ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

兵庫県立美術館:三つの展覧会

Museum061210
 昨日日曜日は夕方から会合があり市街へ出かけないといけなかったので、ついでに兵庫県立美術館へ足を伸ばしてきました。今回は興味のある展覧会が同時に3つも開催されており、安藤忠雄設計の迷路のような館内を行ったりきたりするのは大変でしたが、一粒で三度美味しいと言う思いをする事ができました。

Modigliani まず企画展示室の「エコール・ド・パリ」展へ。昔ジェラール・フィリップという早逝された名優が「モンパルナスの灯」という映画で演じたモディリアーニを見て以来ずっとモディリアーニのファンなので、これは見逃すわけにはいかないと思ってました。作品数は約80点とやや少ないものの昨日のスケジュールからすると丁度良かったです。

20世紀前半、フランスのパリは世界各地からやってきた若い芸術家たちの出会いの場となり、その交流から様々な芸術的成果が生まれました。モディリアー二、キスリング、シャガール藤田嗣治ら、この時代にパリで活躍した一群の外国人画家たちをエコール・ド・パリ(パリ派)と呼んでいます。この展覧会では、エコール・ド・パリと呼ばれる作家たちの絵画、彫刻を約80点展示し、そのプリミティヴ(原初的)な造形と、故国や民族への想いを託す郷愁の表現を紹介します。また、豊富な写真資料によって当時の芸術家たちの様子も振り返ります。(HPより抜粋)

 セザンヌ等の後期印象派から少し年代を経たフォービズム、プリヴィティズム等ののして来た時代ですから、今から見ると「元祖ヘタウマ」的な絵画が多く、個人的には上記の映画の思いいれのあるモディリアーニ以外でそれ程強烈にそそるものというのはありませんでしたが、それでもルソー、ドラン、キスリング、パスキン、シャガール、ブランシャール、一枚だけですがピカソ、といった有名どころ、そしてムッシュー・レオナルド・フジタやバンドーなどの日本人の絵もあり、それなりに楽しめました。ヘタウマ系の絵が続いていたせいか、出口近くにあるキスリングの「イングリッドの肖像(スウェーデンの少女)」の前では、その美しさに溜息と歓声があがっていたのが印象的でした。
 面白いところでは女優、歌手のモンパルナスのキキの素人っぽい絵も飾ってあったり、ザツキン、オルロフ等の彫刻も展示してあったりしました。

Kumisugai_1 続いてはコレクション展IIIです。兵庫県立美術館所蔵のコレクションを何回かに分けて1,2階の展示室で公開するのですが、今回は神戸の産んだ異色画家、菅井汲(すがいくみ)没後10年展がメインでしたので楽しみにしていました。以前、一青窈も彼のファンだとコンサートで喋ってました。

菅井汲(1919-1996)は、神戸に生まれ、阪急電鉄のデザイナーを経て画家となりました。1932年に渡仏してパリを拠点に活動し、単純な形象を追及しつづけて確固たる国際的地位を築きあげました。(HPより抜粋)

 極度に単純化された具象、原色の思い切った色使い、確かにポスターデザイナー出身というセンスを強く感じます。しかし「一億から離れて立つ」という強い意思の元に作られた作品群は、強烈な主張と容易には理解させないという高い精神性を以って見るものの前に屹立している印象を受けました。
 スピード狂でポルシェを愛した彼らしい代表作「ハイウェイの朝」などはまだ理解が容易な方だということが分かりました(・_・;)。ちなみに彼は自動車事故で瀕死の重症を負うのですが、その時の壊れた時速計の針は210を指していた、と自分で語っています。

 その他にも横尾忠則アンディ・ウォーホル池田満寿夫のポップ・アートやら、小磯良平記念室金山平三記念室ジョージ・マイケルが歌に詠んだエゴン・シーレ、先日オルセー美術館展で魅せられたマネの「モリゾ」のエッチング作品等、一枚のチケットで結構色々と楽しめる、お得な催し物といえます。時間が足りないのが惜しいくらいでした。

Pixars 最後は3階ギャラリー棟で催されていたピクサー展へ。実はこれが子供連れファミリーを中心に大混雑。実は土日休日でもいつもがらがらの駐車場が30分待ちということでビックリしていたのですが、これは駐車場が一杯になるはずです!でも、それだけの事はありましたわ(嘆息。予想GUYに素晴らしい展示でビックリしました。

ピクサー、グッJOBBS!(^_^;)

これならニューヨーク近代美術館大英博物館で展示しても通常の美術展になんら見劣りしませんね。というか、現代(ポップ)アートの展覧会はかくあるべし、というような今後の同種の展覧会の範になっていくような企画なのかもしれません。

1986年に創立され常に心温まる感動で作品をつづり。私たちに夢を与え続けてきたピクサー・アニメーション・スタジオ。ピクサー創立20周年を迎える2006年、世界にまた一つ新しいおとぎ話『カーズ』の誕生にあわせて、アニメーションの常識を塗り替えてきたピクサーの集大成となる展覧会、「ピクサー展~『トイ・ストーリー』から最新作『カーズ』まで~」を、兵庫県立美術館ギャラリー棟にて開催します。ピクサーの類まれな芸術性と創造性に光をあてる本展では映画のストーリーやキャラクター、世界観などを確立するために製作されたコンセプト・アート、スケッチ、ストーリーボード、カラースクリプト、マケットなど数多くの作品を初公開。世界に1点しかない本展のコレクションから、お馴染みのキャラクターや世界のコンセプトが、最終的に映画作品として完成されていく過程をおたのしみいただけます。(展示作品数 約250点)

 何と言っても巨大な画面に映し出されるイメージスケッチが刻々と変化して行き、ピクサーの世界観が一気に視覚的に把握できる「アートスケイプ」が素晴らしかったです。もちろん展示されている作品群も、ピクサーファンには興味深いものばかり。
 お馴染みの主人公はもとより、「ミスター・インクレディブル」に出てきた、ちょっとコシノジュンコっぽいデザイナーのエドナ・モード(絵葉書はテディ・ニュートン作)関連の作品は彼女の部屋の造型を含めて完璧にアートの領域でした。また、最新作「カーズ」に出てくる「ラクターころがし」遊びのトラクターキャラのモデルが牛の頭(つまりアメリカ伝説の悪戯牛転がしを下敷きにしている)である、というイメージ・スケッチなんかに思わずニヤリとしたり、色々な楽しみ方が出来ました。

 そして会場限定商品に弱い私は、限定絵葉書限定図録を思わず買ってしまったのでした。「モンスターズ・インク」のキャラのカード、シンプルなラインで可愛いでしょ(^_^;)。

 ということで、神戸近辺の方は是非どうぞ。おそらく平日はそんなに混んでないでしょう、ルミナリエで三宮は毎日毎日大混雑ですから、こちらの方が狙い目かも。