ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

中原の虹 第三巻

中原の虹 第三巻
 浅田次郎氏の傑作「蒼穹の昴」の続編「中原の虹第二部から半年、いよいよ第三部の登場です。第一部の紹介時に書きましたが、本作品は全体で四部構想を予定しているとの事です。ですから、今回は起承転結の部分に当たる事になります。

『相次ぐ革命勢力の蜂起に、一度は追放した袁世凱を呼び戻す皇族。だが俗物、袁世凱には大いなる野望があった。満州では張作霖が、まったく独自の勢力を形成していき-。人間の強さと美しさを描く中国歴史小説、白熱!』(AMAZON解説より)

 第一部は、新しい主人公張作霖の紹介を通じて清と言う国の衰亡を、第二部では新帝「ラストエンペラー溥儀の選定と西太后・光緒帝の死を描いてきたわけですが、転の本書ではいよいよ清の滅亡が描かれます。所謂辛亥革命ですね。
 といっても革命軍との衝突があるわけではなく、亡き西太后の遺志、袁世凱の策謀により、6歳の宣統帝溥儀が退位される様子が描かれるだけで、劇的な展開というのは今回はありません。孫文も直接は顔を出しませんし、蒋介石も一瞬顔を覗かせるだけにとどまっています。

 一方張作霖はますますその勢力を拡大し本書においてほぼ完全に満州を掌中に入れ、革命軍との対決姿勢を鮮明にしています。しかし今回はここまで、山海関を越えるのは第四部を待たねばならないようですし、息子で龍玉を持つ張学良もまだ表舞台には登場していません。

 というわけで今回はクライマックスに向けての布石という段階で、さすがの浅田先生も感涙を絞らせるには至りませんでした。話の中では沢山の人が泣いてますが(苦笑。それにしても先生の西太后への入れ込みようは並大抵のものではなく、本書においても、う~ん、そこまでやるかという位の「活躍」を見せています。これには賛否が分かれるでしょうね。

 というわけで、第四部ではいよいよ国民党による北伐満州某重大事件が描かれるはずです。変える事のできない歴史の流れの中で、本書における数多くの登場人物達がどう出会い、どう別れていくのか、そして何よりも中原を統べるものの証「龍玉」は誰の手に渡るのか、、、完結編への興味はつきません。