ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Harry Potter and the Deathly Hallows

Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(UK)
(UK版ハードカバー)

 ハリー・ポッター・シリーズの第7巻です。全ての謎が明かされる最終巻であり、出版前夜は大変な騒ぎでした、あまりの人手にテロリストが自爆テロを中止したなんてニュースもありましたね。第5、6巻がかなり暗くて退屈だったのでいい加減飽きてきておられる方もあるかとは思いますが、そこはそれ、全ての謎が解決するわけですし、とにもかくにもこれで終了ですから読まない手はありません(^_^;)。

 結末と誰が死ぬのか(発表前の噂では二人)ばかりが注目されていましたが、実は最終巻で解き明かされなければいけない謎はもっと膨大なものでした。簡単にまとめておきますと

1: 主要登場人物にまつわる謎
2: 悪役の親玉Voldemortが魂を切り分けた7個のHorcurux(邦訳:分霊箱)とは一体何か、そして破壊方法はあるのか?
3: 今回新たに登場する3つのDeathly Hallows(邦訳は「死の秘宝」になる予定)の正体

1だけでも大変なのに2、3を単純に足し算すると10個ものアイテムを探さなくてはいけません。前巻までで判明しているものはごく僅かですから最終巻にかかってくる負担は相当なものになります。

 という事でやはり今回もハードカバーで600ページ超の長さになってしまっています。だから静山社の日本語版はおそらく今回も(上)(下)二巻になると思います。その点に関し一言言っておきますと、上巻では先ほど述べた点に関する解明は殆どなされずイライラするくらい話が進みません。私も約半分が過ぎた頃に、本当にあとこれだけの分量で謎解きできるんかいな?と心配になったくらいでした。
 でもご安心を、後半はめくるめく展開で全てのアイテムや謎が次々と解決していきますので息もつかせない面白さです。それはプログレ音楽における退屈なパートで溜めに溜めておいたエネルギーをラストで爆発させる手法に似ております、さすが大英帝国!(^_^;)

 まあその上でですが、ラストに関しては言いたい事はいろいろある(爆。という事で8月初旬に某所で書いたレビューをここに紹介させていただきます。

「 ローリング女史にはとりあえずお疲れ様でした、と敬意を表しておきます。今回もハードカバー版で600Pあまりの長編なので一ヶ月はかかるかと思ってまし たが約一週間で読み終えてしまいました。ここ一週間体調がdesperatelyに最悪だったので本を読む事くらいしかできる事がなかったと言えばそれま でなんですが、やっぱり率直に面白かったから、というべきでしょう。

まあそりゃそうで、ブリッジで伏線だらけで何も解決しないまま終わってしまう暗くて退屈な5,6巻に比べれば、全てが明らかになる最終巻がつまらないはずがありませんよね。

その上で敢えて言わせてもらえれば面白い割りに感動と余韻が少ない。まるでハリウッドのアクション映画のようです(笑。

ネタばれにならないように、あくまでも一般論としてハリウッド的アクション映画の欠点を列挙してみましょう。

『1:narrow escapeが多すぎる
間一髪の脱出が多すぎると、プロットとしてはスリル満点で面白いかもしれないが段々とリアリティが失われていく。確率的にはこいつらとっくにくたばっていて話が終わってるよなと思えてくるし、身の毛もよだつ恐ろしいオーラを放っていた敵がバカに思えてくる。

2:周囲に迷惑をかけすぎる
主人公たちの勝手な思い込みによって話は展開していくのだが、それにより周囲の無関係の第三者にかかる迷惑を全く考えていない。

3:どんでん返しをラスト近くで用意する
あらかじめ提示した前提を覆すのはある種不信感に繋がるし、話の整合性が微妙に崩れていく事が多い。

4:無駄なエピローグが多い
いかにもなエピローグをくっつけて続編を期待させるのは個人的には好きでない。』

念押ししておきますが、これは一般論でこの本の話ではありませんから(苦笑。

さて、御法川某が結末をばらしてしまったそうですが世間の結末に対する評価はどうなんでしょうね?実際発売前から結末にばかり注目が集まっていた ためローリング女史も相当悩んでいた節が終盤には多く見受けられました。上記3にも少し関係する事ですが、おそらくもっとすんなりと終わらせるつもりだっ たのじゃないかな、と言う気がしますし、個人的にはその方が余韻が残ってよかったのに、、、と思います。

というわけでラストには泣けませんでしたが、途中で一回だけ号泣しました。どこが、と言うのは伏せておきます。私にとってははむちぃを喪うようなショックでした(苦笑。

う~ん、ネタばれ厳禁のレビューはやっぱり難しいな(笑。結局ハリー、ロン、ハーマイオニーの成長とローリング女史の小説家としての成長が上手く シンクロしていた、3(アズカバンの囚人)、4(炎のゴブレット)巻あたりがこのシリーズの一番幸せな時期だったのじゃないかな、と思います。」

 最後に一つだけ、これ位のネタバレは許してもらえるだろうという事を紹介します。第一巻から延々とハリーを苛め続けては魔法でえらい目にあっていた超過保護の暴力息子ダドリー・ダーズリー君ですが、最終巻ではハリーもほろっとする位良い奴になってます。この展開に関してはとても好感が持て、ローリング女史に拍手を送りたいと思います。