ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Anthology -20th anniversary- / 木住野佳子

アンソロジー

 私の好きなジャズピアニスト、木住野佳子さんの新譜です。CDデビュー20周年を記念して、初期のアルバムの中からファン投票で選ばれた10曲を新たなアレンジで録音するという企画CDです。東日本大震災を追悼した「Prayer(祈り)」が追加されています。

1. マンハッタン・デイライト 
2. フェアリー・テイル 
3. ヴェラ・クルス 
4. ワルツ・フォー・デビイ 
5. デザート・アイランド 
6. ダニー・ボーイ 
7. ビューティフル・ラヴ 
8. テンダネス 
9. ナイト・アンド・デイ 
10. ジェンガ 
11. プレーヤー 

『 1995年にGRP初の日本人アーティストとしてデビュー。以来、優美で端正なピアノでジャズの域を超えた人気を誇るピアニスト、木住野佳子のCDデビュー20周年記念アルバム。デビュー・アルバム『フェアリー・テイル』から2000年リリース『テンダネス』までのキャリア初期のアルバムに収録されたスタンダード及びオリジナル曲の中から、ファン投票で選ばれた楽曲を、2015年新アレンジにて再録音。(AMAZON解説より) 』

ビートルズ・セレブレイション !

 私が木住野佳子さんの演奏を始めて聞いたのは「ビートルズ・セレブレーション」という当時新興だったレーベルGRPのオールスター企画で、日本盤で彼女が「Imagine」を弾いていました。さして印象に残る演奏ではなかったし、

「それはビートルズじゃないだろう!」

というツッコミを入れていたくらいでしたから、あまり印象はよくなかったです。おまけにその頃のスイング・ジャーナルに寺井尚子さんとKeiko Leeさんと美女トリオみたいな紹介のされ方をされていて、なにか「軽い」印象を持ってしまいました。

 もちろん音大出でクラシックのちゃんとしたテクニックは持っておられるし、「フェアリー・テール」などを聴いても、折り目正しい演奏をされる方であることは分かりました。が、大西順子上原ひろみなどと比べると、どうしてもお嬢様のイージーリスニング的なジャズという印象はぬぐえませんでした。

 そんな印象が一変したのが丁度10年前の旧大阪ブルーノートでのライブ演奏。ブログの記事にもしておりますが、結構アグレッシブな演奏を展開され、ノックアウトされてしまいました。

 とにもかくにも美女ゆえの偏見は拭い去られ、その後も折に触れては彼女の演奏を聴いておりました。「Tenderness」「PRAHA」などは特に好きです。

 さて、前置きが長くなりましたが、今回の選曲はファン投票だけあって至極妥当な印象。ライブでも演奏された彼女の代表曲ともいえる「Manhattan Daylight」から始まり、オリジナル、スタンダード取り混ぜての新たなアレンジでの新演奏には風格さえ感じます。

 一番親しみやすいのはやはり彼女の十八番「Danny Boy」でしょうか。彼女の解説ではやはり圧倒的な人気があってアレンジに悩んだそうですが、、今回はシンプルなピアノ・ソロで演奏されています。

 アレンジと演奏が一番気に入ったのはスタンダードなトリオ演奏である「Bueatiful Love」です。一番ジャズらしい、と書くとまだ偏見があるじゃないかと言われそうですが。。。

 最終曲は「Prayer(祈り)」。彼女自身の解説を写してみます。

「 震災や、痛ましい事件、なくなってしまったもの、傷ついてしまったこと、様々なことに直面して、それでも前を向いて進めるように、「祈り」を込めて演奏した曲です。
 皆さんの心にも、温かい祈りが届いたら嬉しいです。」

 彼女の人柄がよくわかる良い文章、そして印象に残る演奏だと思います。

   このアルバムを記念してのライブツアーも行われるそうですが、HPを見ると見事に平日ばかり...orz。聴きたいなあ。