ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

スカーレット・ヨハンソン2作品

 真珠の首飾りの少女で注目していたスカーレット・ヨハンソンの出演作を二つ借りてきて見ました。なかなか面白かったです。

アイランド
アイランド

2019年、リンカーンは大気汚染から救いだされ、完璧に管理された味気ない都市空間のコミュニティで暮らし ている。安全で快適だけれど、退屈な日々。唯一楽しみは女性の居住棟で暮らすジョーダンとの心はずむ会話だけ...。ここで暮らす人々の夢は、地上最高の 楽園「アイランド」へ行くこと、ときどき行われる抽選会が彼らの最大の関心事だ。しかしリンカーンはある日ふとしたことから、この都市空間の恐るべき真実 を知ってしまう。(ワーナーHPより)

 クローン人間を扱った近未来SFです。韓国のスキャンダルがセンセーショナルな話題となっているとはいえ、SFとしてはありきたりのプロットですし、監督が「パール・ハーバー」でラジー賞最悪監督の栄誉を得たあのマイケル・ベイですから、はじめからやや引いていたんですが(苦笑、思いの他かっちりと作ってあって感心しました。導入部の作りが結構綿密なので、この監督が得意とする後半のアクションシーンを素直に楽しめます。完結したSFストーリーとして完成度が高いかというと、まあそうでもないけど、素直にアクション映画として楽しめばいいかと思いました。
 主役のユアン・マクレガーはまあどうでもいいけど(汗、スカーレット・ヨハンソンはやっぱり綺麗でした。こういうアクション映画で本領が発揮できるのかな?と思っていましたが、スーパーモデルのクローンが徐々に人間として目覚めていくという設定は当たりでしたね。
 明暗を分けたのが黒人俳優。美味しい役で存在感があったほうがジャイモン・フンスー。傭兵として主人公たちを追い詰めておいて最後はにやり&ほろりとさせてくれました。粋な俳優さんですね。可哀想だったのがグリーンマイルで強烈な印象を残したマイケル・クラーク・ダンカン。お腹を開けられかけて覚醒して大暴れしておしまい、という設定はちょっと気の毒でした。

ロスト・イン・トランスレーション
ロスト・イン・トランスレーション

ヴァージン・スーサイズ』で鮮烈な監督デビューを飾ったソフィア・コッポラ。そのリリカルな感性がさらに際立つ待望の第2作目が『ロスト・イン・トラン スレーション』である。違う文化、違う言葉、とりわけ無国籍都市として不思議な変貌をくり返す東京に放りだされたハリウッドの俳優、ボブ・ハリスと若いア メリカ人女性スカーレットの出会い。ともに、言い知れぬ不安と孤独感にさいなまれながら、年齢も性別も超えて、2人の魂は溶けあっていく……。(Cinema Topics Onlineより)

 400万ドルの予算、1ヵ月程度の撮影期間で4000万ドル以上の興行収益を上げ、なおかつゴールデン・グローブ賞3部門、アカデミー賞オリジナル脚本賞を獲得したトーキョームービーLost In Trasnlationです。こういうのこそスカーレット・ヨハンソンの真骨頂が見られると思っていましたが、監督が女性のソフィア・コッポラ、相手役として名優ビル・マーレイ、そして舞台として現代の異界東京と、最高のセッティングを与えられた中で存分にその魅力を発揮しています。

 いきなり彼女のお尻のアップで映画が始まった時には一体どういう映画になるんだ?と思いましたが(^_^;)、人生に疲れたハリウッド俳優と新婚2年目にして自分に自信を失いかけている新婚妻の淡い交感をさらりと描く、という私好みの展開でほっとしました。だからセックス・シーンは一切なし。それでいてファム・ファタールとしての資質を十分に感じさせる彼女はやはりいい!ルージュをその厚めの唇に塗るだけでぞくっとさせるところなんかは「真珠の首飾りの少女」の主人公を彷彿とさせました。

 相手役のビル・マレイも、疲れたハリウッド俳優が200万ドルというアルバイト(サントリーのCM)をエージェントに押し付けられて嫌々日本にやってくるという役柄がはまってました。日本人とのコミュニケーションの不毛に苛立ちを隠しきれず、また理解不能の異文化に拒絶反応を示しつつ、シャーロットという媒体を通していつしか日本に嵌ってしまう変化を見事に演じきっていました。彼の名前を聞くとすぐゴースト・バスターズを思い出してしまいますが、彼をしても異界東京の夜の魑魅魍魎は手に負えなかったようですね。

 ソフィア・コッポラはしばらく日本にお住まいだったようで、見事に今の日本を描ききっています。というか、夜の東京をですが。京都なんかはちょっとステレオタイプアメリカ人用のちょっとしたサービス程度の描き方でした。私も昔一年程東京に住んでいた事がありましたが、夜の世界にはとても足を踏み込めませんでした。へー、とかほーとか彼女に勉強させて貰いっぱなしでした。

 世界共通語となったKaraokeの選曲も見事でした。軽薄日本人の歌うセックス・ピストルズ(Anarchy In The U.K.)、スカーレット・ヨハンソンの歌うプリテンダーズ(Brass In Pocketだったかな?)も御愛嬌でしたが、何と言っても「これは苦手だ」とビルがお経のように抑揚無く歌い続けるロキシー・ミュージックの「More Than This」が絶品で、はらわたがよじれるほど笑わせてもらいました。エド・ウッドのおかま役と並んで彼のコメディアンとしての真骨頂かなと思いました。案外地のままだったりして(^_^;)

 それにしてもこの監督、現代日本のテレビ番組やクリエーターと呼ばれる人種の不毛と幼児性を見事に見抜いていますね、やはり日本人としては恥ずかしい思いがします。最後にはっぴぃえんどの「風を集めて」を持ってきたのもどうなんでしょう。彼女の単なる好みなのか、洋楽の真似っこから始まったジャパニーズ・ポップの根っこを見抜いていたのか?