ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

チャイコフスキー&ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲 / ヒラリー・ハーン

チャイコフスキー&ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲
 またまた分かりもせんのにクラネタです(大汗。個人的に「美人過ぎるヴァイオリニスト」と呼んでおりますヒラリー・ハーンの新譜です。出てるのはステサンの柳沢功力先生のレビューなどで知っていたのですが、チャイコに手を染めはじめると深みにハマりそうな気がして敢えて避けていたアルバムです(笑。先日のアキュフェーズ試聴会でさわりを聴かされ、これは買わねばなるまいと決心いたしました。

『 Higdon; Violin Concerto Dedicated To Hilary Hahn
1. 1726
2. Chaconni
3. Fly Forward

Tchaikovsky; Violin Concerto In D minor
1: Allegro moderato
2. Canzonetta.Andante
3. Finale.Allegro vivacissimo

Hilary Hahn (vn)
Royal Liverpool Philharmonic Orchestra、conducted by Vasily Petrenko
Recording: Leverpool, Philharmonic Hall, 11/2008(4-6)、05/2009(1-3)
Recording Engineer:Richard King, Andrew Halifax
Deutsche Grammophon GmbhSHM-CD)

待望のチャイコフスキー録音が遂に登場!
カップリングは現代アメリカの人気女流作曲家、ヒグドンの協奏曲世界初録音。

待望のヒラリー・ハーンによるチャイコフスキーの協奏曲 ! 近年まで一般的だった省略や装飾のあるアウアー版ではなく、チャイコフスキーのオリジナル版による演奏。ヒグドンはヒラリーが16歳の頃のカーティス音楽院時代の「20世紀音楽史」の先生で、現代アメリカで人気の高い作曲家。この協奏曲はヒラリーのために書かれた2008年の作品です。
(帯、ライナーノーツより)』

 グドン女史はヒラリーの音楽学校の先生だとか。1962年生まれ、何と私より年下ではないですか。お写真を拝見すると、ちょっとk.d.Langに似た風貌、そしてこのコンチェルトを「ヒラリーに捧げる」となるとLangと同じ性向を感じないでもないですが、まあそれは音楽とは関係無い話で。

 ヒラリーは「この2曲を背中合わせにすると、21世紀はじめのヴァイオリンに開かれた、大きな音楽の可能性を感じる事ができるのです」と述べておりますが、私にはよく分かりません(汗。そう言われれば彼女以前にもシベリウスシェーンベルクカップリングしてますね。

 閑話休題、ヒグドンの協奏曲を通しで聴いてみると、現代音楽と言うよりは真っ当なヴァイオリン協奏曲なのかもしれない。もちろん現代音楽の要素はパーカッションを始めそこかしこに見られますが、映画「August Rush」のコンサートシーンを思い浮かべながら聴けば、まあそれなりに楽しめます。考えてみればハンス・ジマーマーク・マンシーナより年下ですもんね。とにもかくにもその音の洪水の中でもヒラリーのヴァイオリンは冴え渡っておリ、確かに彼女に捧げられ、リハを重ねる事によって修正されていったであろう過程がよく分かるような浮き立ち方をしております。

 で、やっぱりチャイコフスキー。発表当時は悪評ぷんぷんで演奏者アウアーにより勝手に書き変えられたりしていたらしいですが、さすがに4大ヴァイオリン協奏曲と言われるだけあって、安心して聴けますね。で、今回ヒラリーが選んだのはオリジナル・ノーカット版。
 柳沢先生のおっしゃるようにヴァイオリンの妖艶さや曲調の炎のようなロシア的情熱はないかもしれませんが、とにかくヒラリーの流麗清冽なヴァイオリンは聴かせます。テクニックをひけらかすのではなく、楽譜に忠実に丁寧に一音一音を慈しむように弾きこなしている感じですが、それでいて高速のパッセージでも驚異的な正確さを全く失わない、素晴らしい演奏です。女流でこのチャイコと言えばチョン・キョンファをどこかの試聴会で聴かせてもらった覚えがありますが、ヒラリーの方が音がきつくなくて好きです。

 録音エンジニア、DGのヴェテラン、リチャード・キングの手腕によりオケとの音のバランスも良い。出すぎず引っ込みすぎずの絶妙な塩梅です。ロイヤル・リヴァプールの事は全く知りませんが、オーソドックスに堅実なサポートをしております。SHM-CDとのことで高音質も謳っておりますが、CD盤がないので比較しようがないですね。

 よくチャイメンなどと言いますが、次はメンデルスゾーンを取り上げてくれたら嬉しいですね。ベタ過ぎるか(笑。それにしても今春にサロネンと来日してこのチャイコを演奏したのに聴けずじまいだったのは痛恨でした。ハーンとサロネンだとチケットが高額になるんですよね~(惜。