ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

雨の別れ

rainydrive 今日は一日中雨が降っています。先日が印象的な映画を二つ挙げたのですが、何か一つ忘れているなあと後ろ髪引かれる様な思いでいました。今夜家路を急いでいる時に、前を行く車のテール・ライトをぼうっと見ていて、はた!と思い出しました。

マディソン郡の橋
マディソン郡の橋

 原作も当時ベストセラーになっていたので読んでいました。正直言ってあまり良い出来の小説とも思えなかったので、映画化したら甘々のメロドラマになっちゃうんじゃないかなあ、と心配していましたが、クリント・イーストウッドの手腕の見事さに脱帽した覚えがあります。監督としての彼の素晴らしさを遅巻きながら認識させていただいた映画といえましょう。

 雨は最後の別れのシーンで激しく降ります。身も蓋もない話をすれば、撮影で雨を撮ろうと思うと、普通に見える雨でもかなりの水量が要るそうですから、あのシーンはそれこそダムが決壊したような、もの凄い量の水を流していたはずです。おそらくは滝に打たれる修行のような状態であったろうと思われる雨の中を立ち尽くすクリント・イーストウッド!自らが監督しているとはいえ凄い根性です(^_^;)。

 まあ冗談はさておき、ワイパーも利かないような雨の中、夫の運転する車の助手席で前を行くクリント・イーストウッドの車のテール・ライトを凝視するメリル・ストリーブ。そしてこの後彼の車が交差点を曲がってしまい、彼女は夫が横にいるにもかかわらずこらえきれず激しく嗚咽します。下手な女優の演技ならシラケてしまうようなプロットですが、さすがメリル、一世一代の名演を見せてくれます。
 失礼ながら彼女以上の美女は当時いくらでもいたし、イーストウッドの映画ならほいほい出てくれたと思うのですが、この雨の別れのシーンのために(これは私の思い込みですが)彼女を選んだイーストウッドの慧眼が、この映画を成功させたのではないでしょうか。