ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

JBL:DD66000試聴会@神戸元町

Doublewoofer
 1月28日にルーツサウンドさんの主催でJBLの60周年記念スピーカーProject EVEREST DD66000の試聴会が行われました。オーディオファイルの方なら、去年のオーディオ界の話題と賞を掻っ攫ったこのスピーカーを知らぬ人はいないと思います。でも日頃ウィルソンやらアヴァロンやら現代型SPにしか関心を示さないオマエが何で?と言われそうですね。ルーツさんのイベントだから、と言うのももちろんありますが、11月のハイエンドオーディオショウで短時間しか聴けなかったものの、その音色が結構気に入ったんです。丁度オールマイティでしかも低音の量感がでるSPはないかな?と物色中だったものでそのアンテナにひっかかったものの一つでした。世評が分かれてるようにスタイルはどうかとも思いますが(^_^;)、昨日斜め横からずっと見てたら冒頭写真のように大きな目で流し目をくれているようで結構可愛かったですよ(苦笑。値段は可愛くないですけどね。

Miura
日時: 平成19年1月28日14-16時
場所: JUST IN TIME(元町の喫茶店
講師: 三浦孝仁先生
主催: ルーツサウンド
協賛: ハーマン・インターナショナル(株)
 場所はルーツサウンドではなく神戸元町のおしゃれな喫茶店、パラゴンが置いてある事でも有名なJUST IN TIMEでした。そう言えばロルフ・ケルヒのターンテーブルを新しく導入されたようなので普通の時にもまた行ってみたいです。
 講師は三浦孝仁先生。グリークラブで鍛えられた良く通る声で、各試聴ディスクについて聴くポイントを的確かつ丁寧に事前に説明していただけるので、先生の試聴会はとても勉強になります。休憩時短時間ですが御話をさせていただくことができ、最近導入されたAyreパワーアンプMR-Xや新製品の話、チャールズ・ハンセン氏の現況についてなど聞かせて頂く事ができました。

システム構成:
SP: JBL Project EVEREST DD66000 (Rosewood)
SACD/CD Transport: Accuphase DP-800
DAC: Accuphase DC-801
Preamplifier: Mark Levinson 326S
Power Amplifiers: Classe 400M x2
Cables: Siltech
Speaker Stand: Harman International Original (非売品)

 上記の如くのシステムで聞かせていただきました。総計1000万円超の贅沢なシステムの上、合計で一体幾らするのか想像もつかないSiltechの豪華ケーブルで繋いでありました。また、椅子での試聴に合わせてハーマン・オリジナルの足をはかせていましたが、これは非売品だそうです。また、マイフォトにでもそのうちアップさせていただきますが、DD66000の形に合わせてあって決まってましたね。
 これだけのシステムですから音は悪くあろう筈はありませんが、出ていた音の性質を思い出してみると、CDの音のグレードの高さはアキュフェーズの新製品800+801の性能の高さでしょう。そして低音の骨格のがっしりした安定感はマーク・レビンソンのプリの性格ではないかな、と思いました。ラッセのパワーは以前しゅうへいさん宅で聞かせていただきましたが何の心配も無くSPをドライブする安心感と肌理の細やかさが印象に残っています。今回もそれを感じました。

 と言うわけで、裏を返せばDD66000は、各機器の個性なり性能なりをそのまま提示するタイプのスピーカーであるとも言えます。そして三浦先生もおっしゃってましたが、ソフトの個性や録音の良し悪しもそのまま提示する、やはりJBLらしいモニターライクな製品ですね。

 じゃあ、今までのJBLのホーンスピーカーそのままの音なのか、と言われるとそうでは無かったです。所謂ホーン臭さのない、ハイスピードで精緻な音で、fレンジも広大、透明感溢れる音は私好みでした。これはまさしくコンプレッションドライバーとスーパーツイーターに奢られているベリリウムの個性なんだろうと感じました。だから高音域の音色にはフォーカル社のユートピアシリーズにも通じるものを感じましたが、実際、三浦先生によるとこの特殊な圧延加工したベリリウムの出所は両社とも「ウェルシュ・ベルマン」と言う会社なのだそうです。

 一方低音はさすがJBLと言う感じで、磁石も他社が真似できないほど強力らしいですし、更には横一列でサブウーファー(外側にするよう指定されているそう)を足すことにより、より密度感が増し力感の溢れるものとなっていました。また、以前良く同社のスピーカーに感じていた高音と低音で別のスピーカーが鳴っている様な音色のつながりの悪さも無く、良く仕上げてあるな、と思いました。

 実際その様な印象を裏付けるエピソードを三浦先生が語って下さいました。オーディオファイルの方は良くご存知だと思いますがS9500S9800のような高級シリーズが知られているのは実は日本だけと言っても過言ではなく、本国アメリカでは廉価なスピーカーを多産しているメーカーと受け取られています。しかし、この1月に行われたCESでは、このDD66000の試聴室をかなり大きな部屋に設けてグレッグ・ティンバース自身がデモを行ったところ、現代型スピーカを信奉するうるさがたのオーディオ評論家諸氏が驚き絶賛したそうです。

Classem400

では以下に試聴会のセットリストを記しておきます。三浦先生のおっしゃった試聴ポイントも簡単に記しておきますので参考にしていただければ幸いです。

Setlist:
01: Lights Of Louisianne(Jennifer Warnes: The Hunter)
 先ずはボーカルでSPの特徴を大まかにつかむ為のソース。このソースは拙宅でも試聴会でも何度と無く聴いているソースですが、質感はまさしく現代型高級SPのそれで、しかも前に出てくる感じでした。でもやはり低域のファンダメンタルがしっかりしている事が印象的でした。

02: アランフェス協奏曲バスター・ウィリアムスSACD Hybrid)
 続いてはベースで横一列のダブルウーファーの量感を確認する為のソース。やっぱりベースはJBLだなあと言う感じで溜息が出ました。それも重くないですし、音量がそれ程大きく無くても十分な量感がでるところが良いですね。

03: Mediterranean Sundance/Rio Ancho (Al Dimeora: Friday Night in San FranciscoSACD)
 ギターで476Beドライバーの音色の自然さ、鮮やかさと音の飛び方の両立を感じる為のソース。この頃のディメオラの指使いは凄かったんだなあと言う事が実感できます。

04: ポンセ (ウィリー長崎:海上への道、SACD
 倍音成分の多いパーカションで045-1Beスーパーツイーターの効果を確認するためのソース。実際STに布巾をかけてある無しの音の差を試してみられました。シャリシャリとした音の付帯音の多さと音場の深さにやや差が出た気がしました。

05: ヴァイオリン協奏曲第1番第3楽章 (ヒラリー・ハーンパガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番、CD)
 CD優秀録音で音の素性をそのまま出してくる性格を実感する為のソース。ヒラリー・ハーン独特の強くややきつめの音が良く出ていました。アキュフェーズの送り出し機器の効果でしょうか、それが嫌なきつさにならず大変品位のある音でした。CDでこれだけの音が聴けるのか、と感嘆しましたね。

06:  バッハ:コンツェルトDm (ハイフェッツ) 一方古い録音でもそれなりの雰囲気を出すと言うところでハイフェッツ。最近シリーズででているRCAリビングオーディオSACDシリーズの新譜らしいです。オリジナルのアナログを手に入れようと思うと大変ですから嬉しい企画ですね。

07: On The Sunny Side Of The Street (エミリー・クレア・バーロウ: ライク・ア・ラヴァー) 三浦先生最近お気に入りの女性ボーカル。若々しい声での歌唱の活きのよさ、ベースの音の跳ね方など、音が楽しいのはやはりJBLの個性でしょう。

08: Black Coffee ( Peggie Lee: Black Coffee、MONO) モノラルで古い録音ですが大変味があります。この曲で前半を締めてコーヒータイムに移るところなんかニクイ選曲ですね。

~Intermission~

09: Misty (山本剛トリオ: MISTY(FIM) SACD Hybrid) TBMの名盤中の名盤ですが、アメリカの高音質録音で有名なFIMから出ているハイブリッド盤です。山本剛独特の名前の通りの強い打鍵のタッチ、倍音成分による音質の高さ、ベースの雰囲気、そしてヒスノイズの違いなどをSACD層、CD層で聴き比べて体感しました。ヒスノイズが随分大人しくなりますね。

10: アクア・マリーン (鈴木勲トリオ: ブロー・アップSACD(TBM、リンク先はSonyのCD) これもTBMの名盤ですね。三浦先生がこの頃の日本のジャズは凄かったんだなあと実感できる演奏ですとおっしゃってましたがまさにその通り。今回の試聴の中で一番感銘を受けた演奏でした。ちなみに今TBM(スリー・ブラインド・マイス)の音源はなんとSCE久夛良木社長がお持ちだそうです。

11: プロコフィエフ交響曲第一番(ピアノ連弾) (マルタ・アルゲリッチ&ポリーナ・レスチェンコ、プロコフィエフ交響曲第一番 古典的交響曲SACD Hybrid(Avanti Classics))  続いてはピアノの連弾でスピーカーのダイナミクスを感じてもらうためのソース。

12: In A Sentimental Mood (星乃ケイ: イン・ア・センチメンタル・ムードSACD
 この頃良く三浦先生が雑誌に書いておられますが初めて聴きました。如何にも日本のジャズシンガーと言うまじめな歌い方ですが、もともとはポップス系の歌手だったそうです。シャープの1ビットプロジェクトに絡んだディスクだそうで、今回はオンキョーハウスからもらったレーベル面の印刷のないデモディスクを聴かせていただきました。

13: コリオラン序曲 (ウィーン・ラジオシンフォニー・オーケストラ)
  ここまで賑やかなオケの音が無かったからと言うことで。これも凄く良い演奏でしたし、良い録音でした。ドイツのマイナー系レーベルから出ているSACDで2千円しないそうです。この値段でこれだけの演奏を聴かせてもらえるとは、確かに幸せな時代に生きているのかも。

14: ニュー・シネマ・パラダイス (いむちじん: Rui
 ギターDUOで空気感を感じてくださいとのことでした。確かに眼前で演奏されているような雰囲気がありましたね。

15: Hymn To Freedom (Arne Domnerus: Heart Felt)
 サックスでホーン型の良さを、パイプオルガンでダブルウーファーの威力を感じていただく、というJBLの最高機種の性能を最も良く感じられるソースで締めると言う考え抜かれた構成に脱帽しました。この曲はオスカー・ピーターソンの作品だそうですが、涙が出そうなほど感動的な演奏でした。

 まあ、おいそれと買える値段ではないですし、日本のホームユースにはかなり無理のあるデザインではありますが、ステサンをはじめ各雑誌がこぞって絶賛するだけの事はあるな、と思いました。ルーツさんにも違う個体ですがしばらく置いてあるそうなのでまた機会があれば聴きに行こうかなと思います。