ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

虹の女神 Rainbow Song

虹の女神 Rainbow Song
はむちぃ: 皆様お久しぶりでございます、はむちぃでございます。久々の映画レビューは先日の「暗い所で待ち合わせ」のレビューの最後にゆうけいが「機会があればやります」と申しておりました「虹の女神」でございます。
ゆうけい: いやあ、なかなかやる機会が無くってねえ、遅くなってしまいました。
は: なにか、本心がチラッと垣間見えたような気がいたしますが(^_^;)、要するにオードリー・ヘップバーン様、田中麗奈様に続きまして蒼井優様の盲目女性役映画でございます。

2006年、日本映画
監督 : 熊澤尚人
原作・脚本 : 桜井亜美
プロデューサー: 岩井俊二

出演 : 市原隼人上野樹里蒼井優酒井若菜鈴木亜美相田翔子小日向文世佐々木蔵之介 、 尾上寛之 、 田中圭ピエール瀧 、 マギー 、 大橋未歩

『  空に水平に走る珍しい虹を写メールして、アメリカにいる友人・あおいに送った智也。だが彼女からの返事はなく、帰ってきたのは彼女の事故死の知らせだった。葬儀などが行われたりする中で、いつしか智也はあおいとの出会いなどを振り返っていくのだが…。
   気持ちいいくらいに時間がかっ飛び、物語が進んでいく中で、実はお互いに好きあいながらも、その関係がどこかで熟しきれなかった男女のせつない絆を、スーパーリアルな映像でつづった感動作。主人公たちを演じる市原隼人上野樹里の本当に演技なのかと疑いたくなるほどのリアリティすぎるやりとりには脱帽。またその関係にそこはかとなくユーモアも取り入れつつ、見事な日常表現をしてみせる熊澤尚人監督の演出も拍手モノだ。また上野の父親役の小日向文世ら脇の演技も相当に泣かせる。(横森 文) (AMAZON解説より)』

は: なかなか良くできた青春映画でございましたね。鈍感なのかずるいのか、傷つくのを怖がっているのか、お互いに好意を抱きながらもすれ違ってしまう男女の感情の機微が良く描かれておりました。
ゆ:  熊澤尚人と言う監督は蒼井優主演の「ニライカナイからの手紙」を撮った人なんですが、全体のトーンが岩井俊二そっくりだったんで観ている間中ずっと不思議な感じがしてたんですが、エンドロールで彼がプロデューサーをやっていると知って笑ってしまいましたね。まあ、悪いと言ってるわけじゃないんですけど。

は: 何はともあれ、主人公の女性が飛行機事故死する直前に男性の主人公が不思議な虹の写メールを送る、という場面から始まる所謂倒叙型のストーリー展開で且つ細かく章分けをした構成は大変見事でございました。
ゆ: 良く出来た映画ですし、感覚的にもはっとする演出が随所にありました。タイトルロールからして最近の日本映画では出色でした。静かなピアノ曲をバックに平行な虹を背景にして

   playworks
   a naoto kumazawa film
   hayato ichihara
   juri ueno
   rainbow song
   虹の女神

と6つのクレジットが流れるだけなんですね。この出だしの静けさは岩井俊二のセンスでしょう、「リリィ・シュシュのすべて」にエリック・サティを持ってくる人だからなあ。
は: 海外の映画祭への出品も意識していたのかも知れませんね。その他にもホルストの「木星」が効果的に使われておりました。
ゆ: そうそう、やっぱり一番有名な第二楽章なのがステレオタイプと言えば言えなくもないけどね。主人公の回想の中の上野樹里の姿と重なっていきなり流れてきた時はビックリしたけど、彼等が大学の映研で作っていた映画中映画「The End Of The World」であることが徐々に分かってきてなるほど、と思わせるところはなかなか手が込んでいましたね。

は: その主演のお二人の演技は素晴らしかったですね。
ゆ: 上野樹里には驚きましたね。「スウィングガールズ」「亀は意外と速く泳ぐ」のぬぼ~っとしたイメージしかなかったからね。完全に一皮も二皮も剥けた演技で「女優」の肩書に見合う女性に変貌しましたね。その他にはどんな映画に出ているのかあまり知らないんですが、これからは要注意ですね。
は: 彼女が市原隼人に演技をつけるシーンがございますが、ああやって成長して行くのであれば良い監督との出会いというのが如何に大事か分かりますね。
ゆ: そうですね、その市原隼人君にしても同じ事が言えるでしょうね。良い映画に巡り会えてよかったと思います。

は: さて、蒼井優様でございますが。
ゆ: 来ましたね(笑。上野樹里の妹の盲目少女役なんですが、今回ばかりは上野樹里の圧倒的な存在感に押されてチョイ役だなあと思っていたんですがぁ、、、
は: ラストシーンでございますね(^^♪
ゆ: そう、「終章:虹の女神」でのたった二つの台詞でこの映画の質を一段高いものにしてしまいました。
は:

「お姉ちゃん、岸田さんの事好きだったんだよ」

「バカだな、お姉ちゃんも岸田さんも」

これだけで今までの彼女の行動を全て納得させ、そしてストーリーに深い陰翳と余韻を与える、という実はこの映画で一番難しい役割を背負わされていたんですね。
ゆ: 熊澤、桜井、岩井の三人とも絶大な信頼をおいて起用したんでしょうけど、完璧な台詞回しでしたね、やっぱり凄い女優だなあと思いました。

は: 結局蒼井優賛美で終わってしまいましたが、本当に良くできた映画でございます、是非どうぞDVDでご覧くださいませ。
ゆ: と、ここまでで終わればいいんでしょうけど、一言だけ言わせて貰えれば、最近紹介している日本映画の良品はこういう風な、感覚的には優れているけれど内容は大した事ない小品が多くて今一つ物足りない気もします。
は: そう言われればこの映画だって、煮え切らない男と女しか出てこんじゃないかと言われてしまえばそれまでですしね。
ゆ: 大作を書けば荒唐無稽になってしまう今の映画界を救う存在はいつ現れるんでしょうか?
は: 「二十世紀少年」は堤監督で60億かけているそうでございますよ。
ゆ: まあ「二十世紀少年」に期待しても無理だとは思いますけどね(苦笑。