ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

スウィーニー・トッド

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 特別版 (2枚組)
はむちぃ: 皆様こん**は、今回の映画レビューはゆうけいお気に入りのティム・バートンジョニー・デップ・コンビの最新作「スウィーニー・トッド」でございます。
ゆうけい: ども、映画館で観たかったのですがかなわず、DVDレンタルを楽しみにしておりました。今回はホラー・ミュージカルの映画化ということで、賛否両論渦巻いておりましたので期待と不安半々で鑑賞しました。

『ロンドンのフリート街で理髪店を営んでいるベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)は、ある日悪徳判事ターピン(アラン・リックマン)の策略で無実の罪を着せられて投獄されてしまう。15年後、命からがら脱獄し、アンソニージェイミー・キャンベル・バウアー)という船乗りに助けられた彼は、スウィーニー・トッドと名を変えロンドンに戻ってきた。フリート街へと戻ってきた彼は、かつて家族と共に暮らしていた家の大家で、通称『ロンドン一不味いパイ屋』の女主人・ラベット(ヘレナ・ボナム=カーター)と再会。彼女から、残された家族がたどった悲惨な運命を聞かされて復讐を誓う。ラベットのとりなしで、元の場所で『営業再開』したトッドは、判事の懐刀である小役人・バムフォード(ティモシー・スポール)を丸めこみ、見事判事をおびき寄せることに成功するが…。』

スタッフ:
監督:  ティム・バートン
原作:  スティーヴン・ソンドハイム、ヒュー・ウィーラー
脚本:  ジョン・ローガン
音楽:  スティーヴン・ソンドハイム

は: 何とも陰惨で暗い物語でございますね。床屋がカミソリで客を殺し、階下の女主人が死体を材料にミートパイを作って売るとは何とも恐ろしゅうございます。
ゆ: ティム・バートン監督は以前にもジョニデプとのコンビで「スリーピー・ホロウ」というサスペンスを同じようなゴシック・タッチで作っているんだけれど、話自体がそれよりなお陰惨でグロテスクですね。彼としては日本で初めてのR15指定を受けたのもむべなるかな、というところですね。
は: おまけに主人公のジョニー・デップ自身が無益な殺人を平然と繰り返しますし。
ゆ: そうそう、コンビの代表作である夢物語のようなタッチの「シザーハンズ」と同じようなメークはしてますが、シザーハンズのような無垢さや温もりが微塵も感じられない殺人鬼と化してしまってますから、まあ

「いくらジョニー・デップでもこんな映画は嫌だ」

という人がいても仕方ないでしょうね。個人的にはどんな役でも平然と演じられるのが彼の持ち味だとは思いますけど。

は: それにしてもどうしてわざわざこんな嫌われるような映画をお作りになったんでしょう?弱者や社会の底辺で生きている人たちへの温かい眼差しがティム・バートン様の持ち味だったように思うのですが。
ゆ: そう言う意見が多いようですが、私が思うにはティムは決して感動ヒューマン映画を撮る大監督ではなくて、未だにB級作品にこだわっているカルト監督なんだろうと思いますね。大体彼はもともとホラー大好き少年で、ヴィンセント・ブライスに熱中していたそうですし、こういうブロードウェイで大ヒットしたホラー作品を観ると血が騒ぐんでしょう、そう言う意味ではやはり彼らしい映画なのではないでしょうか。

は: 確かに映像はティム一流の美学が貫かれていますね。
ゆ: 彩度を落とした暗めの映像の中で血の赤だけを鮮烈に描くところなんてこだわってますよね。あの赤はちょっと赤すぎて血に見えないくらいなんですが、

「オリジナルの劇に忠実に作った」

そうですから、いかにも人工的なところさえ彼の計算のうちなんじゃないですか。

は: では俳優陣の演技はいかがだったでしょうか?
ゆ: もう芸達者ばっかりですから、安心して観ていられますね、、、と言いたいところなんですが、個人的には二つほど問題点がありました。
は: で、その一つ目とは?
ゆ: ティムのパートナーのヘレナ・ボナム=カーターが上手すぎて完全にジョニー・デップを喰っちゃいましたね。元々演技は達者な人なんですが、人形劇を除いては旦那とジョニー・デップのコンビの時は控えにしていたんですけどね、本性が出ちゃいましたか(笑。
は: 「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」のゆうはむレビューでご主人様が

『ゆ: 何と言ってもヴォルデモート卿軍団最強の敵役魔女ベラトリクス役のヘレナ・ボーナム・カーターですね、あそこまでやるとはジョニー・デップも苦笑いしてるでしょう。』

とおっしゃってましたが、まさにその通りでございますね。

ゆ: 実は第二の不満もそれに関係してるんですよ。仇役のターピン判事を演じるのがアラン・リックマン
は: 彼の名前を知らない人でもハリー・ポッター・シリーズの重要人物セヴェラス・スネイプ先生と言えばピンと来ますよね。
ゆ: それがかえって災いしているんですよ。この映画でも喋り口がスネイプ先生そのままなんで、真剣に嫌われ役をやっていても台詞を聞くと思わず笑っちゃうんです。おまけに部下がティモシー・スポール
は: ワームテールことハリーポッターシリーズの情けない悪役にして醜男のピーター・ペティグリューでございますね。
ゆ: そうそう、実際第6巻ではスネイプ先生にこき使われてるんですよ、この映画と役柄までそっくりじゃないですか。
は: もちろんお二人ともに演技には文句のつけようがない適役ではあるんですが、ヘレナ様のハリポタシリーズ登場を利用しての配役とも取れますね。
ゆ: そうそう、ティム・バートン独特の茶目っ気かもしれませんが、話題作りを兼ねてわざとこの配役にしたかもしれませんね。

は: 最後に音楽ですが、ティム・バートンと言えばダニー・エルフマンというくらいほとんどのティム作品で音楽を担当されてましたが、今回は違いますね。
ゆ: まっ、元のミュージカルの作曲がスティーヴン・ソンドハイムですから、これは当然でしょう。それにしてもみんな歌が上手いですね、ジョニー・デップなんか感動するくらい上手かったです。公私共に多忙を極めているようですが、どこでヴォイス・トレーニングしてたんでしょうね。
は: 殆どの登場人物がミュージカル初挑戦だそうでございますが、とてもそうは思えませんね。
ゆ: 徹底的にミュージカルにこだわった、と言う意味ではティムらしい「こだわり」に溢れた作品でしょう。

は: というわけで公開当初賛否両論渦巻いていた作品でございますが、「B級映画の巨匠」という観点からみれば立派な(笑)ティム・バートン作品でございます。
ゆ: ホラー作品の嫌いな私でもそれ程嫌悪感無く観られましたから、ティム・バートンが好きな方にはやっぱり観て欲しいですね。問題は彼がこれからどこへ行こうとしているのかなんですが、私としてはあくまでもB級にこだわってジョニー・デップと二人三脚でやって欲しいです。