ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ショパン作品集 / アンヌ・ケフェレック

ケフェレック「ショパン作品集」
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 久々のクラネタがまたショパンですか、な~んて言われそうですが、そうです(笑。まあショパン・イヤーですし、夏の夜はショパン、雨音の調べもショパン、ということでいかがでございましょうか。名手アンヌ・ケフェレックが弾いておりますし、お勧めです、というか実はprimex64さんの「Music Arena」を読んで速攻で買ったのでした。

アンヌ・ケフェレック(p)

ポロネーズ 変ロ長調KK.IV/1(1817)
ポロネーズ ト短調S1/1(1817)
ポロネーズ 変イ長調KK.IV/ a 2(1821)
マズルカ 変イ長調Op.7-4(1824)
ポロネーズ ヘ短調Op.71-3(1828)
・ソステヌート 変ホ長調(1840)
カンタービレ 変ロ長調(1834)
ノクターン 嬰ハ短調 遺作(1830)
・幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66(1834)
・ワルツ ヘ短調 Op.70-2(1841)
マズルカ 嬰ハ短調 Op.50-3(1841-1842)
・子守歌 変ニ長調Op.57(1843)
舟歌 嬰ヘ長調Op.60(1845-1846)
スケルツォ第4番 ホ長調Op.54(1842)
・ワルツ イ短調KK.IVb/11,P2/11
・バラード第4番 ヘ短調Op.52(1842)

『フランスを代表する女流ピアニスト、アンヌ・ケフェレック待望のショパン・アルバムが発売されます。
 叙情的で艶やかな魅力に溢れたショパンの作品を、ケフェレックの知性的で洗練されたピアニズムが繊細に紡ぎだします。ショパンの複雑で苦悶に満ちた音楽、幸福な思い出を想起させるような音楽、ケフェレックが描く鮮やかな色彩の渦に惹きこまれ、どっぷりとショパンの魅力に浸るこができます。
 特に2009年のリサイタルでも評判の高かったショパン円熟期の傑作、バラード第4番は必聴。ケフェレックの意外にも濃厚な表現がぴったりと合い、美しい旋律線が浮かび上がり絶美。
 曲目はショパンの祖国の記憶を読み解くプログラミング。第1曲目のポロネーズ変ロ長調KK.IV/1はショパンが7歳の時の作品。この作品の中にも確実にショパンの魂は存在し、祖国ポーランドへの想いが含まれています。そしてショパンの故国への記憶は最後のマズルカまで彼を悩まし続けました。
 このアルバムはピアノ作品を通して、ショパンの失われた時代、土地を探し求める1枚となっています。(キングインターナショナル)』

 まあ私なんかがレビューするより「Music Arena」を見て頂く方がよほど購入ガイドになるし、ケフェレックのピアノの特徴やショパンの解釈などもきっちりと整理して書かれているんですが、まあ私もそれなりの感想などを、フランス的感覚論で(それほどのもんか^^;)。

 解説にも書いてあるのですがこのプログラムはショパンの作品を年代順に並べて彼の生涯を振り返ろうと言う試みがなされています。そう分かっているせいか,最初の方に収録されているポロネーズは、軽やかで若々しいタッチからクリアな音粒が飛び跳ね、それこそ青春の煌きが垣間見えるような気持ち良い演奏です。のだめ風に言えば一つ一つの音が七色の光になって飛び散るようなイメージでしょうか。

 もちろん以降の作品においても彼女独特切れの良さとたおやかさを両立させた、美しいピアノタッチは健在です。ショパンと言えばとかく自己解釈で叙情に流されてタイム指定を崩しがちになりますが、彼女は楽譜に忠実でありながらしかも美意識に満ちた演奏をできる稀有な才能・技術を持っている印象を受けます。弾けもせんやつが生意気な、と言われそうですが(*^_^*)。

 特にこのプログラムの中でも有名な幻想即興曲。高度の技術を要する曲として有名ですが、技術云々でなくて「美しい」。こんな美しい幻想即興曲は滅多に聴けるものではないと陶然としてしいまいます。

 個人的にはポラ・ジャズを聴き始めて以降、マズルカにはまっているのですが今回は若い頃から最晩年までのマズルカが3点絶妙に配置されています。ポーランド人以外には感覚的につかみにくい、と思っていたこの3拍子の民族色の強い舞踏曲をケフェレックは絶妙な陰翳をつけながら普遍的な音楽として弾きこなしているように思えます。ポーランド人がどう感じるかは別として素晴らしい演奏です。特に晩年のOp50番台の静謐で端正な音に潜む緊張感には背筋がぞくっと来ました。

 ケフェレック個人がどのような方かは存じ上げませんが、コンサートなどでも決して観客に媚びる事なくしかも気負う事なく、自然体で自分の美意識を鍵盤に伝えて、その木霊が観客を魅了できる人なのではないかな、と感じました。

 録音評は申し訳ありませんがprimex64さんの評を引用させていただきます。それ以上かける事無いもん(w。primex64さん、よろしくご了承ください。

『(録音評)
MIRAREレーベル、MIR096、通常CD。録音は2009年11月、場所はMIRAREのお得意、仏リモーザン県のLa Ferme de Villefavardの木質系小ホール=ルミエール。音質は中庸を行く落ち着いたもので、僅かに暖色系へ振った調音だ。もちろん刺激的なノイズは一切含まれておらずケフェレックの解釈と同様に透き通ったアンビエンスと切れの良い音場空間が身上だ。(Music Arena より)』