ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

パウル・クレー展 & ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展@兵庫県立美術館

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 この頃休日のスケジュールが立て込んで行く機会を逸していた、兵庫県立美術館で催されている「パウル・クレー展」と「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム展」をようやく観てきました。
 大好きなパウル・クレーと子供の頃から慣れ親しんだマンガ・アニメ・ゲーム、究極の抽象と具象の間をたゆたう気持ちのよい時間をすごすことができました。

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『 どこまでも謎めいていること―。スイス出身のパウル・クレー(1879-1940)ほど、「秘密」を愛した近現代の画家はいないといっても過言ではないでしょう。パズルのピースを思わせる断片的な作品の姿は、それらがつながったときに現れるであろう全体や、どこかたわいない遊びを感じさせます。
 近年の研究により、例えば作品の下塗りの層や裏側に、もうひとつ別のメージを意図的に“埋蔵” するなど、この画家が仕掛けた密やかな暗号の全貌が、明らかになりつつあります。

 クレーは日本でも高い人気があり、これまでも充実した個展が開催されてきました。それらの成果を踏まえ、本展ではクレーが何を描き、どうスタイルを展開させ、どのような手順で作品を作ったかという紹介をするとともに、クレーの謎を正面から考えます。キーワードは「秘密」。謎解きだけではなく、常にミステリアスな気配をまとうクレーの思考と感性に分け入ることも目指します。そのため本展では、時系列ではなく、6 つのテーマで構成します。

 質・量ともに、クレー作品の重要なコレクションを擁するベルンのパウル・クレー・センターおよび遺族コレクションの全面的な協力を得て、日本初公開31 点、国内のコレクションを含む110 点あまりを展示。親しげで深いクレーの世界を通じ、見る人それぞれが心に秘めた原景を呼びさまされる、得がたい機会となることでしょう。(公式HPより) 』

 パウル・クレーの作品はもう何度も目にはしているのですが、こうしてパウル・クレー・センター等の協力により113点もの作品がそろうことは滅多になく、見ごたえがありました。まあ、紙に子供の落書きみたいな作品が一杯あるのもご愛嬌ですが。

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 クレーのどこがそんなに好きなんだ?と言われるとちょっと説明に困ってしまうのですが、幾つか挙げてみると

簡単で潔い線描
対象の究極の単純化
輪郭をものともしない多彩な色彩
所々ではっとさせる赤の矢印
静と動の対比、特に動きのリズム感

などでしょうか。特に彼は音楽一家に生まれ自身もヴァイオリンを弾いていたこともあり、今回のサブテーマの一つである「ポリフォニー」を強く意識させる作品を何点も描いています。この「赤のフーガ」などはその際たる傑作だと思います。

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(赤のフーガ、1921、絵葉書)

 そして今回のメインテーマは「だれにもないしょ」、近年の研究により明らかになってきた作品の下塗りの層や裏側に、もうひとつ別のメージを意図的に“埋蔵” するなど、この画家が仕掛けた密やかな暗号や、一つの作品をばらばらに解体して多数の作品に分割断片化する試み、表と裏に作品を描いて意図するところを見るものに推測させる試みなど。

 幾つかそのサンプルを見ましたが、まあ面白いと言えば面白いけれど結局作品一つ一つを観る楽しさに比べれば、あくまでも研究題材にしか思えなかったですね。そんな中でも表裏で描かれた「子どもと凧」「花と蛇」の二作品は興味深かったです。

 以下買った絵葉書から紹介

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「彼女は吠え、僕らは遊ぶ」1928: 色彩のにじみ具合と古代壁画のような線描の単純さがかもし出すクレーならではの雰囲気。

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「柵の中のワラジムシ」1940: 大胆で太い線が躍動しています。背景の原色系の色彩感覚も上手くマッチしています。

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「黒いハートと黒い樹」1939: 有名な作品で今更の感じもありますがいかにもクレーらしい作品。

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「悲しみ」1934: 画面を非常に細かく分割して色付けした上に単純な一筆書きのような感覚で描かれた女性の表情が印象的。

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兵庫県立美術館の外観。カエルは健在です。

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 というわけで、マニアックなクレー展をあとにして、どっちがマニアックなんだか、という世界に誇る日本のマンガ・アニメ・ゲーム展へ。いきなりセーラームーンやナルトのヴィデオ画像がお迎えしてくれます。

『「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展は、日本のマンガやアニメに大きな足跡を残した手塚治虫が亡くなった1989年以降のマンガ、アニメ、ゲームの表現の多様性を約60作品を通して概観するものです。

 昭和から平成に変わってからの四半世紀の間に、デジタル技術は大きく進化し、マンガ、アニメ、ゲームの制作スタイルや表現も変わり、インターネットやスマートフォンの普及は作品の楽しみ方を変えています。        

 また一方で、バブル経済崩壊(1991)、阪神・淡路大震災(1995)、地下鉄サリン事件(1995)、リーマンショック(2008)、東日本大震災(2011)など、歴史的な大きな事件を幾つも経験し、社会や世相も大きく変わりました。社会の変化と呼応しているような作品も少なくはありません。        

 本展覧会は「ヒーロー&ヒロイン」「マンガ、アニメ」「ゲーム」「インターネット」「キャラクター」「プレイ」の7セクションで構成し、1989年以降の特徴的な作品を通して、マンガ、アニメ、ゲームがどのように表現を広げてきたかを紹介します。(公式HPより)』

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 思ったより色々な作品の紹介がありましたが、我々の世代のマンガは殆どなかったですね。ゲームが出てメディアミックスになってきて以降の作品が多かったです。当然ながら動画やゲームもいたるところに配置され、子どももオタクも熱中しておりました。

 そんな中でも個人的に嬉しかったのは筒井康隆原作で5年前他界された今敏監督の「パプリカ」の絵コンテ、新海誠が注目されるきっかけとなった、彼が殆ど独りで創りあげた「ほしのこえ」の絵コンテ、これは涙もの。

 ゲームでは「GT6」の製作にかけるスタッフの執念とも言える努力の凄さ。車やレーシングコースのリアルさはただ単にCGの発達だけではなかったのですね。

 出口の外にはゲームが一杯。昔熱中したFFVIIが空いていたのでしばらく遊んでましたが、途中でやり方がわからなくなってしまったのがちょっぴり悲しかったです(苦笑。