ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Accuphase P-7300 試聴記 @ ルーツサウンド

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Accuphase Stereo Power Amplifier (AB-class) P-7300 )

 2016年最初のオーディオ記事です。昨年末に「今年を振り返る2015 オーディオ編」で予告していましたとおり、アキュフェーズの新型AB級ステレオ・パワーアンプP-7300の試聴に1月11日ルーツサウンドさんへ出かけてきました。
 この新品、昨年12月にルーツさんに来て、来週アキュに帰るそうなので、ある程度エージングも進んだこの時期を狙っておりました。とは言え、まだまだこれから、というところで若干音は硬かったですが、その性能は十分に理解できました。

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 P-7000は、拙宅のアキュ製品では最古参です。もうかれこれ10年経ちますから確かにそろそろ買い替えの時期だとは思うのですが、ディナウディオ・サファイアにSPを替えても駆動力に特に問題なかったですし、またこれまで食指の動くステレオパワーアンプがアキュから出なかったのも事実です。
 アキュはA級アンプはどんどん新番が出るのに対し、AB級はP-7000以降はすぐにP-7100がでたものの、どういうわけかそれ以降P-7000シリーズの更新はありませんでした。別にA級が嫌いというわけではないのですが、P-7000のAB級独特のスカッと明るくて伸びやかな陽性の音が好きなんですね。
 ところが昨年末、満を持してM-6200のステレオ版としてP-7300の発売が発表されました。これはとても嬉しいニュースでした。9年ぶりに型番を更新したからには相当の自信があるのだろうと思いましたし、merryさんにも背中を押されて(笑)、買い替えを検討したわけです。とは言え、P-7000同様でかくて重い。前回は息子もいたので根性で自宅試聴しましたが、さすがにもう無理。というわけでルーツさんに出かけたわけです。

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System:
SACD/CD Player: Accuphase DP-720
Preamplifier:: Accuophase C-3800
Power Amplifief: P-7300
Loudspeakers: JBL Everest DD-55000

 前日にお願いしておきましたので、前段機器は拙宅のシステムとほとんど同じラインナップで、スピーカーは大型のJBL初代Everestを用意して暖機していただいてました。
 試聴室に入ると右手前にP-7300が鎮座していました。やっぱりでかい!ついでにまたまた一段と重くなったそうです。カタログでは48.6kg。ルーツさんが重いのは配達が大変、とアキュフェーズの方にぼやいたら、物量投入の方針は絶対変えないとおっしゃったとか。

 ルーツさんがエージングはまだ不十分とおっしゃっていた通り、確かにまだ音は硬くて伸びやかさはまだまだこれから、という気はしました。しかし、ダンピングファクター1000以上という十分すぎる駆動力はもちろんのこと、各楽器のセパレーションと明晰な表現能力、能率の高いJBLとは信じがたいほどの背景の静寂感(S/N比)、三次元的音像定位、録音者の意図したであろうミキシングの忠実な再現、いずれも素晴らしかったです。 とは言え、P-7000も率直な印象で言えばそれほど聴き劣りするわけではありません。そういう意味では素晴らしいパワーアンプと付き合ってこれたことを幸せに思います。

  あえてP-7000からの進化点をあげるなら、より明晰に、より正確に、より深く、よりニュートラルになり、個性を消して一段高いレベルがあがった、というところでしょうか。丁度プリアンプのC-2800シリーズとC-3800の違いのような感じです。あれほどドラスティックではないですが。

 それと、ウーファーはどちらかと言えば音量より音質を重視し、ビシッっとグリップして引き締め、スコーカー、ツイーターに遅れない音を出す印象がありました。だから個性よりも再生音の正確さを重視する現代型スピーカーに合うのではないかと思います。メールでルーツさんに「ディナウディオ・サファイアには、残念ながら、、、合い過ぎます!」とお返事いただいたのはその辺りのことをおっしゃっているのでしょう。

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 では持参したソフトのインプレッションを。

加古隆 / Anniversary 1973-2003 (SACD

  アニヴァーサリー

 パワーアンプを試聴するなら、拙宅で最も鳴りにくいソフトを、というわけで加古隆のこのアルバムに収録されている「パリは燃えているか」。オケの強奏部での頭打ち感やグランカッサの質感と力感の表現に苦労する曲で、近年ようやく何とか鳴らせるようになってきた曲です。強奏部でもさすがにP-7300だと余裕がある、と言いたいところですが、もともとかなりいっぱいいっぱいで録音されてたらしく、これはソフトの責任であろうということが確認できました。とは言え、グランカッサのかっちりとした質感と雄大な空間表現には一日の長があります。JBLの大口径ウーファーをしっかりとグリップして苦も無く駆動していましたし、各楽器の質感とセパレーションの良さは素晴らしかったです。

Adele / 25

25 (UK盤) ~ Adele

 ボーカルは声量と力強さではこの人だろうとAdeleをかけていただきました。もちろん一曲目の「Hello」です。冒頭の抑えた歌唱に対するリバーブのかかり方、サビでの声量を思い切って上げるところ、バックの女性コーラスやシンセのイフェクトのかけ具合、すべて拙宅よりくっきりとしている印象です。各音のセパレーションの良さだろうと思いますが、若干はエージング不足でまだ少し硬いのかなとも思いました。ただ、ルーツさんによると、先日同じソフトをもちこまれた方がおられて、その時はこんなに良く鳴らなかったとのことですのでこのかっちりとした質感がP-7300の持ち味である可能性の方が高そうです。

Grace Mahya / Last Live at DUG

ラスト・ライブ・アット・ダグ

 ジャズはやっぱりライブの活きの良さをどれだけ表現できるか、ベースやドラムの音はどうか、がパワーアンプの力の見せどころかなと思って、merryさんに教えていただいたグレース・マーヤのライブから一曲目の「Route 66」をかけてもらいました。さすがにJBLだけあって、ジャズはお手の物。ホーン型の前へ飛んでくる音が痛快。特に日野皓正のペットの音は最高でした。
 意外なことにJBLの大口径ウーファーでのベースやドラムの質感は拙宅のP-7000+サファイアとそう変わりませんでした。P-7300が低域をしっかり駆動してゆるみや鈍重さを消しサファイアの小口径二発と同じくらいの締め方をしているのでしょうか。

Victoria Mullova / Bach;6 Solo Sonatas and Partitas

Bach: 6 Solo Sonatas & Partitas

  最後はクラシックの弦の音をどれだけ繊細に表現できるかを確認。ガット弦を使ったムローヴァのバッハです。A級に比べると、艶やしっとり感には欠けるかもしれませんが、正確無比なプレイバックです。特に「シャコンヌ」冒頭のダブルストップを多用した部分での二本の弦の音の違いをくっきりと描ききったのには感心しました。
 どちらかと言えば明るめの音で好き嫌いは分かれるでしょうし、できればこの曲はルーツさんの最近のスタンダードであるフランコ・セルブリンで聴きたかった気もしますが、ムローヴァの正確無比な表現力とボウイングの見事さをきっちりとプレイバックするにはこれだけのアンプが必要なのかも、と思ってしまいました。

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 このあと、先日横浜のvafanさん、merryさん、スイートサウンドさんが感動されたという、TechDasの新型プレーヤーでアナログを聴きながら、ごにょごにょと色々交渉しておりました(笑。