ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Mahler Sin 7 (4) Sin 6 von Feltz/Stuttgarter Philharmoniker

Sin6
はむちぃ: さてリクエスト企画「マーラー5番勝負 Part II」も終盤に入ってまいりまして第4回でございます。
ゆうけい: 皆様お疲れとは思いますが今しばらくお付き合いくださいませm(__)m。
は: 私メも「マーラー5番勝負 Part I」に負けず劣らず疲れてまいりました。
ゆ: 長丁場ですからねえ、頑張りませう、はむちぃ君。
は: ご主人様のボケっぷりにでございます、まあ予想はついておりましたが(--〆)。では早速参ります、前回の予告どおり今回は

マーラー5番勝負Part Iで勝手知ったる第6番「悲劇的」を聴いてガブリエル・フェルツの手腕を探ってみよう」

という長い題名の企画でございます。では先ずCD情報でございます。

マーラー交響曲第6番イ短調『悲劇的』
シュトゥットガルトフィルハーモニー管弦楽団
ガブリエル・フェルツ(指揮)

録音時期:2008年2月15日(ライヴ)
録音場所:シュトゥットガルト、リーダーハレ・ベートーヴェンザール

Dreyer-Gaido(CD21045,2CD), Germany

CD 1:
I Allegro moderato, ma non troppo 23'38"
II  Scherzo                                12'49"

CD 2:
III  Andante moderato                15'10"
!V  Finale, Allegro moderato         31'35"

ゆ: 聴いてみましょうと言いながらいきなり脱線してすみませんが、この三角形の繰り返しをモチーフとしたジャケットはおそらく二十世紀の仇花未来派の絵ですな。
は: 仰せの通り、英国の未来派C.R.W.Nevinson様の1914年の作品「Returning To The Trenches」だそうですが、1914年と言えば第一次世界大戦開戦の年ですね。
ゆ: なるほど「塹壕への帰還」ですか、「悲劇的」と言う表題に通じるところがありそうですね。

は: さて、このCD、2枚組でございまして、

第1,2楽章が1枚目、第3、4楽章が2枚目

という変わった構成になっております。
ゆ: それも第2楽章にスケルツォを、第3楽章にアンダンテを置くという旧式になっているところに含みがありそうですな。
は: その通り、この順序の正当性について、自らライナーノートで

グスタフ・マーラー交響曲第6番における中間楽章の順序を巡る考察

と題する論陣を展開しておられます。
ゆ: 理論派の面目躍如ですな、それもTak Saekiさんが泣いて喜びそうな(笑。この順序に関しては以前「マーラー5番勝負 Part I」でも考察はしたのですが、やはりこの順序が聴き易いですね。
は: しかも1と2、3と4は各々アタッカで結んでもいいくらいだとおっしゃってますね。
ゆ: そこまで言うか(苦笑、してフェルツ君の理論的根拠や如何に?
は: フェルツ様の論点をごく簡単に集約しますと、

「4つの楽章の(Urzelle(独)、Primordial Cell(英))の数を検討して二つに分けた場合、明らかにスケルツォを2番に置くほうがバランスが良い」
「第1楽章の出だしとスケルツォの出だしは1/4=1/8で呼応している」

ゆ: またまた小難しい理屈をこねておりますが、要するに前者は「そのほうがおさまりがいい」と言うことでしょうな。後者は以前から肯定論者が主張してることですけど、4/4と3/8拍子の違いはどう説明するんでしょうか。
は: 「前もって第一楽章最終小節の休符により予告されている」そうでございます(-.-)。
ゆ: さ、さよか(^_^;)。井上道義先生の頭の上でやかんが沸騰しそうですな(苦笑。

は: と、前置きが長くなりましたが、理論派のフェルツさんの側面がご理解いただけたかと存じます。では演奏を聴いて参りましょう。
ゆ: フムフム、思わずニヤニヤしてしまいますな。いやあ面白い、と言うか、実に興味深い(ガリレオ風。
は: 思ったより素直な演奏でございましたね。
ゆ: そうですね、思ったより軽快で颯爽とした演奏でしたね。それにこれだけ大編成の楽器を全て綺麗に鳴らしていますし、そのバランスも大変良かったです。
は: それに応えているシュトゥットガルト・フィルもなかなかのものでございます。
ゆ: 質感が軽いところをみると、このオケはまだ若くて伸び盛りなんでしょうね。
は: 例の第一楽章の出だしなんか拍子抜けするくらいにあっさりしていましたものね。
ゆ: ゴジラの歩みがミニゴジラになってさっさか行っちゃうみたいな(笑。でも

「スタッカートのついた低弦の8分音符の間に8分休符が入る」

のならこれで良いのかもしれませんし、この感じは実は思い当たる節があるんですよ。
は: はて、それは?
ゆ: 以前ライブレポートした「井上道義のベートーヴェン」において、先生が「運命」を振られた際、

「こういう若い、しかも女性の多いオケでこの曲をやるならこういう方向性しか無いんです」

と前置きされて始まったジャジャジャジャ~ンライトスポーツ車のような軽快で軽くすっとばす感じが、この第一楽章の出だしの雰囲気ととても良く似ている気がするんですね。理論派の堅物に見えて案外柔軟な思考の持ち主なのかもしれませんね。
は: なる程、しかしその後のアルマのテーマは帯の惹句によりますと

「思い入れたっぷりのねちっこい歌い回し」

となっておりますが?
ゆ: あまり感じませんでしたね、ここも思ったより清清しい感じで通り抜けてしまったような気がします。テンポ・ルバートと言う意味ではショルティさんの方が余程アルマのテーマをねちっこくやってるような気がしますね。続く第二楽章スケルツォも予想通り第一楽章と同じテンポで始まりますね、自分の信じる道を歩んでおられますな(笑。

は: 2枚目に移りまして、第三楽章アンダンテもその美しさを存分に表現しながらも軽快でございます。
ゆ: もちろんVPO程の美麗さを期待するのは酷なんですが、ここではオケのメンバーを立てて存分に歌わせている気がします。その上で結構ねちっこい色気を感じさせますね、
は: まるで第3回のポートレートの色男的な、でございますか(笑。
ゆ: やっぱり結構スケベなのかもね(^_^;)。

は: そしていよいよ第4楽章でございますが、ついにやってくれましたね(笑。
ゆ: 嵐のような最終楽章ですな、今まで大人しくしていた分、思いっきりテンポ・ルバートデュナーミクを効かせまくっておりますが、さてはこれをやりたいが為にそれまで我慢してたんでしょうか(笑。まあ確かに1~3と4でこれだけ印象の違う演奏も珍しいでしょう。これを以て私も

「立派なヘンタイ演奏」

と認定いたしましょう(爆。
は: 具体的に申しますとやはり打楽器の咆哮の凄まじさでございましょうか。
ゆ: それとその前後のテンポの緩急の落差でしょうね。この楽章で数度入るドコドコドッカ~ンの前は溜めに溜めまくってテンポを落としますね。
は: 最後の一撃の前のゲネラル・パウゼ(総休止)なんか物凄くわざとらしいですね。
ゆ: そうそう、そこまでやるか、み・た・い・な!一方で飛ばすところは前のめりでかっ飛ばしてますから、驚くべきことにトータルで31分35秒で収まってるんですね、これが。
は: Part 1で数枚の演奏を比較いたしましたが、ショルティ様の27分を別にすれば時間的にはほぼ標準的でございますね。31分と申しましても最後の拍手が1分くらい入っておりますし。
ゆ: とにかく久々に30分以上眠気が来なかったですよ。
は: それはご主人様が送る最大の賛辞でございましょう(-.-)ボソッ。
ゆ: お褒めに預かり光栄です(違。

は: さてこのDreyer-Gaidoレーベルの録音はいかがでしたでしょう?
ゆ: オーディオファイルが感動するほどの好録音とはいきませんが、いぶし銀のような渋さを感じますね。それにこの曲の持つ広大なDレンジをそのままに入れてるところなんかは如何にもドイツ人気質だと思いました。
は: その分、弱音部は本当に音量が小さいですね。
ゆ; カーステやiPodなんかじゃ周囲の雑音に埋もれそうですね。次に先程も述べましたが、サウンドステージがそれ程広がらないのに各楽器の分離がとてもクリアです。と褒めておいて敢えて個性的な点を挙げるなら、このMichael Dreyerと言う人、多分に

打楽器フェチ

じゃあないですかね。このホールのことは全然知らないんですが、一回きりのライブレコーディングで、どうしてあれだけティンパニグラン・カッサの一打一打がクリアで、なおかつその残響音がホールを揺るがす感じまで収録できるのか不思議なくらい見事に録音されています。一体どこにマイクを立ててるんでしょうか?(^_^;)
は: 第四楽章など、しょっちゅう床が振動しておりましたね。
ゆ; これだけはSTAXでは分からん世界ですな(笑。まあそろそろ結論を言うと、お似合いのと言うか同じ臭いのする指揮者と録音技師が邂逅したんでしょうね。

「ちょっと変わっているけれど素晴らしい音楽的才能を持つ指揮者」と
「ちょっと変わっているけれど素晴らしい録音技術と勘を持つ録音技師」が出会って
「かなり変わっているけれど十分楽しめる演奏」

のアルバムが出来上がったという印象でした。第7番が楽しみになって来ましたね。
は: 今回は参考アルバムにもかかわらず、思いの他長尺になってしまい、皆様お疲れ様でございました。次回はいよいよ本題でございますフェルツ様の第7番「夜の歌」のレビューでございます。今しばらくのお付き合いをよろしくお願いいたしますm(__)m

ゆ: ウィ~(ニタ。
は: 最後にまたまたオードリーの春日ですか!いい加減にしろ(若林風)
ゆ: もう愛想が尽きたかい?
は: 愛想が尽きてりゃPart IIなんかやってねえよ(若林風)
は&ゆ: へへ~(^O^)、とオードリー風落ちがつきましたところで、最終回、よろしくお願いしますm(__)m

お気に召せばポチッとお願いしますm(__)m

にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村