ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Road To Chopin / Makoto Ozone

ロード・トゥ・ショパン
  小曽根真さんの新譜です。彼が今クラシックに音楽活動の重心を移している事は以前ステレオサウンドでも語っておられましたからオーディオファイルの皆さんは良くご存知だと思いますが、今回は何とショパンに挑戦しています。ワルシャワで録音するという力の入れようで、嬉しい事に以前紹介したポーランドの歌姫アナ・マリア・ヨペックマーカス・ミラーの「Siver Rain」や来日ステージでも印象的なフレーズを拭いていたハーモニカのグレゴアー・マレが参加しています。

1. ドゥムカ(あるべきもなく) 
2. マズルカ 第13番 イ短調 作品17の4 
3. ワルツ 第6番 変ニ長調 ≪子犬≫ 
4. 前奏曲 第4番 ホ短調 作品28の4
5. 練習曲 第4番 嬰ハ短調 作品10の4 
6. 前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28の15からの即興 
7. マズルカ 第24番 ハ長調 作品33の3からの即興 
8. ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64の2 
9. マズルカ 第40番 ヘ短調 作品63の2 
10. ポロネーズ 第3番 イ長調 作品40の1≪軍隊≫ 
11. 夜想曲 第2番 変ホ長調 作品9の2 
12. マズルカ 第2番-ポーランド民謡≪クヤヴィアック≫

Makoto Ozone (p)
Anna Maria Jopek (vo) (1,12)
Gregoire Maret (harmonica) (4,7)

recorded at Lutoslwaski Studio, Warszawa, Nov9-12, 2009

 彼がショパンに挑戦した思いについてライナーノートから抜粋してみます。

「ロマン派の音楽」
今までの僕には「何か違う響き」と感じた音楽だった。
それは僕がショパンと言う人を知らなかったから。
彼の美しい旋律の下にこめられた熱い思いを知らなかったから。

果てしなく大きな愛をショパンの書いた音符たちは教えてくれる。
僕はまだその美しい場所から程遠いだろう。

 確かに幾多の優れたクラシックのピアニストに比べれば、まだまだ音が軽い、タッチにジャズの手癖が若干感じられる、ペダリングに熟練していない、などの批判は出来るかもしれませんが、「一からクラシック・ピアノのテクニックを勉強しなおしている」と語っておられた成果が十分に感じられる演奏です。

 有名な聴きなれた曲ばかりですのでお聴きになる方はそれぞれにお好みの曲が見つかると思います。個人的には2のマズルカNo13 op17-4が嬉しかったです。以前紹介したポーランドの超絶技巧ピアニストLeszek Mozdzerの「Chopin Impresje」で最も印象的で、アシャナシエフと聴き比べもした曲でした。もちろん小曽根さんの演奏はレシェクがジャズ風に崩していたのに比べれば完全にクラシックの演奏ですが、もちろんアシャナシエフよりは速く(笑、素直にこの曲を楽しめる良い演奏だと思います。
 また、マーカスのコンサートにおいて繊細でかつ流れるような美しいハーモニカ演奏が印象的だったグレゴワー・マレをフィーチャーした4の「前奏曲 No4 op28-4」ではしっとりとした共演でうまくマレのハーモニカ演奏を活かしています。

 一方でやはりジャズミュージシャンだなあと思わせる曲もあります。例えば3の「子犬のワルツ」では明らかに小曽根節とも言える自由闊達なインプロを披露しており、思わずにやりとしてしまいます。また、マレとのもう一つの共演曲、7の「マズルカNo24 op33-3」は所謂「インタープレイ」の妙を披露。ちょっとビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスの共演を思い出しました。

 そして嬉しいサービスが、最初と最後のポーランド民謡でのヨペク姐さんとの共演。今井美樹の「I Love A Piano」の「年下の水夫」で見事な伴奏を見せた小曽根さんでしたが、ここでもヨペクに寄り添うように、包みこむように、美しい小曽根流ピアニズムで、ヨペクの美しい歌声を引き立てております。

 小曽根さんも随分遠くまで来たなあ、と感じるアルバムではありますが、彼のファンのみならず、ポラ・ジャズ・ファンにもクラシックファンにも楽しめるアルバムだと思います。是非どうぞ。

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