ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

佐伯祐三展再び@大阪市立美術館

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(ヴェルダン/佐伯祐三
 今日は天王寺に有る某大病院の外来受診日でした。午前9時半に着いたのですが、診察は午後1時半からになるとの事。。。でも、めげません(笑、ちょうど天王寺公園内の大阪市立美術館で「佐伯祐三展」が催されていたのでそちらへ出かける事にしました。

Osakamuseum
 天気は快晴、公園内を気持ちよく歩いていくと横にそれていく小奇麗な道があります。名付けて「フェルメールの小径」。そう、2000年に催された歴史的フェルメール展で長蛇の列ができていた通路です。私も二度出かけましたが、その頃はテント張りのカラオケ屋が軒を連ねていて酔っ払いや胡散臭い人達で溢れていたくせにね(苦笑。

Doll
 実はこの美術館には心斎橋に分室があり、昔そこで行われた佐伯祐三展にハイエンドオーディオショウを抜け出して観にいった事がありました。だから、今回の展示も殆どを既に見ているのですが、それでも行きたかったのはもう一度「人形」という作品を見たかったからです。小品なのですが、彼が魅入られてパリでの一か月分の生活費を惜しげもなく払って購入した一対の人形の片方を描いたものです。
 写真の3500円のポスターでは何でこんな作品をわざわざ見にいったのか分からないと思いますが、実物は底無しの魔性を秘めた傑作です。一気に描きあげた様な大胆な筆致、帽子の羽根飾りの赤の油彩の濃厚な盛り上がり、目の黒の力強さには思わず心臓が高鳴ります。周囲の何も塗られていない空白には、人形を描ききったあとの彼の虚脱が見てとれる思いがします。

 実物を見ないとその良さが分からない、というのは佐伯祐三の作品全体に言える事でもあると思います。試しにリンク先の代表作品を覗いて見てください、あれだけでは決して彼の作風やその魅力は十分伝わってこないと思います。もちろんそれでも気に入っていただけるとファンとして嬉しいですが。

 油彩絵具を用いて描かれるオイル・オン・キャンバスは他の絵画と違って三次元の芸術ではないか、と私は良く思うのですが、殊に彼の場合は油彩の大胆な塗り込め方や多用されている文字描写にその傾向が強いと思います。そしてパリ時代の作品にその傾向が顕著であると思います。
 もちろん今回も第一期、二期のパリ在住時の作品が多数展示されていましたので楽しめましたが、残念だったのはガラス(アクリル?)カバーの額装がしてある作品が結構多かったことです。ガラスの奥に封印されてしまうと油彩の質感が伝わってこないんですよね。

 嬉しいサプライズもありました。彼に「絵画は単なる写実だけではいけない」と示唆し重要な影響を与えたヴラマンクユトリロ里見勝蔵をはじめとする所縁の画家たちの作品も多数展示されていたことです。特にヴラマンクの冬の風景の「濃紺」、ユトリロの代名詞とも言える「」の色彩には心動かされるものがありました。

 10月19日までとあと僅かしかありませんが、興味のある方は是非どうぞ。