ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

孫文 - Road To Dawn -

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は: 今日のレビューは現在公開中の中国映画「孫文」でございますね。
ゆ: 歴史の勉強をしていて有名な人物なのに一体この人は何をした人なのか、今一つピンと来ない人っていますよね、私にとって孫文がその一人なんですよ。
は: 本ブログで扱ったレビューの中では浅田次郎先生の「中原の虹第四巻にちらっと顔を見せますね。
ゆ: あの巻は孫文とは対立してしまった宋教仁が中心となるので、浅田先生は結構批判的に孫文を描いていた印象がありますね、多分嫌いなんでしょう(笑。
は: 実際非常に短気で気分のムラの激しい人物だったようですね。
ゆ: まあ冗談はともかく、清朝末期から中華民国建国、毛沢東による中国統一までの激動の時代の中国において、具体的にどういう実績をあげたのかが世界史の教科書程度ではあまりはっきりと見えてこない人物なんですね。

は: 仕掛けた暴動は悉く失敗し、11回目の武昌蜂起でようやく辛亥革命(1911年)が成った時には孫文様ご自身はデンバーにおられましたし、臨時大統領の座を政治的駆け引きですぐに降りて袁世凱様に明け渡たされますし、その後も込み入った政治工作もむなしく結局統一政権は作れずに「革命未だならず」という遺言を残して亡くなってしまわれますね。
ゆ: はむちぃ君の説明どおり、革命家なのか思想家なのか政治家なのか、今一つ分かりにくい人物です。その思想も三民主義アジア主義など、分かりやすいようでいて場当たり的で一貫性がないと言うのが後世の評価ですし。でも不思議な事に中国本土と台湾双方で今でも大変な尊敬を受けているんです。
は: 両国に中山大学(中山は孫文の号)という同じ名前の大学があるというのは極めて異例の事でございますよね。
ゆ: 日本にも何度も滞在した人だから日本でも孫文の名は他のこの時代の群雄に比して知名度は高いですしね。しかしその割には映画ではあまり見たことがないんですよ。邦画ではちょっと記憶がなくて、香港との合作の「宋家の三姉妹」くらいなんです。
は: 今回の映画はその「宋家の三姉妹」でも孫文役をされていたウィンストン・チャオ様が再び孫文を演じておられますね。
ゆ: ということで、今回は前置きが長くなってしまいましたが、この映画に関しては、映画の出来よりも孫文自体を知りたくて観てきたわけでございます。

『2006年、中国、
深圳電影製片廠製作
提供: バンダイビジュアル

スタッフ:
監督: デレク・チウ(趙崇基)
撮影: チェン・チーイン(陳志英)
美術: テレンス・フォック(霍達華)
キャスト: ウィンストン・チャオ(趙文宣) 、アンジェリカ・リー(李心潔)、ウー・ユエ(呉 越) 、チャオ・チョン、ワン・ジェンチョン、ヴィッキー・リウ 他

1910年、中国近代国家への夜明けにつながる“革命前夜”。亡命の地マレーシア・ペナン島を舞台に、度々の革命失敗の苦境と失意、そして暗殺の危険に遭いながらも、愛する人に支えられ、理想を失わなかった世界的革命家・孫文の闘いと愛の日々を描く一大歴史ロマン。』

は: 英語の題名が「夜明けへの道」となっておりますように辛亥革命の1年前、苦境の中マレーシアのペナンに亡命していた時代を描いておりますね。
ゆ: 日本を国外追放になってしまってたどり着いたわけですが、ズバリ目的は革命の資金集めだった事がこの映画を観るとはっきりしますね。
は: 港湾労働者の労働条件の悪さに憤慨し、華僑経営者との交渉により賃金アップと休憩時間を勝ち取るという美談も挟まれてはいますが、
ゆ: 結局の所、彼の名声と巧みな弁舌により資金のある華僑をはじめとして世界中から革命資金を集めまくった、というのがおそらく彼の一番の業績だったのかなと思わせるような映画でしたね。そういう意味では、ほんの一時期の孫文を描いただけではありますが彼の実像がある程度見えてきた有意義な映画だったと思います。

は: もちろん女性とのロマンスや暗殺者に狙われる危険を省みない勇気も描かれておりまして、娯楽映画としても十分鑑賞に耐える内容でございます。
ゆ: 実際彼は生き延びて再亡命するわけですから、あれだけ命を狙われていて死なないのも歴史通りなので一応リアリティはありますわな(笑。この頃の彼の伴侶だったチェン・ツイフェンを演じるウー・ユエも好演ですね。孫文が後年宋家の次女と結婚してしまう事が分かってるだけに余計にいじらしかったです。

は: という事で今回は佳品程度の作品ではございますが、孫文という人物に興味のある方や「宋家の三姉妹」をご覧になった方には一見の価値はございますでしょう。
ゆ: 不遇の時代の一断面を切り取る事により、うまく孫文の人間像を浮かび上がらせていると思いました、地味ではありますがデレク・チウという監督の慧眼が光る映画だと思います。

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