ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ルーツサウンド試聴会2009

Accujbl0910
 ルーツサウンド主催の試聴会に出かけてきました。アキュフェーズの最新機器でJBLK2-S9900を鳴らすという2社のコラボ企画です。単独での試聴会でこういうコラボは極めて稀で、長年2社の機器を扱っておられるルーツさんならではの催しでした。

 アキュフェーズのラインナップの素性は大体把握しておりますので、個人的にはJBLの最新のProject K2機種であるS-9900が楽しみでした。新製品といっても2月のデビューですからデモ機の音は十分にこなれており、最新のJBLサウンドを堪能する事ができました。エベレストを半分に割っただけ、と言う皮肉な見方をする人もいますが、どうしてどうして、さすがJBLと唸らせる気合の入ったスピーカーです。特に

「ジャズの為のJBLが帰ってきた」

という印象を強く受けました。ジャズ・プロパーで聴かれるオーディオファイルにはこれ以上のスピーカーはそうそう無いだろうと思います。もちろんジャズならJBLというのは昔からの常識ですが、前作のS9800(特にSE)がオールマイティを目指して路線変更したのに対して、本機は再びS9500の持っていた「至高のジャズ再生」を目指す姿勢に回帰し、なおかつそれを凌駕する完成度を示していると思います。「究極のジャズ再生」とでも申しましょうか(笑。

Mgcompdrivers9900 具体的な一番の変更点はコンプレッションドライバーです。前作のS-9800(SE)はコンプレッションドライバーにベリリウムを搭載しビロードのような滑らかさを持つ美しい中高域を獲得しましたが、今回のS-9900ではJBL初の高純度マグネシウムダイアフラムを採用し、サイズを100mm径に大型化してきました。この変更により、きらびやかな美しさは影を潜め、ボディ感のある質実剛健な中域に変化した印象を受けました。
 そしておそらく世界最高レベルの38ウーファーである1500AL-1!S9800の1500AL、EverestDD66000の1501ALを更に改良したこのウーファーは素晴らしいの一言。俊敏さと力強さの双方を兼ね備えた低域(といっても900Hzまで受け持っていますが)はもう麻薬的な魅力を感じます。
 この2ユニットによる2wayが基本となりジャズに最適化されたサウンドを手に入れ、なおかつお得意のBeのUHFユニットを加える事によりオールマイティさも残しています。敢えて言うとジャンルを問わないと言う点ではS9800SEの方が優れているとは思いますが、けっしてジャズだけしか楽しめない機種ではありませんでした。では詳細をレポートしましょう。

新製品試聴会 in Kobe Live Pleasure 2009  Vol8」
主催: ルーツサウンド
協賛: ハーマン・インターナショナルアキュフェーズ 

Date. Oct. 17th., 2009,  14:00-16:00
Place:  チサンホテル、あじさいの間

 場所はルーツサウンドさんの向かいにあるホテルで部屋は結婚式などに使われています。下は絨毯張り、壁はオーディオには貧弱です。DG-48で計測した部屋特性としてはやはり定在波の影響で低域にディップがあるようでした。聴感上では絨毯張りにもかかわらず中低域の残響が多かった気がしました。SPは冒頭写真のようにやや内振りで、壁からはかなり離してセッティングされていました。以下、セットリストと簡単なコメントを記しておきます。

Jbls9900
Part 1 Harman International Presentaion ( by Mr. Fujita)

Loudspeakers: JBL Project K2 S9900
CD Player: Accuphase DP-700
Preamplifier: Accuphase C-2810
Digital Equalizer: Accuphase DG-48
Power Amplifiers: Accuphase M-6000 x2

 DG-48はCDPとプリの間にアナログ接続されており、ハーマンのプレゼンではヴォイシングは使用せずブーミーな低域をすこしイコライジングで絞っただけで使用されていました。パワーアンプはM-6000のシングルワイアリングです。開始間際に到着したためSpターミナルへの結線がどうなっていたかは確認出来ませんでした。

1: But Not For Me: Tiffany (アメージング・グレース )
 さすがにハーマンさんも心得ていらっしゃる。イントロにウッドベースのソロが入っているナンバーを最初に持って来られました。このウッドベースの音でもう降参、JBLはどこまでジャズ・ベースの再生に長けているのかと呆れてしまうくらいです。昔村上春樹氏が「ポール・チェンバースのベースを再生するためにJBLを使っている」と述べておられたくらいですので昨日今日に始まった事では無いんですが、過去最高のベースの音を聴いた気がしました。

 今年の東京のインターナショナル・オーディオ・ショウでの新しい試みとしてTiffany and Friendsのライブ演奏もが催されたそうですが、実際のライブでも席・場所によってはこれだけの音が聴けるかかどうか、というくらいの凄みがありました。
 一方でTiffanyのボーカルはリアルだけれども、ちょっときつい感じがしました。3~4mの距離で左のコンプレッションドライバーが真正面に見える位置に座っていたからかもしれませんが。

ハーマン解説: Mgは随分前からジェリー・モロが注目していた。最近では純度100%のMgも使えるようになったが、音があまりにも綺麗過ぎるので敢えてそれは使わなかった。

2: アーウィン・シュロット/デビュー
 ボーカルのボディの分厚さを感じてもらうため2曲目はバリトンの歌唱を選択されました。胸板の厚さまで分かるような再生でした。

ハーマン解説: MgはS9500のチタンの2倍の厚さがあり、それが力感や音のボディ感の表現に貢献している。

3: Branford Marsalis Trio (トリオ・ジーピー )
 ブランフォード・マルサリスのピアノレス・トリオの、かけあいの声まで入ったご機嫌な演奏。ブランフォードのサックスの音色が素晴らしいし、リードに当たる唇の擦過音まで聞こえます。故ミルト・ヒントンのベースの力強いドライブ感も絶品、スラップでしょうか、弦が指板に叩きつけられる音が物凄くリアルでした。

ハーマン解説: ウーファーの1500AL-1は1500AL,1501ALから更に改良を重ねた自信作。とかく重いと言われがちな38だが俊敏で軽やかな動作を可能にしている。ネットワークも改良されているが逆起電力を解消するためのダンパー抵抗を廃止しているのでアンプのドライブ力が要求される。

4: ウィスペルウェイ、ラツィックBeethoven: Complete Sonatas & Variations [Hybrid SACD]
 クラシックのチェロとピアノの演奏。クラシック楽器の質感もちゃんと表現されていますし、録音の良さも感じ取る事ができます。

5: Tears in Heaven / Chie Ayado (GOOD LIFE )
 いつもの綾戸節健在。ピアノの音の拡散によるスタジオの空間表現が見事なのはベリリウムのスーパーツィーターの威力でしょうか。

ハーマン解説: 綾戸智恵には深い思いいれがある。2001年に故朝沼先生とJBL本社でS9800を初めて試聴した時に朝沼先生が先ずかけられたのが彼女の「悲しみのジェットプレーン」だった。声も出ないほどの素晴らしい再生で、終わって一言朝沼先生が「素晴らしいスピーカーだ」とつぶやかれたのが印象に残っている。

6: I Remember Clifford / 高橋達也、西直樹菅野レコーディングバイブル (SS選書)
 オーディオファイルの皆さんご存知の付属SACDから、録音の良さの忠実な再現振りを体感。JBLの基本方針である原則2-wayにUHF unitを加えるという思想が良く分かる演奏でした。

7: Basie 40th. Ann Live Demo / Hank Jones and Friends
 最後は嬉しいサービスで、先日一関ベイシーで行われたライブの録音を聴かせていただきました。ジャズ喫茶での録音で条件は良くは無いので好録音は望むべくもありませんが、あの薄暗いベイシーの空間が濃密な熱気で満たされる様子が目に浮かぶようでした。

ハーマン解説: 伊藤八十八さんが録音を担当し、記念盤と言う事でglass CDで販売される。今までのglass CDは金コーティングだったが音が華やかになり過ぎるので銀コーティングを選択されたとのこと。予価は5万円。

Accu
Part 2 Accuphase Presentation (Mr.Takamatsu)
Loudspeakers: JBL Project K2 S9900
CD Player: Accuphase DP-700
Preamplifier: Accuphase C-2810
Digital Equalizer: Accuphase DG-48
Power Amplifiers: Accuphase M-6000 x2(L)
                                           A-65 (M&H)

 次いで第二部はアキュフェーズのお馴染み高松常務のプレゼンです。システムの変更点は二点です。

1: A-65を中高域側に加えてバイアンプ構成とした事
2: DG-48でフラットにヴォイシングした上にステサンに掲載されていた石井伸一郎先生推奨のカーブにイコライジング処理を施した事

 上記のような変更と高松さんのお好みから当然ながらクラシックメインとなります。高松さんも冒頭から

JBLだからと言ってクラシックがうまく鳴らない筈がありません」

と強気のお言葉(笑。

1: 野バラ / Bostridge,Drake (Schubert: Lieder / Bostridge, Drake )
 まずはボストリッジテノール。ハーマンのプレゼンに比べて中高域がマイルドになり、某評論家の先生が良く使われる言葉をお借りすると、なんとも言えない色気のあるとろんとした音調。これはA-65とDG-48のイコライジングカーブの相乗効果だと思います。S9900の下側のクロスオーバー周波数が900Hzと高いので、AB級とA級両アンプの音色の違いが出ないか心配でしたが全く違和感はありませんでした。M-6000にもMOS-FETが使われている事で、両者の音調が似通ってきているのかもしれません。

アキュフェーズ解説: ドレイクというイギリスのピアニストは凄いと思う、これからどんどん表舞台に出てくるはずです。

2: 幻想即興曲 / ユンディ・リショパン・リサイタル ユンディ・リ/デビュー
 飛ぶ鳥を落とす勢いのリのピアノ。でもちょっと部屋の残響が多くて一音一音の分離が悪く、全体にもこもこしていました。

3: ヴァイオリンとピアノのための変奏曲 / 和樹・ヘーデンボルク、カニーノチェルニー:ヴァイオリンとピアノのための3つのソナチネ
 高松常務と親交のあるウィーン・フィルのヴァイオリニスト、ヘーデンボルグのヴァイオリン。これは良い音でした。カメラータ・東京から出ています。

アキュフェーズ解説: チェルニーと言えばピアノの練習曲集で有名ですがこれはちょっと変わったヴァイオリン曲集。この変奏曲はどこかで聴いたような曲です。(演奏後)ベートーベンのクロイツェル・ソナタにそっくりでしょう。調べてみると同じ時代の人なんですね、その時代に著作権があれば問題になっていたかも。ちなみにヘーデンボルグはアキュフェーズのDP-78,C-2800,P-7000を使っています。

4: Fever / Ray Charles feat. Natalie Cole (Genius Loves Company )
 これは素晴らしかったです。特にレイの声は絶品。なんやかや言ってもやっぱりJBLにはこういう曲があいますよ、やっぱり!

アキュフェーズ解説: ステレオサウンドに載っていた石井伸一郎先生の推奨カーブに私も凝っている。この曲もそのカーブで良い演奏再生になっていると思う。

5: 歌の翼に / ギトリス【HQCD】ツィゴイネルワイゼン(ヴァイオリン名曲ア・ラ・カルト)
 この曲でDG-48のヴォイシングのon/offとイコライジングのフラット/石井式の聴き比べ。このソースが一番効果が分かり易かったので、と高松さんはおっしゃってましたが、個人的にはもっと分かり易いソースはいくらでもあると思いましたけどねえ。何しろ結構癖のあるバイオリンで、どう処理しても結構耳につく演奏なんですよね。

6: ビゼー:歌劇「カルメン」より/カラヤン&VPOビゼー:歌劇「カルメン」(全曲)
 録音の良い演奏をかけましょう、とのことで1964年にカラヤンがウィーンのソフィエンザールで演奏したカルメンから、足音やウィーン少年合唱団のパート。RCAから出ていますがこれを録音したのは当時DECCAのメイン・プロデューサーだったジョン・カルショウ。彼が早逝したのは本当に惜しいと嘆いておられました。

A65 7: The Dialogue / Takeshi Inomata(ds)&Yasuo Arakawa(b) (Accuphase Specisal Sound Collection)
 最後はアキュフェーズのサンプラーから猪俣猛のドラム。当然録音は菅野沖彦先生。拙宅でも良く調整にかけていますが目の覚めるような鮮烈な録音です。これを大音量でかけてA-65に最大何ワット入るかをチェック。写真のごとく、中高域ではありますが70W以上入っています。勿論それくらいへっちゃらですよ、というデモですが、低域で試していただきたかった気もします(笑。勿論それでもびくともしなかったでしょうけど。

 ということでお開きとなり、帰りには景品でJBL60周年記念CDスタンドをいただきました、ありがとうございました。

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