ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を
はむちぃ: これはまた古い映画でございますね、「ティファニーで朝食を」でございますか。ご主人様の学生時代の憧れの大スター、オードリー・ヘップバーン様の代表作の一つでもございます。
ゆうけい: そうそう、時代の変化もあるけれど、オードリーほどの女優はもう二度と出ないだろうなあ、と思うね。

『  舞台はNY。宝石店ティファニーに憧れ、ショーウインドーの前でパンをかじるのが大好きなコールガールは、人なつこくてかわいい女性。同じアパートに越してきた青年作家は、そんな彼女に次第にひかれていくが、彼女には秘密があった…。
   コールガールを演じても下品にならない、オードリー・ヘップバーンのキュートでエレガントな魅力が絶品だ。ジョージ・ペパードも、いかにも人のよさそうな好青年ぶりで、ヒロインに振り回される役がピッタリだ。原作はトルーマン・カポーティ、監督は『ピンクパンサー』シリーズでおなじみのブレイク・エドワーズエドワーズ監督の軽妙なタッチと、オードリーの都会の妖精のような、ふんわりとした軽やかさがマッチした、心地よいラブストーリーだ。(斎藤香、AMAZON解説より)』

は: で、またなんで今頃ご覧になったので?
ゆ: 話せば長いことながら、
は: 聞けば短い物語。
ゆ: かどうかはわからんが、以前の「冷血」の記事以来、私がトルーマン・カポーティを読んでいたことは知っておろう?
は: はいはい、カポーティ様の伝記でございますね、随分前からョコチョコとお読みになっておられましたが、やっと読み終えられましたか。
ゆ: 伝記というか証言集なんで、そうそう一気に読むもんでもなかったんでちびちび楽しみました。
は: 文庫本2冊分ちびちび楽しむのも結構大変でございましょう。
ゆ: まあね、でも映画も観てたし、トルーマン自身のことからアメリカと言う国の病理まで色々と発見があって面白かったです。先日亡くなったノーマン・メイラーカート・ヴォネガットなんかも頻繁に出てきますし。

は: で、カポーティ様の実像はいかがなもので?
ゆ: 本人も言うとおり、やっぱり

「ホモでアル中でヤク中で天才」

だったんだねえ。
は: 映画「カポーティ」でフィリップ・シーモア・ホフマン様が演じられたそのままでございますね。

ティファニーで朝食を―Breakfast at Tiffany’s 【講談社英語文庫】
ゆ: そうそう、でね、その天才の文章を読んでみようと思ったわけだ。となると簡単に本屋で手に入るのって「Breakfast at Tiffany's」しかないんだよ。
は: おもいっきりオードリー様を意識した表紙でございますね(^_^;)。
ゆ: 私も本屋で手に取ってドン引きしました(^.^)。でもね、内容は素晴らしかったよ。彼が目指したプルーストほどの思想性は無いし、フィッツジェラルドほどの美文でも無いけれど、ストーリーテリングとしては完璧で読み始めたら止められない魅力がありました。
は: ウィットや諧謔が持ち味との事でございますが、センスの古さは感じませんでしたか?
ゆ: 差別用語がバンバン出てくるあたりは時代を感じるけれど、文章としては今でも瑞々しさが失われていませんね。アパートの表札の名前が

「 Miss Holiday Golightly, Traveling 」

なんてスピーキング・ネームぽい上に軽やかな韻を踏んでいたり、麻薬密売容疑で仮釈放された後南米へトンズラした際の新聞の見出しに

TOMATO'S TOMATO MISSING」(Tomatoはマフィアのボスの名前)

なんてしゃれを効かせてたりね。伝記を読んだ後だから、脂の乗り切った時期の彼があの部屋でニヤニヤしながら智恵を絞ってたんだろうなあ、なんて想像できるんで余計に面白かったよ。

は: お名前は「休日に楽しく旅行に出かけるお嬢さん」みたいな感じで粋を感じますね。それでついでに映画も観てみようと言うことに?
ゆ: と言うことでもないと言うか逆と言うか、話せば長いことながら、
は: ほんとに長くなってまいりましたね(^_^;)
ゆ: これだけ完璧なプロットを勿体無い事に映画ではかなり崩してあるんだ。カポーティはこの映画に全く関与していないんだけど、見た途端、椅子からずり落ちたらしいよ(笑。
は: と言うことは久しぶりのトホホ映画で(苦笑?
ゆ: それがそんなひどい映画だったと言う思い出が無いんだよね、それが不思議でもう一度確認の為に見てみたというわけさ。
は: で、いかがでございました?
ゆ: やっぱり原作を味わってから見るとひどいな(-_-;)、

カポーティと一揉めしたジョージ・アクセルロッドの脚本は笑ってしまうくらいひどいし、

ジャック・クレイトンはやっぱり二流監督だし、

相手役のジョージ・ペパードはイモだし、

ナイト・ミュージアムにも出てたミッキー・ルーニーの日本人役は噴飯モノだし。

は: これだけ長い前振りの後でやっと出てきたと思ったら、改行してまでボロクソに言われる映画もちょっと可哀相でございますね(^_^;)、これでなんでトホホ系じゃないんでございます?
ゆ: ひとえにオードリー・ヘップバーンの魅力、それが全ての欠点をカバーしてお釣りが来て名作になったんだと言うことが良く分かりました。それとジョニー・マーサー&ヘンリー・マンシーニの「Moon River」の功績も大きいですね。
は: カポーティ様はマリリン・モンロー様をイメージしてお書きになったそうでございますね。
ゆ: その点だけはジャック・クレイトンの選択のほうが正しかったね。モンローのような肉感的美人だと娼婦と言う役柄が生々しすぎて、当時の世相から言うと総すかんを食ってたかもしれません。小説自体が最初「ハーパース・バザー」から掲載を断られたくらいだからね。オードリーのようなスキニーで知的でユニセックス的な女優だからこそ、まだ女性の道徳観の厳しかった世間から受け入れられたんでしょう。

は: 長くなりついでにもう一つ伺いたいんですが。
ゆ: 毒を食らえば皿までじゃ、何でも申すが良いぞ(~o~)。
は: ご主人様は映画を見た後、小説もお読みになったんでございましょ?
ゆ: エスアイドゥー(坂田利夫師匠)
は: 最後の最後に我慢しきれずに吉本ギャグを(嘆息、DIDでございましょ。で、その時はカポーティ様の凄さにピンと来なかったのでございますか?
ゆ: そうなんだよね~、「何じゃこの小説は?」位の印象しか残ってないんだよね。
は: それはまたどうしてでございましょう?
ゆ: 翻訳の問題だと思いますね。私が読んだ30年位前でさえ翻訳が古かったんだよ、ホリーの台詞が関東の置屋の女将みたいな物言いだと思った記憶があるもん。村上春樹氏が言ってたけど、原作がいくらエバーグリーンな名作でもその翻訳には旬があるんだな。
は: 新訳が望まれますね。
ゆ: 村上氏とか、柴田氏とかがやってくれないもんかね。三億円でも当ててうまく隠居できたら東大の大学院にもぐりこんでわしが手伝ってもいいぞよ(笑。
は: またまた偉そうに(ー_ー)!!、ではでは長くなってしまいました映画レビュー(かしらん?)、これにて終了でございます。