ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ハゲタカ

Hagetaka
はむちぃ: 皆様お久しぶりでございます、またまた映画レビューに駆り出されましたはむちぃでございます。本日の映画はご主人様懸案の「禿げたか?」でございます。
ゆうけい: そうそう、この頃てっぺんの密度が減ってきたと家内に言われておりましてな、テッペンハゲタカキョッキョッキョ~ですわ、ってわしホトトギス正岡子規かい~(怒。
は: 随分長いボケツッコミでございました(-.-)、おまけにタカ・ワシ・ホトトギスと鳥類オンパレードで混乱してしまいました。
ゆ: すまんすまん、って何でワシが(以下略)
は: とっとと話を進めましてあらためてご紹介いたしましょう、前田有一氏曰く「NHK発愛国ドラマ」の「ハゲタカ」でございます。

映画 ハゲタカ(2枚組) [DVD]
『2009年日本映画、NHKエンタープライズ、配給:東宝
監督:大友啓史 脚本:林宏司 原作:真山仁 
キャスト:大森南朋 玉山鉄二 栗山千明 柴田恭兵

かつて数々の企業買収劇の主役として、ハゲタカの異名をとった鷲津政彦(大森南朋)。彼の元に、現在は大手自動車会社の役員である盟友・芝野(柴田恭兵)がたずねてくる。その話によると、日本を代表するこのメーカーが、謎の新興ファンドから敵対的買収をかけられており、鷲津になんとか救ってほしいというのだ。

ハゲタカこと鷲津と対決するのは、残留日本人孤児三世の劉一華(りゅういーふぁ)(玉山鉄二)。カリスマ性あふれるこの天才は、鷲津の老練なテクニックの先を行く攻撃と、バックにいる中国政府の膨大な資金力により、自動車会社幹部らを追い込んでいく。』

は: 友好的買収に見せかけた敵対的買収、背景に存在する目覚しい経済発展を遂げる中国の存在、日本の派遣労務者不正雇用問題、中国の地域格差・貧富差問題、更には映画作成当時に突然降って湧いたリーマンショックまで取り入れて冒頭から終盤まで息もつかせぬ展開でございました。
ゆ: 痩せても枯れてもさすがNHK、ドンパチやらくだらないフェイクやらを詰め込んだ民放の「なんとかかんとか The Movie」とは作りこみの密度と完成度が違いますね。2時間あまりの単発ドラマですからTVの連続ドラマよりは端折った点は多々あると思いますが、監督の大友啓史と脚本の林宏司TVシリーズで培ったものを上手く活かしたと思います。20年位前の中国河南省の農村地帯のシーンをセピア色で撮っているプロローグは映像も見事でしたし、伏線としても完璧でした。
は: 畑の傍の農道を真っ赤な日本車(AKAMA GT)が通り過ぎるのを見つめる少年、彼のその後の人生が今回の真のテーマとも言えますね。
ゆ: ラストで鷲津がこの少年の家を訪ねて壁に描かれた絵を見たときには目頭が熱くなるとともに思わずうなってしまいました。まるでベット・ミドラーの「The Rose」のラストシーンみたいでした。

Leu は: もともとのNHKドラマの登場人物も次々と顔を見せますが、今回際立った存在感を見せたのは、敵方の主人公・劉一華でございましょう。
ゆ: そうですね、今回は主人公の鷲津が何を考えているかいまひとつ良く分からない妙に難しい演出をしている分、敵である劉一華のカリスマ的な設定が見事で感嘆に値しましたね。鷲津もそうでしたが、この映画を観た人の殆どが最後は彼に感情移入したんじゃないでしょうか?
は: 傲然と日本を代表する自動車企業に敵対的買収をしかけ、中国政府系の巨大な資本の存在を武器にホワイトナイトの鷲津の度肝を抜く一方、派遣工を籠絡し労働争議に持ち込んだ上使い捨てるという悪辣な手段まで使うあたりの切れの良さ、そしてそんな彼の隠された過去と胸に秘める真の思い、これほどのキャラクターはTVドラマの映画化では珍しゅうございますね。
ゆ: 民放の映画化はスケールを上げるためだけの劇場型犯罪ばっかりですからねえ(苦笑。まあ、実際の金融界はこんな若造にカリスマ性を持たせるほど甘くはないんでしょうけれど、それにしても騙されたと知り怒鳴り込んできた派遣工にくれてやった400万円を床にばら撒かれたときの鬼のような怒りの形相、

一枚残らず拾え、金を粗末にするな

と叫ぶシーンには鳥肌が立ちました。この映画最大のハイライトシーンじゃないですかね。
は: 後で次々と明らかになる彼の過去に見事に呼応していている上に、エピローグ・シーンでのこの両者の行く末のコントラストも見事でございました。
ゆ: 冒頭写真はAKAMAの最新車、ディーゼルエンジン+モーターのハイブリッドGTなんですが、それをたまたまAKAMAに派遣され買収騒動の渦中で使い捨てにされたはずの派遣工が塞翁が馬で手に入れてしまう皮肉さ、また随分と意地の悪い脚本ですね、一応褒めてるんですけど(笑。
は: あの派遣工はもらった400万で買ったんでしょうか、それとも?
ゆ: あくまでも想像ですが、劉に400万持たされて追い出された彼が証券会社の前に呆然と立ち尽くすシーンを撮っていましたから、おそらく一発勝負で反AKAMA的な株買い付けをしたんじゃないかな、と思いますね。

は: ご主人様は車を買われたばかりですが、中国に技術力を狙われたこの会社、どこだと思われます?
ゆ: みんなそれを考えながら観てたでしょうね。GTが世界を席巻したと言う歴史、派遣工・リストラ問題等々から考えて、NISSANHONDAを足して二で割ったような会社じゃないでしょうか。私もシビック・ハイブリッドをブログネタにして楽しく乗り回している分、派遣工の皆さんの辛酸には忸怩たる思いがしたしました(ーー;)。

Washidu は: さて、俳優陣でございますが?
ゆ: ここまで書いてきたらお分かりだと思いますが、劉役の玉山鉄二でしょう、今回のMIPは。ああいう結末で無ければ続編を作ってリベンジして欲しいくらいでしたね。
は: それに比べると主人公の大森南朋様、柴田恭兵様は今回ちょっと印象が薄かったですね。
ゆ: 大森南朋に関してはちょっと演出が暗い上に鈍重でしたね、某CMで麻生久美子に見せているような笑顔のシーンも撮れよ、と監督には申し上げたい(w。
は: 柴田恭兵様は癌を患らわれた事もあってお老けになられましたね。
ゆ:、アブ刑事ファンとしては寂しい限りですが、まあ良くもなく悪くも無くの演技でしたし、そうしか仕様のない設定でした。
は: 男のドラマの中で一応ヒロインは栗山千明さまでございました。
ゆ: う~んこれまた頑張ってはいるんだけど良くも無く悪くも無く、説明されている過去を引きずってる割には役の作り込みが浅かったように思います。
は: 結局美味しいところを持っていってるのは松田龍平様あたりですね。
ゆ: そうですね、あと熱演と言えるのはAKAMA社長という損な役回りをやらされたエンケンさんこと、遠藤憲一でしょう。演技に関してだけいえば今回玉山鉄二に対抗出来たのは彼だけじゃないですかね。

は: というわけでございまして、TVドラマをご覧になっておられた方には主人公サイドが喰われた分物足りないかもしれませんが、単発ドラマとしては大変良くできた映画化と申せましょう。
ゆ: 前田有一が言うように、経済金融のプロが見れば噴飯物かもしれないし、全体としてハリウッドのようなユーモアが足りない面もあります。しかし、それを補って余りある劉一華と言う人物設定をしたことでこの映画は十分合格点をあげられると思いますので、未見の方は是非どうぞ。

は: では採点でございます。

はむちぃ: 72点
ゆうけい: 78点

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