ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Symphonicities / Sting

Symphonicities
 Stingの新作をようやく手に入れました。輸入盤だとどうしてこんなに時間がかかるんだろう密林。。。というわけで当然DGG(Deutsche Grammophon Gesellschaft)盤です。Stingがクラシックの総本山DGGに移籍して一番やりたかったのはこれなんだろうな、という彼にとっては大本命のアルバムですが、さていかに。

1. Next To You 
2. Englishman In New York 
3. Every Little Thing She Does Is Magic 
4. I Hung My Head 
5. My Ain True Love 
6. Roxanne 
7. When We Dance 
8. End of the Game 
9. I Burn For You 
10. We Work the Black Seam 
11. She's Too Good For Me 
12. The Pirate's Bride

『名門ドイツ・グラモフォンからの3作目にあたる今回のアルバムは、ディープ・パープルを始めとする多くのロック・バンドからボチェッリやパヴァロッティなどのクラシックのビック・ネームとの共演、さらに映画音楽やロックのオーケストラ・アレンジ・ヴァージョンなどでも知られる英国の名門ロイヤル・フィルハーモニック・コンサート・オーケストラと一緒に、ポリス時代やソロのヒット曲や代表曲を壮大なスケールで新たな色に染め直した、まさに“ベスト・オブ・ポリス&スティング”の荘厳で劇的なシンフォニック・ヴァージョンともいうべき話題作!!
ロクサーヌ」「ネクスト・トゥ・ユー」「マジック」といったポリス時代の代表曲のほかソロでの名曲の数々を名門オーケストラと再録音。オリジナルとは一線を画する、ロックとクラシックの新たなる融合を目指した、スティングらしい意欲作ともいうべき内容。オーケストラ・アレンジにはミシェル・ルグランなど、才能溢れる名アレンジャーが手がけ、最高のパフォーマンスが期待されています。(メーカー・インフォメーション)』

 Stingのキャリアの始まりは言うまでもなくPoliceで、当初はレゲエを英国ロックに導入した新鮮さで受けていました。その後モンスターのように進化を続け、今回のアルバムタイトルの元ネタである「Synchronicities」で英国ロックの極北まで達しました。ポリスを離れてソロとなり、次に選んだのはブランフォード・マルサリスをはじめとする米国ジャズのバリバリ第一線の連中でした。
 ポリスでもソロでも頂点を極めた彼がやり残したもの、それがオーケストラをバックにしたがえての自己表現の場だったわけです。まあ彼くらいになれば何をやっても様になるし、ファンも世間も許してしまいますが、DGGに移籍したという事自体は往年のロックファンにはそれなりの衝撃を与えました。

 それに対する彼の回答がこのアルバムなわけですが、確かに一枚のアルバムとしての完成度は高い。アレンジもそれなりに凝っている。正直言って超有名曲ではあまり感心しませんでしたが、「When We Dance」や「The Pirate's Bride」といった比較的無名曲のアレンジは素晴らしいと思います。Stingの歌唱も前回のポリス再結成公演の時のような往年を偲ばせる覇気のあるロック的歌唱ではなく、オーケストラに合わせてしっとりとじっくりと歌いこんでいる感じです。コクのある歌声とさすがの歌唱力には脱帽せざるを得ません。

 が、敢えて言わせていただくとどんな客層をターゲットししているのかが良く分からない。

「そりゃスティング・ファンだろう」

と言われればそれまで。ファンなら彼がこの年になっても新しい事にチャレンジし続けることに称賛を送るべきでしょう。
 でもDGGレーベルが好きなクラシック・ファンがこれを聴いて感心するか?しないでしょう。ロック・ファンがこれを聴いてクールだと思うか?思わないでしょう。そのあたりの中途半端さがこのアルバムにはある。アレンジも考えようによってはクラシックとロックの間の中途半端なところを彷徨っているし。

 となると後はオーディオファイルに残された楽しみは

「音質はどうだ?」

という一点のみ(笑。日本盤ではSHM-CDも出ているらしいですが、あくまでもDGGレーベルの輸入盤で判断。デジタルになってからのDGGはとかくメリハリが利きすぎている、キラキラし過ぎている、という批判を良く耳にしますが、確かにクリア過ぎるきらいはあると思いますがまあまあ中庸を得た音作りではないかと思います。
 少なくともStingの意図している音楽には合っている気がします。各楽器の音はクリアに拾われているし、オーケストラの音に混濁も無い。fレンジ、Dレンジとも大きな不満は無い。結構音量を上げても破綻しません。
 敢えて言うと、オーケストラをバックにコンサートホールでマイク録音したような自然なライブ感は全く無い(笑。

 というわけで「スティング・ファンxオーディオファイル」にはお勧めしても大丈夫な一枚だと思います。という微妙な〆で今回は終了させていただきます。スティングよ、次はどこへ行く?