ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Mahler's Sym 6/ Sir Georg Solti & CSO (4)

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は: 皆様、長のおつき合いまことにありがとうございます。皇室に御子様誕生の祝賀ムードの中ではございますが、引きつづきマーラー6番聴き比べ大会をお送りいたします。本日は第1、第2楽章(スケルツォでございます、なお、中間楽章は現在はアンダンテースケルツォの順とされておりますが、Tas Saeki様の課題アルバムのショルティ盤の第2楽章がスケルツォでございますのでご了承下さいませ。
ゆ: では基本的な情報でございますが、各章の指定とコード、拍子、(3)でご紹介いたしました各盤の演奏時間は下記の如くでございます。

第1楽章
アレグロ・エネルジコ・マ・ノン・トロッポ イ短調 4/4拍子
ショルティ: 21'06
インバル: 24'22
バーンスタイン: 23'09
ブーレーズ: 23'06
ヤンソンス: 23'01

第2楽章
スケルツォ 重々しく イ短調 3/8拍子 小ロンド形式
ショルティ: 12'33
インバル: 14'46
バーンスタイン: 14'09
ブーレーズ: 12'19
ヤンソンス: 12'55

は: やはり、第1楽章ではショルティ盤の演奏の速さが際立っておりますね。
ゆ: 何と言ってもこの交響曲の印象を決定しているのは冒頭の威圧的な行進曲風演奏ですが、この出だしからのテンポが圧倒的に速いですね。なおかつ一糸乱れぬ演奏見事です。
 実際聴き比べてみますと、ヤンソンスもライブということもあってか結構速いですし、バーンスタインも割と速めです。しかしショルティがそのまま前のめりでどんどん速くなっていくのに対して、ヤンソンスバーンスタインもその後少し落ち着いてしまいますので歴然とした差は感じますね。

は: 葬送行進曲風と評されるのに妙ではございますね?
ゆ: まあ葬送風に重々しいのはインバルでしょうね。ちなみにレコ芸付録のバルビローリも遅いですね。確かに遅く重々しく開始するのが伝統的に正統なのかもしれませんが、現在の日本でこれを重々しくやるとゴジラの映画音楽風にしか聴こえないのが辛いところですな。
は: 伊福部昭先生畏るべしでございますね(-.-)、奥様も開口一番ついて出たお言葉が

「今度はゴジラかいな!」

でございました。
ゆ: 日本人のDNAに深く刻み込まれてしまいましたな。まあ、それはともかく演奏指定のエネルジコ・マ・ノン・トロッポというのは

激しくきびきびと

という意味らしいですから、別に葬式風に演奏しなくてもいいんじゃないのかなあ。楽譜的にみてもレコ芸の増田氏の解説によると冒頭は

スタッカートのついた低弦の8分音符の間に8分休符が入る

らしいから我々が慣れ親しんでいるあの葬送行進曲のようなリズム進行ではないと思うのですが。まあコードがAmですからにぎやかにやるわけにもいかんでしょうけど。
は: 「悲劇的」という副題もございますし。
ゆ: 悲劇的という印象を強く感じるのはブーレーズですね、現代音楽が得意の理知的な方と思っておりましたが、結構けれん味たっぷりにスピードを押さえ気味にして悲壮感を漂わせてます。やはりこの辺はラテンの血なんでしょうか。

は: では標題音楽的に優れているのはブーレーズということでよろしいのでしょうか?
ゆ: それがそうでもなくて、一番感銘を受けたのはバーンスタインですねえ。これだけ優れた演奏者の中でも飛びぬけて演奏の懐の深さ、解釈の重みが違うような気がします。
は: 確かに鬼気迫る序章でございますね、モットー和音と呼ばれる全体を統一する和音の響かせ方も鳥肌が立つ思いがいたします。

は: さて、第1楽章のもう一つの聴き所は「アルマの主題」と呼ばれる美しい旋律でございますが。
ゆ: これはヴァイオリンがメインとなりますのでVPOがさすがに良いですね。でも、ショルティも、途中ティンパニの胸のすくようなリズムをはさんでそこまで突っ走ってきた上に待った無しで突然ヴァイオリンの美しい響きに転換しますから、ホント聴いていて楽しいですね。
は: では第1楽章をまとめますと楽しさとスピードのショルティ感動の深さのバーンスタインといったところでしょうか。
ゆ: お見事はむちぃ君、それでよろしいかと存じます。

は: では第2楽章ですが、これもまた冒頭部分が常に話題になるようでございます。特に第1楽章冒頭部分との楽想の類似性が指摘されております。
ゆ: 3/8拍子で「重々しく」という指定で、何で第1楽章と類似性があるんでしょうか、クラシックはやっぱり(以下略)
(ー_ー)!!
は: またでございますか(ーー;)、私メも気苦労で茶色の美しい毛が抜けそうでございます、トホホ。
ゆ: すまんのう、はむちぃや(゜-゜)(遠い目)
は: はぁ、ではボケかけておられるご主人様に替わりまして、私メがレコ芸の増田氏の解説をまとめさせていただきましょう。
 まず「重々しく」指定でございますが、楽想は似ていてもコントラバスティンパニを使う事と八分音符を挟まないことにより、自動的に第1楽章よりは重々しく演奏できるのだそうでございます。後は同じテンポでやるかやらないかですが、これは各指揮者の判断に委ねられるのでございましょう。確かに4/4と3/8の拍子の違いを理由に違いを鮮明に出される井上道義先生のような方もおられますが、全体的には殆ど同じように演奏される方が多いようでございます。

ゆ: ますますスピードアップする指揮者もおられますな、ちなみに今回聴いた中ではショルティブーレーズが速くなりますね。ヤンソンスレコ芸には「変わらない」と書いてありますが、やや速くなっているような印象を受けます。
 ブーレーズ
の場合、第1楽章がゆっくり目ですからまだいいですが、ショルティさんはただでさえ速いのがますます速くなりますから目まぐるしい事この上ないですね。まるで昔のディズニーアニメのクライマックスを見るようです。多分この辺がTak Saekiさんのツボにはまるんだと思うのですが、こんなに速くていいんでしょうか、ほんとに(^_^;)
は: 増田先生によりますと、

マーラーメトロノーム記号を書いているわけではない

ので、速くする事自体に問題があるわけではないそうでございます。一つの解釈としてはスケルツォを第1楽章の延長と捉えた場合、テンポを落とすより上げる方がより

緊迫感が出る

からだそうでございます。
ゆ: なるほど、その緊迫感をディズニーアニメはパクったと、、、
は: ご主人様、ディズニー映画からは離れて下さいませ(-_-;)
ゆ: スマソ、でもしつこいようですが、殆ど変わらないインバルや遅くなるバーンスタインのやりかたもあり、ではないかと思いますね。

   ところではむちぃ君や(*^_^*)、
は: うっ、ここへきて何か嫌な予感(--〆)
ゆ: 家内が大ファンの阿部寛主演のTVドラマ「結婚できない男」で、主人公がマンションの痔疾で自室で、ちんけな結構なAVシステムの前に座って指揮者気取りで棒を振っているのは知っておろう?
は: はい、奥様が欠かさずご覧になっておられますゆえ(-.-)
ゆ: 実はな、あれを真似して第2楽章の3/8拍子を振っても振ってもなんでか演奏とあわなくなるんじゃあ(ToT)
は: はいはい、そんなことだろうと思っておりました、プログレファンたる者が変拍子も思いつかないとはトホホでございます。

 では、皆様、100Kマラソンのようなこのシリーズ、ヤラセもなく突っ走ってまいりましたゆえ、私メもご主人様も青息吐息でございますが、完走目指して頑張りますのでよろしくおつき合いくださいませ。
m(__)m