ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

シャガール展@兵庫県立美術館

Chagall_2
 実は9月初めから拙ブログでは毎度お馴染みの兵庫県立美術館シャガール展が開催されているのですが、何やかやで機会を逸しており、先日やっと行ってきました。
 マルク・シャガール(1887-1985)はもちろん20世紀を代表する画家の一人なのですが、長生きされて晩年には数多くのリトグラフを作成されました。
 ですから今回のサブタイトルの「色彩の詩人」と評される画風はつとに知られていますし、ベタな話ですが街のギャラリーでリトグラフ一枚数万円、半額セールなんてのもよく見かけます。だから美術展にまで出かけて見るほどのものかどうか、という一抹の不安があったのですが、結果はと出ました!学生時代に一度大規模なシャガール展に行った事はあったのですが、それに匹敵するくらいの規模でしたし、滅多に見られない展示もありました。

『 ロシア(現在のベラルーシ)生まれで後年フランスを中心に活躍した20世紀最大の巨匠のひとり、マルク・シャガール(1887-1985)は、ロシア革命やふたつの世界大戦といった激動の時代を生きる中で、ユダヤ人としての自己を見つめ、また妻や家族の愛に満たされながら、その長い生涯にわたって、さまざまな技法により数多くの作品を手がけてきました。郷愁と詩情にあふれたそれらの作品は、いまもなお私たちの心をとらえて離しません。
 この展覧会は、モスクワにあるロシア国立トレチャコフ美術館とパリのシャガール家の全面的な協力を得て開催します。
 シャガールの画業の初期の集大成ともいえる壁画大作「ユダヤ劇場」全7点をはじめ、初期から晩年にわたって制作された絵画、版画、タペストリーなど約150点の作品で構成します。』

 解説にありますように彼も19-20世紀のユダヤ人の辛酸をなめ尽くした一人でした。生まれ故郷ロシアを去り、パリ、アメリカへと移住生活を送りますが、それにはもちろん故国やナチスユダヤ人迫害が関係していました。
 良く知られている事ですが、それ故に望郷の念が彼の作品には強く反映されており、故郷ヴィテブスクの街やユダヤ人の風習がモチーフとして登場します。それに関して今回はユダヤ劇場の7点の大壁画が展示されており、これには感動しました。
 リンク先の上手い説明で詳細を知る事ができますが、最大の「ユダヤ劇場への誘い」は3x8メートル近くあり、実物の与えるインパクトはとても大きかったです。

 一方で情熱的な男性でもあり、空を飛ぶ恋人たちのモチーフはあまりにも有名ですね。今回は病死してシャガールを悲嘆に暮れさせた最愛の妻ベラがモチーフの絵画はもちろんの事、60台で結婚した3人目の妻ヴァヴァ肖像画もとても美しく、目を引きました。

 材質・技法も多岐にわたっており、オイル・オン・キャンバスはもちろんの事、グアッシュ、テンペラ、水彩、エッチング(ドライポイント・アクアティエント双方、水彩処理もあり、材質も紙、和紙と多様)、そしてリトグラフとあらゆる種類の展示がありました。そして、、、

Peacechagall

 最後に一番驚いたのがタペストリです。「平和」、「アルルカン」、「モーゼ」と題された3つの巨大なタペストリーで、もちろんシャガールが製作したものではなく、遺族の許可の元に製作されたのですが、特に「平和」は4x6メートルの巨大な作品であり、しかもその色使いが油絵そのものとしか思えない趣きがあり圧巻でした。これの半分のサイズでいいから作ってもらって拙宅の壁に貼りたいと思いました。吸音にもなるし(結局それかよ(笑))。

 冗談はともかく、ユダヤ劇場の壁画とタペストリーを観るだけでも行ってみる価値があると思います。関西の方で10月15日までにお出かけになれる方は是非どうぞ。