ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Pictures from Russia; Three Organ Transcriptions / Hansjorg Albrecht

Pictures from Russia
 昨年末にタワレコで片っ端から試聴していて気に入り即買ったSACDです。ドイツの新興レーベルOehmsのHybrid SACDで、ロシアを代表する三名の作曲家の楽曲をパイプオルガンのみで演奏しています。演奏者はドイツのオルガン奏者ハンスイェルクアルブレヒトと言う方で、ライナーを読むとパイプオルガンの第一人者だそうです。

01-14: Pictures of an Exhibition ( Mussorgsky )
15: The Isle of the Dead, tone poem op.29 ( Rachmaninov )*
16-18: Three dances from the ballet "Petrushka"( Stravinsky )

*: organ transcription by Axel Langmann

Organist: Hansjorg Albrecht
Sound Concept and recording: Martin Fischer

 まずは何と言ってもムソルグスキーの「展覧会の絵」。この曲のファンである私としては当然一曲目の「promenade」を試聴して選んだわけですが、全体を通して聴くと何ともはや絢爛豪華な演奏です。ピアノはもちろん、ギター、マリンバ、シンセ等々様々な楽器での展覧会演奏を聴いてきましたが、こんなど派手な演奏は初めてですね(笑。

 同じ鍵盤楽器という事で、ムソルグスキーの書いたピアノ用のオリジナルに似た演奏になるのかな、と思っていたのですが実際は全く違いました。どちらかと言えばシンセサイザーエレクトーンで、ラヴェルのオケ用編曲を多重演奏しているような感じです。
 シンセサイザーと言えばすぐに英国プログレの名盤Emerson, Lake & Palmerの「展覧会の絵」を連想される方が多いと思いますが、それよりはむしろ冨田勲の「展覧会の絵」に近いかな。

 もちろん絢爛豪華な演奏が悪いわけではないのですが、慣れるのに時間がかかりそうです(笑。もちろんパイプオルガン好きのオーディオファイルにはたまらない演奏だと思いますが。
 ちなみにパイプオルガンは「The Cavallie-Colle-Mutin Organ」という機種で大小2台あり、、コールムチンと言う著名な19世紀のオルガン・ビルダーによって作られたそうです。キール聖ニコライ教会に置かれているのですが、現在は「2台を電気的に結合して大きい方のコンソールから演奏できる」との事で、何やら凄く大がかりな楽器のようですね。

Theisleofthedead
The Isle of the Dead, 1880
Arnold Böcklin (Swiss, 1827–1901)

 2曲目はラフマニノフの「死の島」ですが、題名からしても分かるようにやや陰鬱で寒色系の演奏です。しいかし、わざわざオルガン用に編曲してあるのが奏功しているのか、美しい音色が出しゃばりすぎず引っ込みすぎず落ち着いて聴け、3曲の中で一番好感の持てる演奏でした。雰囲気としてはベートーベンの「Tempest」に何となく似ている気がします。まあ素人の戯言ですのであんまり信用しないで下さい(^_^;)。

 素人と言えば、大体ラフマニノフがこういう曲を書いていたこと自体知らなかった(大汗)のですが、スイスの画家Arnold Böcklinの絵をもとにした標題音楽であるとのことで、ライナーの絵も印象的でした。この絵を見たくなりましたが、はるかドイツはライピチヒのMuseum Of Fine Artsにあるそうです。日本に来る機会はあるのかなあ(嘆息。

 そう言えば、と今更ながら思うのですが、Victor A. Hartmannの一連の「展覧会の絵」も、実物はついぞ見た事もありませんし、そう言う展覧会があったと言う話も聞いた事がありません。これだけ有名な絵にしては不思議ですね。

 3曲目の「ペトルーシュカ」も、「展覧会の絵」と同じくオケ全体の構想をパイプオルガン一台(正確には2台)でやってしまおうと言う感じの編曲です。成功しているかどうかは、聴く方それぞれによって思うところは違ってくるかもしれませんが、パイプオルガンがお好きな方にはお勧めできると思います。

 最後に音質ですが、久しぶりにSACDのアドバンテージを感じました。特に教会の残響がSACDでは綺麗にとらえられています。しかもこれだけの残響でパイプオルガンの超低音域が全く濁らないのは、もちろん奏者の素晴らしいテクニックあってこそだと思いますが、マスタリングも上手いんでしょうね。

 また、残念な事に拙宅では聴けませんがSACDマルチでの録音も収録されています。これは多分相当凄いんじゃないでしょうか、初めてマルチが聴いてみたくなりました。