ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Le Noise / Neil Young

Le Noise
  まだまだ現役で次々と新作を発表し続ける、元気一杯の気になるおっさん、ニール・ヤングの最新作です。今回はプロデューサーに、自身も優れたミュージシャンであり、なおかつU2ピーター・ガブリエルのプロデューサーとしてスタジオ録音の裏の裏まで知り尽くしているダニエル・ラノワを迎えています。個人的にラノワは、彼自身のアルバム「Shine」を拙ブログで2004年度最優秀アルバムに挙げた事もあるほど好きなアーチスト・プロデューサーです。
 ということで、初顔合わせのこのフレンチ・カナディアン同士のコンビのアルバム、期待して買ったのですが、どうもイマイチしっくり来ない。しばらくほってあったのですが今日久しぶりに聴いてみました。

1. Walk With Me 
2. Sign Of Love 
3. Someone's Gonna Rescue You 
4. Love And War 
5. Angry World 
6. Hitchhiker 
7. Peaceful Valley Boulevard 
8. Rumblin' 

Neil Young ( vo, g )
Daniel Lanoit ( producer, various instr.)

 基本的にニール・ヤングのソロ・パフォーマンスにダニエル・ラノワが得意の轟音アンビエントをかぶせてくる感じの仕上がり。それはそれでああラノワだなと思わせてくれますが、そんな中にぽつんとニールのソロの弾き語りが入ってくると、どうしてもそっちの方がしっくり来てしまう皮肉。特に淡々と反戦を訴える4曲目の「Love And War」は「After the Gol Rush」の頃のニールの弾き語りを髣髴とさせる良い曲です。

 では何故ニールはラノワと組んで轟音サウンドを構築しなければならなかったのか。例えば5曲目の「Angry World」。「Love and War」のような静かな反戦歌にもその奥に静かな怒りの炎があるように、今のこの世界に対する怒り、反骨精神のようなものをダイレクトに表現するのにそのようなアレンジを求めたのではないかという印象を受けます。

It's an angry world but no doubt everything will go planned.Yeah it'a an angry world.

という最後の歌詞に続く、歪んだサウンド・イフェクトがその苛立ち、怒りを増幅させているかのようです。

 その他のラノワの仕事でしゃれているなと思ったのは、西部開拓と自然破壊を淡々と弾き語りする7曲目の「Peaceful Valley Boulevard」のニールの声の処理。残響やエコー、ディレイ等の処理により、歌詞の深みを与えている印象を受けます。

 ニールの創作意欲が今なお衰えておらず、それに応えて新しい表現方法をラノワが提供した、メッセージ性溢れる意欲作、とあらためて思いました。ただ、そうは言いつつもちょっと放置してあったように、決してとっつきやすい作品ではありません。興味のある方は時間がある時にじっくりと聴き込んでみて下さい。