ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

MY ROOM side 4 / Hiroko Williams

MY ROOM side4

 以前紹介したジャズシンガー、ウィリアムス浩子さんの「MY ROOM」企画第四弾「Side 4」がリリースされました。2年前、オーディオルームでの録音をスタートした時点で、一枚につきアナログLPの片面を想定し、4枚のミニアルバムを作るという構想でしたから、これがシリーズ最終アルバムとなります。ただ、好評を博しているアルバムだけに、今後もシリーズか続く可能性はあると思います。

1. Both Sides Now (Joni Mitchell)
2. All The Things You Are (Oscar Hammerstein II /Jerome Kern)
3.  Poinciana (Buddy Bernier/ Nat Simon)
4. Caravan (Irving Mills,Duke Ellington/Juan Tizol
5. A Nightingale Sang In Berkeley Square (Eric Maschwitz/Manning Sherwin)

ウィリアムス浩子(vo)/馬場孝喜(gt)
ゲスト:西嶋 徹 (b) on 1,3 / ヤマカミヒトミ(fl) on3

プロデューサー: ウィリアムス浩子
エンジニア: 新島誠(録音、ミキシング、マスタリング)
2014年12月~2016年2月、u3chi および Aby Studio Japan(Hirokoの部屋)にてレコーディング

『マイ・ルーム』シリーズ第4弾! 豊潤な音に包まれる安らぎのひととき
~あらためてリスニング環境を整え、彼女の繊細な息遣いを堪能してみてはいかがだろうか~  (小針 俊郎)

 浩子さんが自ら解説されているように、Side1,2が馬場さんとのDUOアルバムで「静」だったのに対し、Side3と本作は西島徹さんのベースとヤマカミヒトミさんのフルートを混じえた「動」のアルバムとなっています。その点、3,4の方がオーディオファイルには聴き応えがよりあると思います。

 一曲目のジョニ・ミッチェルの名曲、数多くのカヴァーがある「Both Side Now」も悠然として深い西島徹さんのベースがイントロに流れてとてもいい雰囲気で始まります。歌詞の深さをかみ締めるように歌う浩子さんと、つかず離れず寄り添う馬場さんのギター。一曲目に一番のキャッチをもってきた企画の勝利ですね。この一曲を聴くだけでも買った価値があります。

 二曲目は王道のスタンダードナンバー「All The Things You Are」、私はキース・ジャレット・トリオの「Standards Vol 1」のこの曲が好きですが、意外にヴォーカルで聴いた記憶があまりありません。彼女のヴォーカルと馬場さんのギターが「バッハのような対旋律」で受け渡されていく両者のテクニックは素晴らしい。かなりの難曲だったと思いますが、一発録音で録りきったとのこと、お見事です。

 三曲目はちょっと変わった選曲でアーマッド・ジャマルの「ポインシアナ」、ヤマカミヒトミさんのフルートがイントロで流れてエキゾチックな雰囲気を盛り上げています。

 四曲目は名曲「Caravan」ですが、馬場さんのギターテクニックが最大の聴き所、圧倒的に凄いです。

 ラスト五曲目は浩子さんにとって「ジャズへの扉」となってくれた大切な一曲だそうです。アニタ・オデイの歌唱で知り、世の中にこれほど美しい曲があったのかと何度も何度も聴いた、という「A Nightingale Sang In Berkeley Square」。
 いつかはこの曲を歌おうと、自己のレーベル名もこの曲からつけたというほどの入れ込みようですから、MY ROOM企画の掉尾を飾るのに相応しい歌唱です。

 自らのオーディオルームで録音した音質も今回も良好。言うことなし、と言いたいところですが、日本人にあわせてなのか浩子さんの歌唱のテンポが全体にやや遅いのがMY ROOMシリーズを通して気になるところではあります。ネイティブの発音もできて歌唱力もあるのだから、もっ闊達に歌われてもいいと思うんですけどね。

 それにしても素晴らしいシリーズであることは間違いありません。今後もできれば馬場さんとのギターDUOは続けていただきたいです。