ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

恋愛小説2 - 若葉のころ / 原田知世

恋愛小説2~若葉のころ

「 私が男だったら、原田知世に恋をして、そして、やさしくフラれて泣くだろう。ずるいなあ、知世さん。可愛く優しく美しく。そして、ひやりと冷たい・・・。 北川悦吏子 」

 原田知世さんの新譜です。好評だったカバー集「恋愛小説」に続く第二弾で、知世さんの少女時代の愛唱歌のカバーアルバムとなっています。AMAZONでのキャッチフレーズは

『 背伸びして歌っていた、あのころの私に。
短編小説の主人公を演じるように歌う、ラヴ・ソング・カヴァー・アルバム第2弾。』

 先行して流された「セプテンバー」が大好評でしたが、ついにCDが届きました。昨今のCD販促作戦で様々なバージョンが出ていますが、私はシンプルにSHM-CDのみの盤を購入しました。

 プロデュース及び楽曲アレンジは、前作に引き続き伊藤ゴローさん、もう鉄板のコンビですね。曲目は、

01. September
作詞:松本隆 作曲:林哲司 (竹内まりや・1979年)
02. やさしさに包まれたなら
作詞・作曲:荒井由実 (荒井由実・1974年)
03. 秘密の花園
作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂 (松田聖子・1983年)
04. 木綿のハンカチーフ
作詞:松本隆 作曲:筒美京平 (太田裕美・1975年)
05. キャンディ
作詞:松本隆 作曲:原田真二 (原田真二・1977年)
06. 年下の男の子
作詞:千家和也 作曲:穂口雄右 (キャンディーズ・1975年)
07. 異邦人
作詞・作曲:久保田早紀 (久保田早紀・1979年)
08. 夏に恋する女たち
作詞・作曲:大貫妙子 (大貫妙子・1983年)
09. 夢先案内人
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 (山口百恵・1977年)
10. SWEET MEMORIES
作詞:松本隆 作曲:大村雅朗 (松田聖子・1983年)

 各曲目については、HPで「原田知世と伊藤ゴローに訊く 『恋愛小説2---若葉のころ』の巡り方」と題した対談で語っておられます。知世さんが松田聖子ファンだったのはやや意外な気もしましたが、一方で原田真二さん、というチョイスが渋くていいですね。インタビューでは中性的で、甘くてハスキーな歌声が好きだったと語っておられます。そんな雰囲気が良く出ていると思います。

 さて、その歌唱はもう安定の知世クオリティ。インタビューで語っておられるように各曲でいろいろと考えながら微妙に歌い方を調整はされていますが、基本的には歌詞を慈しみ、優しく、丁寧に歌いこむスタイルです。
 これは近年伊藤ゴローさんとコンビを組むようになってから変わることはありません。以前も述べましたが、On-docプロジェクトでの朗読の成果がよく表れていると思います。

 逆に言えばこれだけは負けないという武器となるような個性があるわけではないので、例えば「異邦人」は柴田淳のカバーのような声域の広さやクリスタルボイスにはどうしても聴き劣りしてしまうし、「やさしさに包まれたなら」は今井美樹のカバーに比べて歌唱力や表現力がやや足りない感が否めないことも事実です。

 でも、知世さんには知世さんの良さがある。それは曲にとても誠実であること、聴くものを心地よくしてくれること。これは間違いなく彼女のアドバンテージだと思います。

 演奏ももう互いに気心の知り尽くした伊藤ゴローさんのプロデュース、編曲ですから万全の安心感。おまけにオーディオ的に音質も良いです。一曲目のイントロのドラムとエレクトリックベースの深みとグルーブ感にはおおっと思ってしまうほど。クレジットを見るとベースはやっぱり鳥越啓介さんでした。オーディオファイルの好きな女性ボーカルアルバムには殆ど顔を出しておられる超売れっ子ですが、知世さんの作品でも存在感を示しています。

 私の購入したのはSHM-CDのみの盤でしたがまあ正解かなと思います。SHM-CDは全体に音がやや硬質になるのですが、知世さんの声のマイルドさが程よく引き締まり、バックの演奏がソリッドに立っていて良いコントラストをなしていると思います。

 最後に個人的に気に入った曲を選んでみます。とってもかわいい「年下の女の子」、意外に知世さんにあっている百恵ナンバー「夢前案内人」、そしてやっぱり名曲「SWEET MEMORIES」です。