ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Rabo de Nube / Charles Lloyd Quartet

Rabo De Nube (Ocrd)
 先日からちょこちょこと大学の同級生のMLを立ちあげたことは書いているのですが、その管理人のボスであるA君が先日拙宅へオーディオを聴きに来てくれました。彼はオーディオは全くやりませんが、ジャズには傾倒していて相当のマニアです。
 で、お土産にこれをいただきました。ベテランサキソフォニスト、チャールズ・ロイドの「Rabo De Nube」です。で、さっそく拙宅のオーディオで聴いていただきました。のっけのロイドの静かな瞑想的ソロから、バ~ン!とリズムセクションが爆発するあたり、A君やっぱりビクッとしましたね(w。普通のオフ会の2/3くらいにボリュームは絞っていたんですが。

1. Prometheus 
2. Migration of Spirit 
3. Booker's Garden 
4. Ramanujan 
5. La Colline de Monk 
6. Sweet Georgia Bright 
7. Rabo de Nube 

Charles Lloyd (ts, alto flute, tarogato)
Jason Moran (p)
Reuben Rogers (b)
Eric Harland (ds)

録音:2007年4月24日 シアター・バーゼル(Live)
Producer: Charles Lloyd, Dorothy Darr Executive producer: Manfred Eicher

『 ジャズ・サックス界のレジェンド、チャールス・ロイド70歳記念盤。
 孤高のヴェテラン・サックス・プレイヤー、チャールス・ロイドは、2008年3月15日で70歳を迎える。2年ぶりとなるニュー・アルバムのクヮルテット・メンバーにはジェイソン・モラン(p)とリューベン・ロジャース(b)、共に33歳の若手スター2名が加わった。このアルバムは2007年4月にシアター・バーゼルで行われたライブである。7曲中6曲までがロイドのオリジナル曲、そしてタイトルにもなっている<ラボ・デ・ヌーベ>は 2002年にリリースされた『リフト・エヴリー・ヴォイセズ』に収録されて評判になったシルビオ・ロドリゲス・ドミンゲスの名曲。ロイドのもの悲しいサックスが美メロを奏でる。
 チャールス・ロイドとエリック・ハーランドは2007年12月10日にオスロで行われたノーベル平和賞授賞式で演奏。音楽家たち本人と同じ目的、理想を持つイベントや団体に貢献をして1年を締めくくれるのは、すばらしいことだとコメントしている。(Universal Jazz HPより)』

Water Is WideHyperion With Higgins
 ロイドも息の長いアーチストですね。それにピアニストの発掘能力が凄い。古くは60年代に「Forest Flower」でキース・ジャレットを世に出し、最近ではブラッド・メルドーを起用した「Water Is Wide」でスイング・ジャーナル金賞を取っています。「Water Is Wide」はどちらかというと親しみやすいバラードナンバーが揃っていましたが、盟友エディ・ヒギンズの追悼盤となってしまった同時録音の「Hyperion With Higgins」ではフリーフォーム的なナンバーが中心でした。(ご覧のごとくジャケもネガの対になっていて興味深いです)

 今回のアルバムはスイスはバーゼルでのライブ録音ですが、メインの5曲(5-6は殆ど一曲構成)はフリーフォーム的で、表題作の7はバラードと言う構成です(おそらくアンコールか?)

 1曲目は先ほども少し書いたようにかすかなPercの音をバックにロイドのスピリチュアルなソロからスタート。しばらくしてリズムセクションがバーン!と加わってきてからは豪快なブローに変わります。このあたり、故ジョン・コルトレーンの影響がとても強いように感じます。上記にあげたアルバム以外にロイドのアルバムをあまり知らなかったので、彼がこれほどコルトレーンの影響を受けているとは思いませんでした。まあサキソフォニストで受けていない人なんていないのかもしれませんが。
 それより割目して聴くべきなのが、若手リズムセクションの凄さ。ライブのせいか、正直言ってECMにしてはb,dsの音はあまりクリアな音ではないんですが、ベースのリューベン・ロジャーズとドラムのエリック・ハーランドのリズム感、疾走感が凄い。

 そして先ほど書いたようにピアニストのチョイスの上手さ!何者だこいつは、というくらいジェイソン・モランのピアノは凄い。どちらかというとECMと言うよりはブルーノート系の熱いブルース的フィーリングを身上としている印象です。(実際ライナーを見てみると彼だけ所属がBNでした)
 A君によると最近進境著しく、多くの有名ミュージシャンから声がかかるそうです。で、早速その場でググってみたのですが残念ながらThe Band Wagonというグループを作っている事くらいしか分かりませんでした。ご存知の方がおられたら教えてくださいませ。

 なんせこの曲だけで14分あるもんですから、フリー・ジャズを久々に身体一杯に浴びました。A君も

「いいっ!これだけの音量を家でも出したい!でも近所迷惑になるので無理!」

と少々興奮してくれました(笑。で、A君のアドバイスで次はいきなり終曲のバラード「Rabo de Nube」へ飛びました。これだけが上記解説にあるようにカバーで、後6曲は全部ロイドのオリジナルです。このカバーのバラードも素晴らしい。同じラテン系と言う事もあり、昔よく聴いていたチャーリー・ヘイデン&ゴンザロ・ルバルカバの「ノクターン」を思い出しました。ここでの静かでゆったりとしたジェイソン・モランワンノートによるソロも絶品です。文字通りワンノート(=恋人)を慈しむような本当に心のこもった旋律が続き、それに静かにロイドのサックスがかぶってくる時の控えめな拍手の快感。

 これが終わると次はND-S1+Audio Design DCA-5VによるiPodの音質の方を聴いて貰うため、A君秘蔵のハービー・ハンコックとジャコ・パストリウス共演盤に移ってしまったので、後の2-6は彼が帰ってからゆっくり聞かせていただきました。ハンコック+ジャコの方はどうもブートらしいのですが、それでも結構な音が入っています。A君も私からある程度この機器のことは聞いていたものの、少なからず驚いたようです。

 閑話休題、2曲目「Migration of Spirit」では冒頭のリューベンのベース・ソロ、変幻自在なテンポ・ルバートが見事。ロイドの旋律はなんとなく演歌っぽいですが(笑。

 3曲目「Booker's Garden」でロイドはアルト・フルートを吹いています。その写真がジャケットの表紙やライナーにありますが、デカイ! その音色はともかくとして(どうでもええんかい(^_^;))、モランのピアノをはじめとするリズム・セクションのやりたい放題振りが気持ち良い。ロイドが新人の発掘に熱心でかつ必ず彼らが大成するのはこういう風なやり方により成長させているんだろうな、と思いました。

 4曲目以降は大分長くなってきたので割愛します。ぜひご自身の耳で聴いてみてください。

 という事で素晴らしいアルバムでした。A君ありがとう。