ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

西村元三朗回顧展@小磯記念美術館

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(「気象台が見える」1949年)
 本日で終わってしまう展覧会で申し訳ないのですが、佐渡裕のコンサート前に小磯記念美術館へ寄ってきたのでご紹介します。神戸出身の画家で5年前に亡くなられた西村元三朗氏の回顧展です。もう終わってしまうのでHPの写真をそのまま使わせていただきますがご容赦の程を<m(__)m>。

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(「二つの地平線」1951年)
『西村元三朗(1917-2002)は、神戸市に生まれ、神戸で活躍した画家です。1942年、小磯良平のもとを訪れ、デッサンの基礎を教わった西村は、その後、小磯らの結成した新制作派協会に参加し、時には小磯から制作に関するアドバイスを受けることもありました。

西村の作品には静寂で詩的な雰囲気が漂い、日常目にする、建造物のある風景をもとに表現された巨大空間は、私たちを、謎めいた未知なる世界へと誘います。

巨大空間に現れた不思議な建物や人物、ばらばらのように見えながらも関連しつつ浮遊する物体、ダイナミックな動きを見せる物体が、いかにして出現したのか。西村は作品に関する言葉も多数残しています。』(上記リンク先のHPより)

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(「変動」1958年)
 ほぼ年代順に並んでおり、更にご本人の解説も付記されていることもあり、大変分かりやすい展示でした。初期の小磯先生の薫陶を感じさせる具象から、「天文台が見える」のような日常から少し乖離したような幻想的な風景、更に一歩進んだ「二つの地平線」のような抽象的空間、最終的に具象が殆ど消失したブロックが空間に浮遊する「変動」のような画風に収斂していく過程が興味深かったです。

 それぞれの時代にキリコ、エッシャー、ダリ、手塚治虫、そしてCGアートを思い出させるような共通点がありながら独特のパステル調の色彩の中に独自の世界を構築されているのが好感をもてました。
 神戸に関係した作品にも目を惹かれました。特に「気象台が見える」は一見中世ヨーロッパのような、あるいは村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」のような架空の内的世界のような風景にも見えるのですが、実は神戸の菊水山の気象台がモチーフであることを知り驚くとともに神戸に住んでいるものとして大変親しみを感じました。また、後期の抽象的ブロック群には造船の造型が多くモチーフとして用いられており、造船所の取材写真も展示されていました。

 彼が今の時代に生きていればCGアートの世界に進み、あの複雑なブロック群を自由自在に動かしていたかもしれない、とか想像しながら美術館を後にしました。