ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ピカソ-円熟期の版画展-@明石市立文化博物館

Photo
(女の顔、1962年、カラーリノカット)
 今日のバイト先が明石に近かったので、仕事帰りにちょっと足を伸ばして明石市立文化博物館で催されている「ピカソ-円熟期の版画展-」を鑑賞してきました。いくらピカソと言えども版画ばかりですからやや地味な展覧会でしたが、まあだからこそゆっくりと一枚一枚覗きこむようにじっくりと鑑賞できました。ついでに明石原人とアカシゾウの骨も見てきたりして(笑。

『 スペインが生んだ20世紀最大の画家パブロ・ピカソ(1881‐1973)。その偉大な功績は、いまでも世界中の美術ファンを魅了しています。
 ピカソが生涯に制作した作品数は、絵画、彫刻、陶器、版画などおよそ8万点とも言われています。その中には2000点を超える版画作品が含まれ、その数は他の画家の比ではなく、ピカソ芸術における版画の重要性と版画制作に注いだ情熱を示しています。版画制作は晩年まで続き、80歳を過ぎた1968年には半年で347点も制作し、周囲を驚かせたこともあります。このことからもピカソは長きにわたる創作活動のなかで、版画制作にすさまじい情熱を傾けたことがわかります。(オフィシャルHPより)』

 解説にもあるように晩年ピカソが驚異的なペースで版画制作を続けた事はお宝鑑定団でも聞いた事があるくらい有名です(笑。その膨大な版画のうち、本展覧会には120点の版画が陳列されています。これは267点のピカソ作品を収蔵している北海道の荒井記念美術館の協力によるものとのことです。それにしても半年で347点も作ってりゃあ、もう少し安くなってもいいのにね(苦笑。

 テーマは大きく5つに分けられていました。

画家とモデル
「闘牛と古代神話」
「男女あるいは抱擁」
「女の肖像」
静物、サーカス、男の顔など」

 いずれもピカソのテーマとして有名なものばかりですね。自らをミノタウロスに喩え、「性欲のバケモノヤデ~(ヨギータ風)」と自他ともに認めていた彼の、これでもか!と言うくらいの内面のどろどろとしたマグマの噴出にはやや辟易しましたが、なかなか見応えはありました。壁面の解説には

「圧倒的なデッサン力」

とか書いてありましたが、皆さんご存知のように

「どこが!?」

と思うような絵ばかりです(笑。特に版画ですから線描だけのものが多いので余計にそう思いました。
 とは言え、やはりそこはピカソです、見る者の感性を直観的に刺激する素晴らしい作品も数多くありました。「女の顔」「立つ裸婦像」「牧神の顔」「ケンタウロスの戦い」「抱擁(シリーズ)」など、絵をお見せ出来ないのが残念ですが心に残りました。
 また彼を見出したユダヤ人の画商を描いた「D.H.カーンワイラーの肖像」には感慨深いものがありました。カーンワイラーがピカソの才能を見出さなかったらピカソは極貧のまま市井に埋もれていたかもしませんし、キュビズムそのものもなかったかも知れないのですからね。なお、展示されていたのは有名な同名の抽象画シリーズではなく、具象のリトグラフです。

 それにしても彼の版画と言うのは膨大な数もさることながら技法も多彩です。銅版画ではエングレーヴィング、ドライポイント、エッチング、アクアチント、石版画ではもちろんリトグラフ、更にはプロがあまり使わないようなリノカットまで、ありとあらゆる種類の版画がありました。その質感の違い、カラーとモノクロームの違いを楽しむのも一興でしょう。

 5月9日まで開催されていますので、お天気の良い日に明石公園散策がてら足を伸ばしいて見られてはいかがでしょうか。