ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

衛星放送映画二題

 久しぶりに映画の話題でも。録画しておいたNHKBS2映画劇場の二作「海辺の家」「息子の部屋」を見ました。どちらも人の死と向き合った映画で、名作といわれているそうです。しかし私見ですが、死を描くドラマというのは余程注意して作らないと押し付けがましくなったり、ひとりよがりになったりするので、正直駄作が多いと思います。この二作も駄作とは言いませんが、危ういところがありますね。

海辺の家
ケビン・クライン
ポニーキャニオン
2004-03-03


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死を間近にした父親と息子が、壊れかけたきずなを取り戻そうと心の交流を求める感動作。建築事務所デザイナーのジョージ(ケビン・クライン)は、突然20年間勤めた職場から解雇され、そのうえ自分が末期がんであることを知る。離婚した妻とドラッグにおぼれる息子と真剣に向き合い、昔からの夢だった自分の家を建て直す決意をする。嫌がる息子を手伝わせながら、限られた時間の中で、浜辺に息子と手作りの家を建て始める。(BSオンラインより)

 崩壊してしまった家族関係の建て直しを家の建て直しに重ね合わせたヒューマンドラマ。CG,アクション全盛のハリウッドでもこういう映画は作れるというところを見せた、という点で評価は出来ると思います。ケビン・クラインの演技も確かに素晴らしいです。しかし主人公が癌にならなければ家族との絆を再構築できないのか、また主人公の性格が奇矯すぎて悪役的に描かれる近所の人たちが却って気の毒に思えてくるなど、納得できないところは多かったので今一つ感情移入できなかったです。それにしてもアメリカ人ってどうしてあんなに安易にセックスするの?っていう感じでやっぱりハリウッド的映画なのかなあ。最後のひねりもいかにもハリウッドの脚本家だなあという印象。

息子の部屋 ~カンヌ受賞記念版~
ジュゼッペ・ランチ ナンニ・モレッティ シルヴィオオルランド
アミューズソフトエンタテインメント
2003-12-05


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精神科医として成功を収め、幸せな家庭を築き上げたジョバンニは、突然事故で息子を失ってしまう。ジョバンニは、妻と娘とともに悲しみに打ちひしがれ、次第に家族の心は離れ離れになっていった。そんな中、息子の恋人だったという少女が現れ、悲しみを分かち合ううちに、家族はゆっくりと息子の死を受け入れていく。イタリアを代表する映画監督N・モレッティが描く感動作。カンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞。。(BSオンラインより)

 こちらは本当にヨーロッパ的静謐さに満ちています。息子の死以外劇的な出来事は殆ど起こらないし、なんか映画の半分程度は精神分析医と患者のやり取りだったんじゃあないかなという印象。息子の死にしても潜水事故死なのですが、その場面さえ描かれていません。もちろんそういう手法は映画を撮る上で大事なテクニックだし、ハリウッド的でない欧州の伝統、技法として大事なものだと思います。しかしいくら息子が死んだとはいえ、一家の長がそこまでいじいじするなよ、これじゃ家族関係も崩れていくよって言うほどしつこく父の悲嘆を描かれるとちょっと食傷気味になるし、その割りに息子の彼女の出現と交流によっていとも簡単に笑顔が戻ってくるのも脚本として弱いような。え、これで終わり?という感じのラストでしたね。印象に残ったのは欧州映画に良く似合うBrian Enoの「By This River」

Before and After Science
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