ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

リバティーン

リバティーン
は: 皆様あけましておめでとうございます、はむちぃでございます、本年もよろしくお願い申し上げます。早速ですが本年初の映画レビューは少々マニアックな映画でございます。
ゆ: ジョニー・デップ主演の「リバティーン」でございます。去年の春頃公開されたのですが、「パイレーツ・オブ・カリビアン」と違ってほとんど話題になりませんでした。ジョニー・デップが好きな方にはたまらない映画なのですが、そうでなければ途中で勘弁して、と逃げ出したくなる方もおられるかもしれません。

   1660年代、王政復古のイギリスで、ロチェスター伯爵ことジョン・ウィルモットは、作家の才能がありつつも、そのセクシャルでスキャンダラスな内容が問題視されていた。女性関係も派手な彼だったが、エリザベスという女優に出会い、彼女の才能を開花させるべく丁寧な指導を施す一面もあった。しかし、ジョンは国王に依頼された、フランス大使を招く歓迎式典の舞台演出で、卑猥かつ刺激的な内容で、国王の顔に泥を塗ってしまう…。(AMAZON解説より)

は: た、確かに猥雑で壮絶で気持ち悪くなるところも多い映画でございました、奥様も気持ち悪がっておられましたですね。
ゆ: そうなのだ、だから借りるのをためらっていたのだが、これ以上待ってるとレンタル屋から無くなってしまうかもしれんのでな(^_^;)。

は: ジョニー・デップ様が脚本の冒頭3行を読んで、出演を即決したほど惚れ込んだそうでございますね。
ゆ: そうそう、冒頭のモノローグからしてデップ独特の世界を既に構築しているからな。最初から

「この映画を見終わったら私を大嫌いになっているだろう」

なんて予告する主人公はまあいませんよね。
は: その予告通りの「熱演」でございました(大汗。
ゆ: 喜怒哀楽をさらけ出し、放蕩に明け暮れ、酒と梅毒に苛まれ廃人同様に死んで行くかと思いきや、最後にチャールズ一世を助ける為に一世一代の芝居を打つ、という役どころはまさにジョニー・デップの為に設定されたかのようでした。そしてその出来栄えや「素晴らしい」と言う言葉を通り越して「壮絶」なものでした。まさにこれがデップだ、と言う感じで、彼の役作りに懸ける情熱の凄さをひしひしと肌で感じました。特に晩年、と言っても30代前半なんですが、梅毒に侵されてからのメイクと演技は鳥肌モ ノでした。ヨギータ風に言うと

ココマデヤルトハドギモヌカレタヤロ

ですな全く。

は: 生理的嫌悪感を含めて確かにいろんな意味で鳥肌ハム肌が立ちましてございます(^_^;)。このデップ様のために書かれたような主人公、放蕩詩人ジョン・ウィルモットこと第二代ロチェスター伯爵は、なななんと実在の人物だそうでございます。
ゆ: 時は1660年代ですから、教科書的に言えばクロムウェルチャールズ一世を倒した清教徒革命が終焉を向かえ、チャールズ二世王政復古を成し遂げた時代です。その頃のロンドンの貴族の性的退廃、庶民街や売春窟の汚さ、湿気の多い気候、疫病の流行といった背景が王や貴族の宮殿、劇場の先進性や華やかさと見事なコントラストをなして、暗鬱なこの映画に良くマッチしていましたね。
は: そのチャールズ二世を演じたジョン・マルコビッチ様も好演でございました。
ゆ: ジョニー・デップとは対照的な「」の演技で画面を引き締めていましたね。実は舞台ではマルコビッチロチェスター伯爵を演じていたそうですが、この映画の配役の方がはまり役だと思いますね。

は: 女優陣では何と言ってもロチェスター伯爵を真の愛に目覚めさせる女優役を演じたサマンサ・モートン様が光っておりました。
ゆ: ぱっと見にはそれほど画面に映える女優さんでは無いと思ったのですが、荒削りな新進女優が彼によってその才能を開花させていくプロセスと、それと平行して反感が愛情、そして憎悪に変化していく表現力が見事で、本当の実力のある舞台女優で無いととてもこなせないと思われる難役を見事に演じきりました。余計なお世話と言われそうですが、日本にこれだけの役をこなせる同世代の女優が果たしているだろうかと嘆息をついてしまいましたね。

は: それ以外ではどなたか目につかれましたか?
ゆ: 始めは端役と思っていたロチェスター卿の妻役ロザムンド・パイクが後半、病に倒れた夫に対して炎のような怒りと愛をたたきつける演技にはビックリしました。この人も大変な実力の持ち主ですね。
は: どこかで見た事があると思いましたら「007/ダイ・アナザー・デイ」でフェンシングの達人としてボンドと渡り合ったあの美人女優さんでございました。

ゆ: こうしてみると、主演クラスが全て演技の達人揃いで各人が丁々発止の火花を散らせていたことが分かりますね、それだけにデップの演技にもいつもに増して力が入っていたのでしょう。
は: どんなに気持ち悪いとは言え、これはもうデップ様の代表作と紹介しても決して褒め過ぎではない作品でございますね。
ゆ: これだけの作品を作り上げたローレンス・ダンモアと言う監督はまだ新人でこれがデビュー作なのだそうです、これからが楽しみな人が出てきました。

は: という訳でございまして、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジャック・スパロウや「チャーリーとチョコレート工場」のウォンカのようなジョニー・デップ様を期待される方にはお勧めできませんが、真のデップ様の凄みを経験してみたい方は必見でございます。
ゆ: もちろんハリウッドに飽き足らないディープな洋画ファンにもお勧めです。正月ボケの頭に喝を入れたい方にもお勧めです(爆。最後に一応タイトルについて解説しておきますと

Libertine=放蕩者

という意味です。デップファンの贔屓目もあると思いますが、真の感動が待ち受けている映画だと思いますので是非どうぞ。