ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Homage To Marc Bolan & T.Rex(3) The Final Cuts

Final Cuts
は: さていよいよ最終回、課題ディスク「The Fianl Cuts」の紹介でございます。
ゆ: ガンガン行こうぜ学生さ~ん♪
は: 私メ学生ではございません。と同時にご主人様も土屋アンナではございませんでしょっ!
ゆ: auですけどね~、なんてね(吉田サラダ風)。

は: はいはいさっさと参りますよ。さてマーク・ボラン様が亡くなられてから後も続々とベストものや未発表音源集が発表され、生前よりはるかに沢山のアルバムが現在では存在いたしますね。
ゆ: 全く。私が知っているだけでも20は下らないんじゃないでしょうか。内容もピンからキリまで様々ですけどね~、なんてね(吉田サラダ風)。
は: もうええっちゅうに(-_-;)。さて一口に未発表音源と申しましてもいろいろな種類があると思いますが?
ゆ: そうですね、大きく分けて4種あると思います。

1: スタジオでの曲製作過程におけるボツテープや別テイク音源
2: ライブ音源
3: 放送局の音源
4: ブートレグ

T.REXに関していえば、1で有名なのが「Messing With The Mystic」「Billie Super Duper」「Dance In The Midnight」など、2が「T.Rex In The Concert」、3が「Till Dawn」「The Marc Show」あたりですね。4はあまり興味がないので知りませんが。

は: そう言えばあれほどのスターでありながらマーク様の生前にはライブ・アルバムは一枚もございませんでしたね。
ゆ: そうですね、「T.Rex in The Concert」を聴いて想像するに、トニもかくにも作るに作れなかったんじゃないかと。
は: 解説しよう、これは「とにもかくにも」とトニ・ヴィスコンティをかけたしゃれである!
ゆ: 解説ありがたう、はむちぃ君、でもちょっと恥ずかしいぞ(苦笑。閑話休題、何故かと言うと黄金期の4人での演奏が

相当ヘタ

なんですよね。
は: カセット録音で音質が悪い事もあるんでしょうけれど?
ゆ: それならKCの壮絶な演奏が聴ける「Earthbound」も条件は同じ(笑。まあまともな鑑賞に耐えるのはマークの弾き語りくらいですからアルバムにできるほどのライブ演奏を彼等が出来なかったというのが正直なところなんじゃないですかね。実際日本公演を聴いた近田春夫

「一体今何の曲をやっているのか分からなかったくらい下手だった」

と発言してますしね。

は: となるとやっぱりスタジオ音源が貴重なわけですね。今回発見されたテープは、ジョージ・マーチン様がお作りになった超名門スタジオであり、数多くのスターが録音した事で有名なエアースタジオに保管されていたもので、1989年のスタジオ閉鎖移転時、彼の貴重なテープが

「Wrong Hand」

に渡らないよう受付嬢が持ち帰り、保管していたそうでございます。
ゆ: 一回目にも指摘したように、マネージャーならともかく受付嬢とは随分胡散臭い話なんですけど、ともかく進行表などの写真が沢山掲載されていますから、出所は信頼するしかなさそうですね。
は: ライナーノートによりますと2002年にそのテープを彼女がマークの息子のRolan Bolan(ロラン・ボラン)に連絡を取って譲りました。それをロランが分析したところ、1976年10月から1977年8月にかけてのテープで、父ボランのみならず、母グロリアもDuetやソロでボーカルを取っており、とても嬉しかったと述べています。

ゆ: ただ日本盤解説ではわざとぼかしてあるように思うんですが、このアルバムに収録されている音源はそれだけではないんです。Thundering Productions Ltd.の提供によるDecibel Studioの音源も4曲加えられています。デシベル・スタジオというのは超セレブなエアースタジオとは正反対のパンクの連中が使っていたオンボロスタジオで、マークが両方のスタジオを使っていた事は興味深い事実ではあります。

 まあ第一回にも述べましたようにデジタル・リマスタリング技術により凄く音は良いですし余計なオーバーダブも抑えられていますし、マークの死亡直前の1年間の状況が良く分かる貴重なアルバムではありますね。ではいよいよレビューに参りましょうか。
は: かしこまりました、セットリストは下記のごとくでございます。あとはご主人様一曲ずつ解説お願いいたします。

1. Hot George
2. Love & the Foxey Boy
3. Celebrate Summer
4. Love Drunk
5. Write Me a Song
6. Mellow Love
7. Dandy in the Underworld
8. Crimson Moon
9. To Know You Is to Love You
10. Tame My Tiger
11. Shy Boy
12. 20th Century Baby
13. Tame My Tiger [Gloria Jones Vocal]
14. Mellow Love [Alternate Version]
15. To Know You Is to Love You [Instrumental]
Japanese Bonus Track
16. Endless Sleep
17. Young Boy Of Love
18. 20th Century Baby

1: Hot George April 1977 Decibel Studio
 いきなりデシベル・スタジオのテープから始まるのは如何なものか(笑。マークの「one two three four」の掛け声から始まる典型的なWIP(work in progress)テイクなんですが、とても音がクリアで勢いも感じる演奏で、この時期のマークの好調さがうかがえて楽しく聴けます。同曲の音源は「Billie Super Duper」にもあるんですが、こちらの方が音質は圧倒的にいいですね。

2. Love & the Foxey Boy April 1977 Decibel Studio
 同じくこれもデシベルスタジオの提供のWIPテイク。冒頭マークが

「foxy girl take 3」

と言ってるのが聞こえます。曲名間違えたのか、まだ決まってなかったのか?もちろん彼が尊敬していたジミ・ヘンドリックスFoxy Ladyへのオマージュなんでしょう。マークはベースを弾いていてディノ・ダウンズがハモンドを弾いてるんですがその音がとてもフレッシュです。これも「Billie Super Duper」に収録されているんですが、こっちの方が余計な事をせずにスタジオの雰囲気そのままが聴けるので良いですね。

3. Celebrate Summer April 1977 Air Studio
  やっとエアースタジオのテイクが(笑。この曲は1977年に既にシングルで出ているので特に目新しさはないんですが、WIPとは言え、数ある同曲の音源の中でも一番出来がいいように感じます。リマスタリングの魔法でしょうかね。

4. Love Drunk April 1977 Air Studio
 これも「Dandy In The Undergroud」のボツ曲で「Billie Super Duper」で既出です。WIPで12トラックのテープ。甘い雰囲気のラブソングでマークの声質と良く合っていると思いますが、まだ作り上げている途中と見えて若干スローテンポでドラムなんか後半かなりいい加減(笑。解説にはグロリアへのラブソングであるとともにエルビス・プレスリーへの追悼でもあったようだと書いてあります。エルビスが亡くなったのはまさしく1977年8月16日ですから、その直後くらいの録音なんでしょう。その一ヵ月後にまさか彼自身が。。。(涙

5. Write Me a Song April 1977 Air Studio
 この曲は自身の番組「Marc」のテーマ曲「Sing Me A Song」の別歌詞バージョンです。これもエアスタジオの12トラックのテープからリマスタリングされています。同名の曲は「Billie Super Duper」にも収録されていますが明らかに別音源です。録音もいいですが余計なオーバーダブなしで調子の良いマークの声をじっくりと聞く事ができます。

6. Mellow Love April 1977 Air Studio
  これもファンの間では良く知られた曲で完成されたトラックのある曲です。これも最後なんかをきくとWIPなんですが、ストリングスもちゃんと入っていてほぼ完成型です。ボーナス・トラックに入っている別バージョンはもっと未完成なスケルトン・テイクとなっています。

7. Dandy in the Underworld Nov 1976 Air Studio
 もちろん最終アルバムのタイトル曲。解説によるとこの曲には8つのボーカルバージョンが存在していたそうで、その理由としてはコカインに言及した歌詞を入れたり削ったりした経緯があったようです。ここに聴けるバージョンは全体にラフですが各楽器の分離が良好でこれはこれでありかな、と思わせるだけの説得力のある演奏です。

8. Crimson Moon Nov 1976 Air Studio
 7と同じ時期の録音でもちろん「Dandy In The Underworld」に収録されている曲ですが、シートには 'Under the Crimson Moon' と記してあったそうです。題名がまだ決定していないWIPの過程が覗けて面白いですね。とは言え、このテイクはほぼ完成型です。解説によると従来盤より少し時間が長いそうなんですがWIP的な要素は全くなく、乗りも良くっておまけに音質も良くなっているもんですから、このテイクの方が本チャンより良いんじゃないかという気さえします。

9. To Know You Is to Love You Oct 1976 Air Studio
 これはオリジナルではなくフィル・スペクターの甘甘のラブソング。グロリア・ジョーンズとのデュエットの聴ける曲で甘い雰囲気が好ましく伝わってきます。このバージョンはtake 8だそうで、なんぼほどいちゃついとんねん(^_^;)。マークはここではアコギも弾いてますね、とてもクリアにマイクが拾っています。

10. Tame My Tiger Oct 1976 Air Studio
 彼の好きだった虎をテーマにした乗りのよい曲で、過去には「The Unobtainable」に収録されています。リマスタリングの効果か、出だしのギターリフは全盛期を髣髴とさせるかっこよさだし、マークのボーカルも絶好調。途中からグロリアの甲高い声がかぶってくるのがちょっと余計か(苦笑。ちなみに8テイクあるうちの2テイク目だそうです。 

11. Shy Boy April 1977 Decibel Studio
 これも時期からみて「Dandy In The Underworld」のボツ曲で、「Billie Super Duper」にも入っています。大体デシベルスタジオのものは「Billie Super Duper」とかぶってますね。
 このバージョンはマークの指示から入るWIPで、ボーカル、ギター、ドラム、ハモンドしか入っていないし途中で切れてしまうんですが、それにしても良く出来たバラードで素晴らしい。

12. 20th Century Baby April 1977 Decibel Studio
 この曲も「Shy Boy」と同じボツ曲。グロリアに捧げられたバラードで、題名からして 20th Century Boyと対をなす事は明白で、マークの意気込みと気力の再充実が伺える佳曲です。実際WIPとは言え、グロリアとのボーカルにディノのハモンドがかぶってきて素晴らしい雰囲気をかもし出しています。

「Billy Super Duper」で聴いた時はそれほどとも思わなかったけれど、11、12はどうしてボツになったんだろうと不思議なくらい良い曲です。マークが生きていれば次のアルバムに収録されたかもしれないと思うと、また無念の思いがこみ上げてきます。

13. Tame My Tiger [Gloria Jones Vocal] Oct 1976 Air Studio
 ここから先はボーナストラック。グロリア・ジョーンズのボーカルテイクで、まあマークファンにはどうでもいいような。歌唱の迫力は虎並みですけどね~(笑。
14. Mellow Love [Alternate Version] April 1977
 6で説明済みです。
15. To Know You Is to Love You [Instrumental] Oct 1976 Air Studio
 所謂Karaokeです。

16. Endless Sleep
17. Young Boy Of Love
18. 20th Century Baby

 この日本盤ボーナストラックについては、もちろんライナーノートには解説が無く、しかも日本盤解説も

「やはり1976~1977年に録音されたもの」

としか書いていない不親切ぶり(怒。

Endless Sleep」は「Messing With The Mystic」に初収録された曲でTV番組「Marc」のDVDにも収録されている曲のWIPですが、ロックンロール然としたアップテンポの曲でちょっとエルビスを意識しているかなという雰囲気もありますね。

Young Boy Of Love」は正直言って初めて聴いた曲でその意味では私にとって価値あるボーナストラックですが、調べてみましたらその名もずばり「Work In Progress」という未発表音源集で既出でした。

20th Century Baby(solo)」は妙にこもった音で正直言ってどうでもいいテイク。折角の高音質盤のラストを飾る曲がこれじゃちょっと情けないですね。どうせならHidden Trackにしとけばお茶目でよかったかも。

は: ご主人様、ご苦労様でございました。死の直前約1年間のマーク・ボラン様の充実振りが伺える内容でございますね。
ゆ: その通り、何回も言いますが、日本の音楽マスコミがこの時期のマーク・ボラン

もう過去の人、麻薬中毒で心身ともぼろぼろ

などという見方をしていたのが如何にいい加減な情報だったか、このWIP集に聞ける彼の声や演奏を聴いていただければお分かりいただけると思います。
は: WIP集とは言え音質も良く演奏も素晴らしいものが多いですから、後期T.REXがどのような音楽をやっていたのかに興味のある方には是非聞いていただきたいですね。
ゆ: く~、良い事言ってくれるねはむちぃ君、ちょっと喩えが適切ではないかもしれませんが、マイコーの「THIS IS IT」と同じような感覚で聞いていただけたらと思います。

は: 皆様3回に渡るお付き合いありがとうございました。これにて40万ヒット記念企画終了させていただきます。
ゆ: この企画もクラシック、ジャズ、クラシックと勉強させていただきましたが、今回英国ロックを取り上げる事が出来、感無量でございます。
は&ゆ: 今後とも月夜のラプソディ、よろしくお願いいたしますm(__)m。

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