ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

DG-38導入記(5)検証・応用編

Voicingmicrophone
 アキュフェーズのデジタルヴォイシングイコライザDG-38導入記もいよいよ応用編です。前回はトレーニングとしてフラットにヴォイシング(以下VC)した上でVC/EQのon/offでできるだけ音質が変わらないイコライジング(以下EQ)を行いました。次のステップはいよいよより良い音、より好みの音を求めて新しいエンヴェロープを作る作業となります。とは言え、「言うのは易し行うは難し」で、これを自分一人でやっておりますとどうしても独りよがりな音になりがちですし、柳沢先生のおっしゃるごとく一朝一夕には不可能です。

 そんな折もおり、Hoteiさんから「今度の日曜に行ってもいい?」と連絡がありました。DG-38を導入した事は報告済みだったのですが、その時にステレオサウンドの石井伸一郎先生のカーブを作ってもあまりいい音にならない、という事も伝えておいたのでそれを心配してとの事。渡りに船でありがたくお受けし、先日の日曜日二人で半日がかりで調整しました。二人で、というと聞こえはいいですが、殆どHoteiさんが頭脳と耳、私が手、という役割です(^_^;)。
 Hoteiさんの耳の凄さはつとに有名ですが、ご自身もギターやシンセの録音をされておられ、アナログのグライコは扱い慣れておられるんですね、もう負んぶに抱っこです(笑。

 まず、VC-B pattern(左右特性だけを揃えるVC)でのOn/Offの効果を聴いていただきました。これにはHoteiさんも「右のSPの音がとてもナチュラルで音場もよくなった」と感心され、DG-38の導入の効果は認めていただきました。

Eq081019
 さていよいよフラットヴォイシングからの調整ですが、先ず前回の最終パターン(写真上段)から始めました。調製用のディスクはいつもどおり「Fourplay 」です。これではギターがものたりないし、シンバルもカツーンと来ない、ということで400-800Hzあたりと1-2KHzあたりを持ち上げます。確かにこれだけで大分音が「オン」になってきました。

 そしてボーカルを何曲か聴いてみて、唇の擦過音、呼気音などボーカルの雰囲気が出る40-70Hzあたりを持ち上げます。少し声質が丸くなる感じがあるのが気にはなりますが、マイクの前で歌っていると言うリアルな感じが出てきました。特に歌唱に独特の雰囲気のあるRachael Yamagataのボーカルなどはゾクッとするような凄みが増しました。写真下段がその時点でのカーブです。

 ではこれでOKかというと全体的なバランスがあと一息というところ。そこで一つHoteiさんが気づかれたのが、高域側の減衰カーブが急すぎる事。部屋特性カーブを参考にこのあたりは作ったのですが、ディスクに入っている情報量をきちっと出すためにもあまり高域を急峻にカットオフしないほうがいいとのことです。

 ここで一旦攻め口を変えて石井先生のカーブを検討して見ました。ここでチョンボが発覚。どうしてだか記憶がないのですが、一番変な音になったパターンを呼び出してみると、石井カーブをVCとEQの両方に二度がけしていました(>_<)。EQをフラットに戻して聴いてみると、随分普通の音になりました(大汗。

Modifiedishiicurve
 それでもやはり低音が出すぎでクラシックでもまだ辛い音です。そこで再びフラットVCの音を呼び出し、1KHzまではそのままで高域側の減衰を半分の-3dB/10KhzのカーブにEQしてみたところ、低域のボワボワした感じが大分おさまりました。写真上段がそのカーブですが、それでもクラシック専用かなあという音です。
 そこで拙宅の部屋特性にあわせ100-200Hzあたりを3dB下げ、その後二人の意見のすり合わせを行いながらHoteiさんに描いていただいたのが写真下段のカーブで、これを「ISHII -3dB」データと名付けてセーブし、色々なソースを聴いてみました。

 Hoteiさんの方が私より低域がどんと出ている音が好みなので「Fourplay」のベースは私にはややオーバー気味に聞こえます。ただ音のバランスは今まで聴いてきた中で最高です。音にボディ感があり、なおかつ音のなまる帯域もありません。
 引き続きボーカルやジャズ、クラシック等も聴いてみましたがオールラウンドに適応できる音です。これで駄目だったのは、聴いたかぎりではジェニファー・ウォーンズの「The Hunter」だけ。例の40Hzまで凄い低音の入っているディスクです。逆に言うとこのディスクは低音入りすぎで、これで調整してしまうと他の大部分のディスクの低音が過少になってしまう恐れがあります。Hoteiさんも

「Fourplayの低音がMAXと考えて調整した方がいいやろね」

というご意見でした。

 ということで低音入りすぎのディスクはVC-B patternで聴くことにして、現在様々なジャンルのディスクを「ISHII -3dB」で聴きこんでおります。200Hz以上の部分はもう私がこれ以上いじる事も無いかなと思います。低域を0.5dB単位で少しずつ動かして私のスイートスポットを見つけるのが残された課題だと思っています。

 最後は結局Hoteiさんという極めて優秀なシェルパに荷物を全部持って頂いて登山している素人のようになってしまいました。一人で苦労されておられるオーディオファイルには申し訳ない限りですが、とりあえずDG-38導入記ひとまずこれにて終了です。長のお付き合いありがとうございました。m(__)m