ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Stellavox Japan and Zephyrn新製品試聴会 By ルーツサウンド

Audiomachinaandmagnepan1
 昨日は神戸の誇るオーディオショップ、ルーツサウンドさん主催で試聴会があったので出かけてきました。病気してから殆ど神戸近辺から出てショウに行く事もなくなったので、ルーツさんの催しはありがたいです。しかも今回は自分のテリトリーである市の医師会館。う~ん、通いなれたこの建物にこんな良い試聴室があったのか(笑、というくらい、いつもの某ホテルとは別次元の音を堪能させていただきました。

Stellavox Japan and Zephyrn新製品試聴会 By ルーツサウンド
Date: Aug. 29th, 14:00-16:00, 2010
Place: 神戸医師会館会議室

主催: ルーツサウンド
共催: ステラヴォックス・ジャパンゼファン

 今回はステラヴォックスさんとゼファンさんの共催という事で、Goldmund, Viola, Einstein, Blinkman, Audiomachina, Magnepanといった機種が中心になります。ケーブル類は一切説明がありませんでしたが、沢山のパンフレットの中にゼファンさん扱いの「Organic Audio」と言うデンマークのメーカーのケーブルのパンフがありましたので、おそらくそれを主体にしていると思われます。
 私の注目はやはりアルミの筐体で固めたAudiomachinaのスピーカー(以下SP)と、ベルトドライブ全盛のこのご時勢に堂々とダイレクトドライブのターンテーブルを出してきたBlinkman。さてその結果や如何に?

 2時間に3つのシステムを聴くと言うある意味贅沢な、ある意味せわしない企画でしたが、結果としては十分に楽しむ事が出来ました。


System 1
:
CD Player: Goldmund Eidos 20AP
Preamplifier: Goldmund Mimesis 27.5
Mono Power Amplifiers: Goldmund Telos 250 x2
Loudspeakers: Audiomachina CRM

Audiomachinas  まずはAudiomachinaの小型SP:CRM(Compact Reference Monitor)とGoldmundにしては比較的廉価モデルの組み合わせ。なお、Eidos 20APというのはバランス出力を省略した限定モデルだそうです。

 CRMは幾度かの試作モデルを経て、アルミの鋳型を前後作成しがっちりと溶接密閉するという完璧な密閉型となりました。ターミナルはシングルワイヤリング。潔くグリル穴も全くありません。ツイーターはモレルのソフトドーム、ウーファースキャンスピーク製です。まあこれくらい鳴かないエンクロージャーはないだろうと言う意味で最近話題のキソ・アコースティックのSPとは対極にあるモデルです。

モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第25番&第28番&第32番&第42番

 試聴会が始まるまでBGMを鳴らしていたのがこの組み合わせだったんですが、後ろのPure Systemを通常音量で鳴らしていると言われても誰も疑わないだろうと思われるほどの音がしていましたので、期待一杯で最初のヒラリー・ハーンナタリー・シューモーツァルト・ヴァイオリン・ソナタを聴かせていただきましたが、、、

「良い!」

 密閉型独特の正確で清潔な音階表現、アルミの頑丈な筐体による音離れの良さ、Audiomachinaの哲学であるネットワークを用いないことによるウーファーのフルレンジ的ストレスのない解放的な鳴り方、ソフトドームの懐の深い柔らかい表現。全てが自分の好みにぴったりでツボにはまってしまいました。

 Goldmundとの相性もぴったりで驚きました。微粒子のような音の滑らかさはGoldmundの特徴なのでしょう。よく寒色系とか言われますが、今回に関しては暖かいも冷たいも無い、どのような表現にも対応するシステムと感じました。
 ヒラリー・ハーンの切れ味鋭いボウイングナタリー・シューの柔らかい打鍵タッチ、そして小型とは思えないスケール感、見事でした。

 あまりの気持ち良さに2曲目はついうとうとしてしまいましたが(笑、それくらい気持ち良かったです。考えてみれば私の前のSPが同様のコンセプトの頑丈な筐体を持つWilson Audio Cub 2、今のDynaudio Sapphireのツイーターがソフトドームツイーター、その双方の特徴を有したSPがこのCRMと言えます。だから自分にとってまったく違和感のない音だったのかもしれません。

 惜しむらくは仕上げの荒さ。ツイーターの周りの吸音材剥き出しはあまりといえばあまりな仕上げ。前後の継ぎの部分も視認出来ますし、そのあたり、やはり海外のガレージメーカー製品の惜しいところですね。

Let It Be Naked

 このシステムでの最後はビートルズの「Let It Be」、おそらくnakedからの選曲。これがもう過去に幾度となく聴いたビートルズの再生の中でもベスト3に入るんじゃないかという圧倒的に素晴らしいパフォーマンスで言葉を失いました。イントロのポールのピアノの和音の響き、ポールのボーカルの芯のある奥深い表現、音場一杯に広がる音像。畏れ入りました。


System 2
:
CD Player: Einstein 'The Source'
Preamplifier: Einstein 'The Tube II'
Stereo Power Amplifier: Einstein 'The Light In The Dark'
Loudspekers: Magnepan MG1.7

 Einsteinthetube2  続く第二システムは、最近再び注目が集まっているドイツのEinstein真空管機器(但しステレオパワーアンプだけは出力がトランジスタのハイブリッド構成)により、プレーナー型SPのMagnepan MG1.7を鳴らそうという面白い企画。マグネパンは平板型と言っても静電型ではないの電源入力が必要なく、ペアで35万円という比較的求め易いプライスタグがついています。冒頭写真のごとくそれほどの大きさでも無いので、マンションの一室等の狭い部屋でも、通常音量で品の良い音楽を聴くにはとてもいいんじゃないかと思いました。

 今回もプレーナー形独特の反応性が速く、他の形状の振動板が持つ癖の皆無なクリアな音が得られていました。逆に言うと、このSP自体は前段機器の特徴をそのまま再現する鏡のようなもので、今回聴いた音はほぼ100%Einsteinの音と言っても良いんでしょう。そのEinsteinですが、正直なところ「う~ん、この程度なのかなあ、球だけにまだ冷えてて100%のパフォーマンスじゃないのではないかなあ」、という印象が拭えませんでした。

 男性のバリトンなんかはとても良かったですが、楽器の音がやや甘く音の輪郭が少し滲んでいる感じ。暖色系の音と言われればそれまでだし、Goldmundのあとでは仕方ない、と言われればそうかもしれないんですが。

 ヨーヨー・マ プレイズ・モリコーネ

 低音も十分出ますよ、と聴きなれた「YoーYo Ma Plays Ennnio Moriccone」から、映画「The Mission」の名曲「Gabriel's Oboe」「The Falls」を最後にかけられたのですが、もちろん音はとてもクリアでオケのスケールも大きく表現されるんですが、少し腰高に感じました。まあこれはマグネパンのプレーナー型の限界かもしれませんが。

  とにもかくにもとても美しい真空管機器ですので、また一度機会があれば十全にウォーミングアップした状態で聴いてみたいと思いました。PWの名前の「The Light In The Dark」なんて、主宰者Volker Bohlmeierの美意識の高さを感じさせる素晴らしいネーミングですよね。造形も素晴らしいし、音が気に入ったら、、、とか思ってたんですが。


System3
:
Turntable: Blinkman Oasis
Tonearm: Blinkman 10.5
Cartridge: Blinkman EMT-Ti
Phonoequalizer: Blinkman The Little Big Phono(Mono) x2
Preamplifier: Viola Cadenza
Mono Power Amplifiers: Viola Forte x2
Loudspeakers: Audiomachina Pure System Mk.II

 Blinkman さて、いよいよ最後は私も大好きなアンプメーカーであるViolaの機器でAudiomachinaの名作Pure Systemのモデルチェンジ版MkIIを聴くという企画。送り出しはアナログで、最初にも書いたように話題のBlinkmanのシステムです。

 Pure Systemの試聴会は一度レポートしたことがあり、「元気のいいハイエンド」などと表現しましたが、あの特徴的なFosterの黄色のミッドレンジユニットが生産中止になったため、このモデルも生産中止になっていました。この度Fosterがより振動板と駆動系を改良した反応性の良いユニットを開発したためMk.IIが誕生したというわけです。

 実質このユニット一発のフルレンジ的SPで、上と下はスーパーツイーターとサブウーファー(Active, ICE Power)と考えてよいシステムです。筐体はご存知のとおり独特の形状のアルミニウムのボディ。今回シルバーに変わり、ミッドレンジユニットも濃紺(会社の人は黒と言っておられましたが)に変わったことでルックス的にはおとなしめになりました(笑。

 ちなみにゼファンさんによりますと、初代モデルは菅野沖彦先生が絶賛した効果で想像をはるかに超えて売れたそうです。最初に菅野邸へ持ち込んだ時のドキドキのエピソードも教えてもらいましたが長くなるので省略。

 一方Blinkmanの新作ターンテーブルはいまや珍しいダイレクト・ドライブですが、私の世代ではテクニクスが開発し主流となっていた駆動法で全然違和感はありません。ただ、モーターのトルクが強過ぎると音のひずみの原因になると言うことで、このモデルではトルクを弱く設定してあるそうです。さて、そういうわけでアナログオンリーの試聴が始まりました。アルバムのリンクはCDですが当然ソースはLPです。

Toto IV

 まずはフュージョンでなつかしのTOTOの名曲「ロザンナ」。いやあ、恐ろしく鮮烈な、悪く言えばギンギンにエッジの立った音です。ロック好きの私にはたまりませんがクラファンは顔をしかめられていたかも。この鮮烈な音は決してViolaの音ではない(笑。

 一つにはFosterの新ユニットの反応性の速さと、筐体の皆無といっていい鳴きの無さによるPure System Mk.IIのカラレーションの無い驚異的なS/N比の音。

Oasis10_5emtti  もう一つはおそらくEMTのカートリッジをブリンクマン自身が改造したEMT-Tiというカートリッジの特性。EMTのカートリッジは良く改造されますが、たとえばロクサンシラズのように裸に剥かれてしまう事が多い(笑。その結果シラズなんかは余す事無く音溝の情報を救い上げ、あからさまに録音の良し悪しまで表現してしまう、そんな両羽の剣のようなカートリッジになっています。このEMT-Tiもまさしくそんな感じがしました。

 だからただでさえサチュっている録音を半端でない情報量で再現するため見通しが悪いこと、そして低音の入れすぎに加えてネットワークのない分、サブウーファーの音とミッドレンジの音の繋がりが今一つ悪いことで、名曲「ロザンナ」もやや辛いプレイバックとなっておりました。もちろんロック好きの私には苦になりませんでしたが。

デイ・バイ・デイ

 そのかわり、録音の良いLPだと凄い再生をする。たとえば菅野沖彦先生録音の「デイ・バイ・デイ」では西直樹(p)河上修(b)横田昭男(g)のドラムレス・トリオの音の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものがありました。良いものを聞かせていただきました。

 ピアノの音色がジャズピアノらしくないくらいエレガントだったんですが、西さんのHPを見て納得。ベーゼンドルファーを初めて弾いた、と書いてありました。ちなみに無茶苦茶うまいギターの横田さんというのは現フライド・プライドの横田さんなんですね、これも驚きました。

ドボルザーク/バイオリン協奏曲イ短調
ドボルザーク/バイオリン協奏曲イ短調

 またドボルザークのバイオリン協奏曲のバイオリンは故ナタン・ミルシテインです。上品で彫りが深く、見せびらかすような誇示をしない、とても印象的な演奏でした。ピッツバーグ・オケの音の古さはさすがに否めませんが、ミルシテインのヴァイオリンの音だけは正直なところ、さすがアナログ!という深みのある音でした。リンク先はCDですがLP欲しいです!

Usaforafricalp

 最後はお賑やかに30cmシングル盤の「We Are The World / USA for Africa」で締め、となりました。驚いたのがクインシー・ジョーンズの指揮の元、ユニゾンをバックに次々とボーカルをとっていくトップスターたち、ライオネル・リッチースティービー・ワンダーポール・サイモン、ケニー・ロジャーズ、ティナ・ターナービリー・ジョエルダイアナ・ロスディオンヌ・ワーウィックブルース・スプリングスティーン、ダリル・ホール、シンディ・ローパーボブ・ディラン、と言った面々の、あの当時何度と無く見たMTVのイメージどおりに音像が定位していくこと。これには驚くとともに、あまりにも見事に映像的なので知らず知らず笑みがこぼれてしまいました。素晴らしいシステムです。脱帽。ちなみに故マイケル・ジャクソンは別室で一人で歌っているので定位も何もありません(笑。

 というわけで楽しくあっという間の2時間でした。ルーツサウンドさん、ステラヴォックス・ジャパンさん、ゼファンさん、ありがとうございました。写真はPICASAにまとめてみましたので、よろしければどうぞ。