先日のハイエンドオーディオショウで柳沢先生がソプラノ歌手幸田浩子さんのアリアをかけておられましたが、タイミング良く彼女の4枚目の新譜「天使の糧(パン)」が出たので買ってみました。試聴会で聴かせていただいたような鬼気迫る圧倒的な迫力のコロラトゥーラはやはりオペラのアリア集でしか聴けないようですが、このアルバムは親しみのある、静かに心に沁みるような曲が揃っておりました。
1. 天使の糧(フランク)
2. あなたが私といてくれたら(バッハ(シュテルツェル)
3. 永遠の源よ ~≪アン女王の誕生日のためのオード≫ HWV74より
4. 輝かしいセラフィムに ~オラトリオ≪サムソン≫ HWV57より(ヘンデル)
5. アヴェ・マリア (エレンの歌III) D.839,Op.52 No.6(シューベルト)
6. アヴェ・マリア(サン=サーンス)
7. ピエ・イエズ (慈悲深きイエス) ~≪レクイエム≫ Op.48より(フォーレ)
8. カーロ・ミオ・ベン (いとしい人よ)(ジョルダーニ)
9. うつろな心 (もはや心に感じられない) ~歌劇≪反対された恋、または粉挽き屋の娘≫より(パイジェッロ)
10. 夜鳴きうぐいす (ナイチンゲール)(ドリーブ)
11. 別れの曲 (悲しみ/練習曲 Op.10 No.3)(ショパン)
12. 愛の夢 第3番 (「おお、愛よ」S.298)(リスト)
13. アニュス(ワルター・ヴェルツォヴァ)
14. 聖しこの夜(グルーバー)
DVD
1. 愛の夢 第3番 (「おお、愛よ」S.298) (ビデオ・クリップ)
2. カーロ・ミオ・ベン (いとしい人よ) (ビデオ・クリップ)
幸田浩子(ソプラノ)
新イタリア合奏団
CD+DVD/録音年:2010年7月25-30日/収録場所:イタリア、パドヴァ近郊、ヴィラ・マルチェッロ
『 ヒット中の第2作《カリヨン》の内容を更にブラッシュアップし、展開させた、オペラ歌手、幸田浩子の素敵なニューアルバムをお届けします。
アヴェ・マリアやピエ・イエズといったヒーリング的な要素を基調にしながらも、ショパンやリストのポピュラーな名曲やイタリアのトップ・ソリストたちと絡むコロラトゥーラのテクニカルなピース、そして、アメリカの気鋭の作曲家による書き下ろし曲まで、幸田浩子の魅力が存分に味わえるバラエティに富んだ選曲が魅力です。
DVDにも収録されている「愛の夢」はフィギュアスケート、浅田真央選手の次期シーズンのフリー曲。また、2011年はリスト生誕200年にあたります。 2011年11月に来日するランツ・リスト室内管弦楽団のソリストとしてツアーに参加することが決定しており、「愛の夢」を歌唱する予定です。(AMAZON解説より)』
一曲目フランクの「天使の糧」の冒頭、新イタリア合奏団の深くてコクのある弦の響きにいきなり感心、録音も良好のようです。そして極上のソプラノボイスが滑り込んでくると、早くも幸田ワールド全開です。磨きぬかれた美しい声質、コロラトゥーラ等の優れた発声テクニックをこれ見よがしではなく、素直にかつ端正に披露している感じです。
有名な曲ばかりですので特に解説も入らないのですが、個人的にはフォーレのレクイエムが好きなこともあり、7曲目の「ピエ・イエズ」は特に印象的でした。コルボ指揮のボーイ・ソプラノやアナ・クインタンスで聴きなれた曲ですが、幸田さんのソプラノはそれに比しても凄く深み・ボディ感があるように思いました。解説の小山晃氏が書いておられるように
「声質・技・歌唱力がいたって緊密なバランスを保って」
聴き手の心に訴えかけてきます。
そしてもう一曲このアルバムにはレクイエムが収録されています。13曲目の「アニュス」がそうなのですが、これがまた言葉を失うほど素晴らしい。実はこの曲はクラシックではなく、新進のアメリカの作曲家ヴェルツォヴァが彼女のために書き下ろした曲なのです。経緯を解説から抜粋してみますと、
2001年夏にウィーンで作曲家と知り合い、そのとしの9月には曲のメロディが、当時の彼女のウィーンの自宅に送られてきた。あの9.11テロの直後だったこともあり、彼女はごく自然に<ピエ・イエズ>の祈りの詞が口にのぼったという。
それがそのまま歌になりレコーディングに至り、作曲家が手を加えて完成したそうです。
その他、輝かしいセラフィムに、二つのアヴェ・マリア、カーロ・ミオ・ベン、夜鳴きうぐいすなどがとても印象に残りました。ショパンの別れの曲やリストの愛の夢も悪い出来ではないですが、やや手垢がついている感が否めません。というかセールスを考えた選曲と言うか。。。もちろん幸田さんは真摯に歌っておられるんですけどね。
家族がいるとなかなか大音量では聴けませんが、なるべくみんなの留守を狙って聴き続けていきたいと思います(笑。