しかしながら
高校生から大学時代の演出が、どよ~んと暗いので彼女本来の魅力が全然出せないまま後半に突入していくのですね。これはもう脚本と演出の問題ですわ。笑わなきゃ演技派にできるとでも思っているんですかね、スタッフさんは。。。

は: その時点でもうホリプロ側の目論見が崩れておりますか。。。
ゆ: で、金持ちのボンボンと結婚して自らブティックを成功させる大人の時代ですが、顔も体つきもこじんまりとしているので、ブティックのオーナーとして余り見栄えがしない。それはともかく、おそらく背中だけのセミヌードも辞さずに挑んだ、義理の妹
を説得して自分に屈服させるシーン、最後の本心を見せずに事故現場から立ち去るシーンあたりに演技派としての評価を欲しかったのだと思いますが、残念ながらどう贔屓目に見てもまだ女優として成熟しきっていない彼女には不釣合い。
は: ご本人は頑張っておられただけに残念でございます。
ゆ: ミスキャストと言うか、原作のミスチョイスと言うか。

は: と言うわけでございまして、ノワール映画と言うよりは一人の刑事の生涯をかけた執念の捜査を描いた刑事ドラマとしてご覧になられるほうがよろしいかと存じます。
ゆ: その分深みはありませんが分かりやすいことは確かですね。あと一言言わせていただければ、最初の事件が起こる大阪の下町が全く描かれていない。一体どこの事件なんだと、で、エンドロールでビックリ、松本ロケ???責任者出てこ~い(故人生幸朗師匠風)
は: 出てきたらどうすんねんこの~泥亀!(故生恵幸恵師匠風)
ゆ: おかあちゃん、ゴメンチャイ!ところで、この監督蒼井優ちゃんの新作も撮ってるらしいねえ、大丈夫かねえ。
は: まあそれはともかく、「白夜行」の評価をお願いします。
ゆ: かしこまりました。これはもうこのポジションしかないのでは、と。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)