ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

夕凪の街 桜の国

夕凪の街 桜の国
は: さてみなさん、浜村淳はむちぃでございます。頃は桜の季節、原爆ドキュメンタリーの「ヒロシマナガサキ」のレビューも終わりました事ゆえ、今回はいよいよみなさんに「夕凪の街 桜の国」をご紹介いたしませう。
ゆ: さあみなさん、ハンカチの用意はいいですか~、1、2、3、ダ~(ToT)
は: そのネタは2チャン用語で「がいしゅつ」でございます(--〆)、まあ私メの浜村淳様風のイントロもそうですが。
ゆ: スマソ、でもね~この映画、夫婦揃って滂沱の涙を流しまくった記憶しか残っとらんのだ、はむちぃ君一緒にもう一回観ないかね?
は: はいはい(ーー;)、そんな事ではないかと思っておりました、ではなんちゃってホームシアターに参りましょう。

『「夕凪の街」昭和33年、復興が進む広島で、平野皆実(麻生久美子)は母親・フジミ(藤村志保)と貧しくも平穏に暮らしている。弟・旭(伊崎充則)は戦時中に水戸へと疎開し、そのままおば夫婦の養子になっていた。ある日、皆実は会社の同僚・打越(吉沢悠)から愛の告白を受ける。しかし、原爆で自分が生き残った罪悪感を感じる皆実は幸せに飛び込んでいけない。そんな皆実の思いを打越は優しく包み込む。

「桜の国」平成19年、夏の東京。定年退職した旭(堺正章)と一緒に暮らす娘の七波(田中麗奈)は、父親の最近の行動を心配していた。今夜も一人、家族に内緒で出かけていく旭のあとをつけてみると、広島へと行き着く。七波は広島で旭が立ち寄る先や会う人々を遠目に見ていくうちに、亡くなった祖母・フジミや伯母・皆実へ思いをめぐらせる。七波は家族や自分のルーツを見つめ、広島でかけがえのない瞬間をすごしていく。(AMAZON解説より)』

は: 、、、、、泣けますね、確かに。
ゆ: 、、、、、沁みますなあ。
は: こうの史代様の原作が優れている事ももちろんでございますが。
ゆ: 変に原作をいじらず、昭和33年の広島を描いた「夕凪の街」と平成の東京を描いた「桜の国」の二つにきっちりと分けた脚本が成功していますね。
は: その二つの物語において、原爆直後から約半世紀にわたって一人の男性と4人の女性が原爆禍でお亡くなりになるわけですね。
ゆ: 原爆の遺伝子に与える長期的影響の恐ろしさ、そしてそれによる偏見や差別が平成の今の時代にまで影を落としている事を、二つの物語に分けることによりうまく描いていましたね。
は: 監督が「半落ち」で感涙を絞った佐々部清監督様でございますからそのあたりもお上手なのでしょう。
ゆ: 実は「半落ち」はわざとらしい部分や医学的に納得できないところがあって個人的には必ずしも好きな作品ではなかったんです。だからこそ、今回はドキュメンタリーの「ヒロシマナガサキ」であざとい作為の有無の裏づけを取りたかったんです。
は: その結果納得されたわけでございますね。
ゆ: その通りですね。むしろ穏便な描き方なんだなと思ったくらいで、この映画のご家族には失礼ですが、もっと苛烈な人生を歩まれてこられた方も沢山おられるという現実には言葉もありません(涙。

は: さて、映画の内容なのですが、前半「夕凪の街」はまだまだ復興途上の貧しい広島の町を舞台に、原爆で父と妹を亡くした被爆者女性皆実様の哀しい運命を描いております。
ゆ: 原爆時、当時6歳の妹が背中に負われたまま

「姉ちゃんは長生きしてね」

と言い残して息絶えてしまい、自身も左手にケロイドを残している女性が、内心では好きな人の好意をその心の傷ゆえに受け入れられず苦しむ姿が哀れを誘いますねえ、あ、書いていてまた涙がキーボードに落ちるよ(オロオロ。
は: ご主人様、ポストモダン的表現は控えられますように(-_-)。そしてその恋人打越様が

「生きとってくれてありがとうね」

と抱きしめる場面がこの映画の一つのハイライトでございますね。
ゆ: オロロ~ン(ToT)、そして被曝後13年を経た彼女にも原爆症と言う過酷な運命が容赦なく襲ってくるんですね。まだバラックの立ち並ぶ、夕凪で蒸し暑い太田川のほとりでの皆実、恋人、疎開先から見舞いに帰ってきた弟の3人の語らいのシーンも深く印象に残ります。

は: 前半の主人公、皆実を演じられた麻生久美子様は素晴らしかったですね。
ゆ: 三日月さん、すごいじゃん(゜o゜)!
は: 時効警察オダギリジョーですか、あんたは(--〆)!
ゆ: いやいやほんとにびっくりしましたね、過去にも「カンゾー先生」みたいな佳作もあるにはありましたけど、一方で「赤影」や「魔界転生」をはじめとする数多くのトホホ映画に「美人だから」というだけで担ぎ出されてて気の毒でした(^_^;)。まあその苦労が実り(^_^;)?、ついに彼女の美貌と実力が遺憾無く活かしてくれる監督と出会う事ができましたね、キングあおぽんさんやhomさんもさぞお喜びでしょう(笑。
は: この熱演で昨年度の報知映画賞ブルーリボン賞の主演女優賞を獲得されておられます。
ゆ: 薄命の美人役というのは脚本さえよければ、それ程の演技力はなくても感動を与える事ができるとも言えるんですが、それを越えた何かが今回の彼女にはありましたね。
は: 多少広島便は拙かったとは思いますが、

「(原爆は)落ちたんじゃなく、落とされたんよ」
「私らが死ねばいいと思って落とした人がおったちゅうことでしょう」
「十年経ったけど、落とした人はわたしを見て「やった、またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとるん?」

と振り絞るように思いを語るところなどは本当に鬼気迫るものがありましたね。
ゆ: ああまた涙が(以下略)、、、ホントあのカタン日本アカデミー賞も、主演男優賞が東京タワーなんたらかんたらのオダギリジョーで主演女優賞が麻生久美子なら面白かったのに(笑。
は: 確かにどっちも読売系の協賛映画でございますが、それじゃあTV Asahiの思うツボでございます(-.-)。

は: さて後半「桜の国」にはいよいよご主人様のマイブーム田中麗奈様の登場でございます。前半の主人公皆実の弟石川旭堺正章)の娘役をされていますね。父の不審な行動の秘密や病弱だった弟と同級生だった友達の思わぬ関係を探るうちに、原爆が家族に残した傷跡を少しずつ理解していきますが。
ゆ: 現代っ娘らしいサッパリとした娘役を好演しておりますね、麻生久美子の亡くなった歳を少し過ぎてしまってまだ独身、原爆の事は良く知らないという設定で、今昔の女性像の違いをくっきりと際立たせた監督の手腕は大したものだと思います。
は: この配役が逆なら映画は失敗してたかも、と思いますね。
ゆ: そう、適材適所だったわけですよね。

「オマエは死んだ皆実姉さんに良く似ているんだ」

というマチャアキのセリフにはかなり無理があると思いますが(笑。

は: 堺様も「機関車先生」でもこの映画でも実に自然体で良い演技をなさっていますね。
ゆ: 原爆直後に父と次姉を、13年後に長姉を亡くし、そして歳月が流れ、母の反対を押し切って結婚した妻を亡くし、最後に母を亡くし、息子の遺伝を心配しているという役柄なんですが、彼がやると重すぎず軽すぎず、映画に絶妙のバランスを取ってくれますね。
は: それだけの不幸を背負っているにしては演技が淡白すぎるという見方もあるようでございますが。
ゆ: 私はこれくらいで良かったと思いますね。できれば娘が父の記憶の中に入り込むようなSF的設定じゃなくて、素直に父と娘が語り合ってほしかったと思いますが。
は: 淡白な表現ということで言えば、広島で皆実さまのお知り合い数人と再会されるところを娘の視点で遠景で撮る手法が控えめで好感の持てる演出かと思いました。
ゆ: その通りですね、特に先程述べた昭和33年の太田川バラック街と川辺が、現在の見事な緑を敷き詰めた河川敷に変わっていている場面が良かったですね。その風景の中で打越さん(皆実の恋人)と再会を果たすのですが、遠景でいながら堺さんならではの人間味がにじみ出ていて素晴らしかったですね。

は: ところでどうしてご主人様は田中麗奈様がそれ程お気に入りなんです?
ゆ: う~ん、正面切って訊かれると困ってしまうんだけど、ダイヤの原石みたいなところかな。とびきりの美人でもないし、蒼井優のような凄みのある演技力もないんだけど、ちょっとした仕草や物言い、目線の動き、表情の変化などにキラッと光るものがあるように思うんです。これからもそういう部分を伸ばしていって欲しいですね。
は: TVドラマ「猟奇的な彼女」も始まりますね。
ゆ: 素材としては彼女の魅力を活かせる面白い企画だと思うんですが、SMAPの使い回し枠ドラマでしょ~(ゲンナリ。あろうことか、TBSったら前宣伝にあの日本沈没」を持ってきましたよ、呆れてモノがいえませんね(--〆)。まあ麗奈さんにしても優さんにしても今後も映画をメインで体調に気を付けて頑張って欲しいものです。

は: 最後は愚痴になってしまいましたが、去年の邦画の中でも際立った名作だと思います。是非どうぞご覧ください。
ゆ: できれば「ヒロシマナガサキ」とセットでご覧下さいませ。