ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

クワイエットルームにようこそ

クワイエットルームにようこそ 特別版 (初回限定生産2枚組)

はむちぃ: 皆様、お元気でいらっしゃいますでしょうか、またまた映画レビューでございます。今回は「クワイエットルームにようこそ」を取り上げてみたいと思います。理由は言うまでもございませんが、一応ご主人様から言ってもらいましょう。
ゆうけい: どもっ、ゆうけいどぇっす。当然ながら日本映画の宝、蒼井優さんの切れるような演技を鑑賞する為でございます。

バツイチのフリーライター佐倉明日香(内田有紀)は、目覚めたら真っ白な部屋で手足を拘束されて寝ていた。彼女は閉鎖病棟の中でもやっかいな患者が入れられる“クワイエットルーム”にいたのだ。この病院には、自分の髪を燃やしたり、拒食症(蒼井優)で吐いたり、何度も閉鎖病棟から出ようとしてはがい締めにされたりといろんなタイプの病んだ人がいた。でも私はフツーなのに…。やってきた恋人(宮藤官九郎)に聞くと、どうやらオーバードーズで倒れて運ばれたらしい。睡眠薬の量が多すぎたのだ。明日香はずっと不眠症で、それは離婚したときから始まっていた。いったい何があったのか? 彼女は閉鎖病棟から出ることができるのか?
 “大人計画”の松尾スズキが、芥川賞候補になった自身の同名小説を映画化したブラックな味わいのコミカルな人間ドラマ。(斎藤香、AMAZON解説より)』

は: ご主人様は難病ものとか病院サスペンスものは大嫌いなんじゃないんですか?
ゆ: 日本のものはスタッフの知識不足、取材不足で荒唐無稽すぎるからね。ところがブラックコメディのはずのこの映画、プロが見ても不思議なリアリティがあるんだよ、松尾スズキって余程閉鎖病棟に詳しいのかね?。
は: 松尾様に怒られますよ(--〆)、で、例えばどんなところがでございます?
ゆ: 普通の方はいきなりの五点拘束にびっくりされるかもしれませんが、その後明らかになっていく経過から見ても当然の処置ですね。最初に出される気持ちわる~い流動食もあるある(^O^)、ってな感じです。また、りょうが演じてる婦長は

「冷酷な鬼婦長」

って言う設定だけどプロから見ると非常に優秀なナースですね。
は: 患者に首を刺された過去があるって設定でございますが、そんな事されたら普通辞めますよね。
ゆ: あれだけ切れるナースなら自分が院長でも是が非でも引き止めますね、きっと(笑。

は: なるほど、しっかりした医療現場の取材に基づいた上でコミカルな脚本を書いていると言うわけでございますね。
ゆ: ただ一点だけ現在医療の変化についていってない点を挙げておくと、内田有紀が最初の救急病院でやられて死ぬほど苦しむ胃洗浄は今はやりません。嘔吐による窒息や誤嚥の危険性が高いからです。まあ、それを知らずに未だにやってる医者も皆無とは言い切れませんけど。
は: では今はどうするんでございますか?
ゆ: 今は薬用炭に薬を吸着させて下から出します。もちろん点滴はして利尿も促しますけどね。
は: 以上で「ゆうけいの医学講座糸冬了~」でございます(-_-)。
ゆ: を~い、2ちゃん用語で勝手にしめないでくれよ~(T_T)

は: はいはい、分かっております、俳優陣でございましょ、じらすわけでもありませんが、先ずは主人公から伺いましょう。
ゆ: ややだらしなくて自棄的なところもあるけど不幸が染み付いた気の毒な女、と言う設定なんですが、それを実生活でも苦労した内田有紀にやらせたスタッフが凄いな(^_^;)。
は: 実生活での人間的成長が良い演技を引き出したようですね。
ゆ: そうですね、でも彼女の場合あくまでもごく普通の演技力なのですが、それについては後で検証しましょう。

は: 旦那役の宮藤官九郎もさすがの怪演でございます。
ゆ: 自分でも演出の出来る人ですからツボを心得ているよね。警官の目の前でガンジャを隠したマトリョーシカが転がるシーンには笑いました(^O^)。
は: 過食と嘔吐を繰り返し金に汚い元AV女優を演じる大竹しのぶ様も堂に入った演技ですね。
ゆ: をいをいまだかよ~(涙、まあ大竹しのぶはあれくらいお茶の子さいさいで演技しますわな、最初親切に見えて最後は憎たらしくなるところなんかホントうまいもんです。さっ、いよいよ蒼井優さんに行きましょっ!

は: 蒼井様はこの映画で拒食症の女性を演じるためにかなり体重を落とされたようですね。
ゆ: 見上げた女優根性ですな。
は: 閉鎖病棟の中では一番まともそうではございますが、それでもやはりそこから出られない女性を演じておられます。
ゆ: にたっと笑ってぼそぼそっと台詞をしゃべるだけで内なる狂気を表現するところなんかやっぱり天才だなと思いますね。
は: 実際閉鎖病棟からこちらの世界に戻って来れるか来れないかは紙一重に見えて凄い断層があるんでしょうね。
ゆ: そうなんだよ、そしてその戻ってこれる女性をごく普通の演技力の内田有紀、戻って来れない女性を天性の才能を持つ蒼井優に設定したところにスタッフの慧眼を感じますね。

は: 以上精神科病棟という暗く重いテーマをコミカルに描いた佳作でございます、荒唐無稽に陥る事のない脚本と演出、適材適所の俳優陣の頑張りで楽しめる映画になっております。
ゆ; 一応ハッピーエンドに見えて、実際この映画に出てきた患者たちの将来は正直なところ暗澹たるものであろうことは容易に想像がつきます。それを分かっていて敢えて笑い飛ばして明るく描いた松尾スズキのセンスはブライアン・良~の~(笑