では当日のセットリストを紹介します。まず今回はDolonさんのソースから。わざわざ拙ブログをお読みいただき私の好みのアーティストやソースを選んでくださった御気遣いに感謝しきりでした。
1:Victria Mullova: Bach Violin Concertos
#8: Conin G minor for vn, strs, and bc, BMW1056:II:
Largo
「十分ウォーミングアップはしてあるんですが、それでも出だしは硬いんですよ、ダイアモンドは」と前置きされてかけて頂いたのが私の好きなヴァイオリニスト、ヴィクトリア・ムローヴァ。最近はバッハのソロと、チェンバロとのDUOばかり聴いていますが、このCDは未聴でした。ムローヴァが厳選したオーケストラ団員とともに録音したヴァイオリン協奏曲だそうです。かけていただいたのは有名なアリア。
Dolonさんの言葉につられて「確かにムローヴァにしては硬いな」と最初は思ったのですが、すぐ自分の勘違いに気がつきました。私が最近聴いていると書いたバッハをムローヴァは、古楽器グァダニーニにガット弦を張り、バロック弓で弾いています。そのため非常に柔らかい音になっています。ちなみにこの二つのCDです。実は当日上のほうを持っていったんですがダブることもありかけませんでした。
一方このソースではおそらくいつものストラディヴァリで弾いていると思われます。そう気がついて聴き込むと、胴鳴りを十分に活かした闊達で芯のある線の太い、ムローヴァならではの音が眼前に現出してきます。これだけの技巧を尽くしているとなるとピリオド演奏ではないと思いますが、準ピリオド演奏的な模範的な演奏だと思いました。
それも素晴らしかったですが、バックの演奏も見事です。特にやや右手奥で奏でられるチェロの音に魅入られました。地を這うような低音はバスレフポートが底面にあるダイアモンドならではでしょうか。
そして平行法による方形の音場の中の各楽器の定位の磐石さ、各楽器のセパレーションの良さ、相当な音量でも無に近い底なしのS/N比による清潔な空気感等、Dolonシステムの実力をはじめから堪能することが出来ました。
2:Yo-Yo Ma Solo Kodaly Tchropnin
#1: 無伴奏チェロ・ソナタ 作品8第一楽章
SACDが出始めの頃、開発メーカーであるソニーがその威信をかけて制作したヨーヨーマのソロ。ヨーヨーマが石庭に感銘を受けて竜安寺で演奏したということでも有名です。
一曲目のコダーイの無伴奏チェロ・ソナタはその頃試聴会のマスト・アイテムとしていやというほど聴きましたね。ヨーヨーマの息遣いが生々しくもあり暑苦しくもあり(笑、チェロを極端なオンマイクで録音したその超絶技巧的演奏は圧巻です。
それをダイアモンドから2M弱という距離で聴かせていただくと、もう目の前に写真のヨーヨーマの姿が見えてくると言って過言ではありません。「迫真」という言葉がこれほど相応しい音は滅多に聴けるものではありません。パガニー二のDSD信号に読み取りの凄さ、ダイアモンドの楽器のリアルさの再現力、Dolonさんの直接音主体のセッティングが見事にツボにはまった圧巻のプレイバックでした。
3:Miki Imai: I love Piano
#2: 年下の水夫 with Ozone Koiso
「ボーカルは何がいいですか?」とぱらぱらCDを引き出しておられる中で目に付いたのが、「I Love a Piano」。声量や表現力のぐっと増した今井美樹が七人のピアノの名手と録音した珠玉のデュオ・アルバムです。
迷わず二曲目の小曽根真との「年下の水夫」をチョイス。Dolonさんもこのアルバムでかけるならこの曲と思っておられたそうでよかったです。
随分妖艶な大人の歌詞を説得力の増した今井美樹が歌いこむのに寄り添うように、あるいはやさしく包み込むように、そして時には濃厚にからみつくように伴奏する小曽根真のピアノタッチがたまらない曲なのですが、もう冒頭からピアノの一粒一粒の本当にリアルさにゾクッと来て本当に鳥肌が立ちました。
そして
「今夜このまま流されて
知らない国へ逃げますか
一夜で千夜を求めあい
過去も未来も捨てますか」
と妖艶なまでに艶の乗った今井美樹の歌唱に寄り添った後、展開されるインプロの見事さ。完全にやられました。ここまでの再現力を見せ付けられては脱帽するしかないです。
あまりオーディオファイルの間では噂にならないJ-popですが、Diamondにかかると立派なオフ会用ソフトとなってしまうのですねえ。
4:Marcus Miller: Silver Rain
#11: Girls and Boys feat. Macy Grey
「ゆうけいさんには是非マーカス・ミラーを聴いていただきたいんですが何がいいですか?」という嬉しいDolonさんのリクエストに迷わず選んだのが、メーシー・グレイをゲストに迎えて賑やかに楽しくワイワイ演奏している「Girls and Boys」、アルバム「Silver Rain」に収録されています。
マーカス独特の切れの良いスラップにより産み出されるフェンダーベース・サドウスキー改の音粒がまるでシャワーのようにビンビン前方へ飛んできます。平行法ならではの押し出し感とダイアモンドの音離れの良さの相乗効果ですね。そしてしわがれ声のおばちゃんメーシーの「All right, Marcus!」という合図から始まる楽しくて仕方ないという雰囲気のボーカル、そして彩を添えるホーン群の賑やかさ、どれをとってもクール!楽しくてしかたないご機嫌のサウンドでした。
5:Keith Jarrett Trio: Standars Vol.2 (LP)
A-1: So Tender
さて、いよいよアナログに移ります。「ゆうけいさんはやっぱりこれですよね」と出してくださったのが、キース・ジャレットの「Standards vol 1」と「vol 2」。エレクトリック楽器全盛でアコースティック・ジャズが下火となっていた80年代にキースが提示した新たなスタンダード演奏のかたち。当時熱狂的に受け入れられ、途中慢性疲労症候群でのブランクをはさみつつも現在に至るまで続いていることがこのスタンダーズ・トリオの凄さをそのまま物語っています。
その嚆矢であるとともに全盛期だったと言って良い二枚のアルバムです。アナログでお持ちとは羨ましい。で、好きな「So Tender」をかけていただきました。
Part 2でも書いたとおり、針が下ろされた途端に紗がかかったように眼前に現れた暗騒音の幕。平行法だとこれだけきっちりとした方形の区画になるのかと驚く反面、相当音量を上げないとこれだけの暗騒音は聞き取れないはずで、今までのデジタル演奏における音量での背景ノイズがいかに皆無に等しかったかが良く分かりました。
しかし本番はこれから。キースのピアノ、ゲイリー・ピーコックの分厚いベース、変幻自在のジャック・ディジョネットのドラムワークの三者三様のインプロビゼーションとそれぞれの個性を前面に押し出すことを重視した新たなスタンダード。バラードでありながらなんと熱い演奏。中域のエネルギーの充実とそれぞれの楽器のリアルさ、更に進化したアナログサウンドに痺れました。この音を聴いたらジャズファンは金縛りにあいますよ、きっと。
6:Paris Texas OST (LP)
A-3: Nothing Out There, A-4: Cancion Mixteca
そして前回のオフ会の思い出の一枚、映画「Paris,texas」のOST。今回は前回かけていただいた一曲前から聴かせていただきました。「Nothing Out There」のライ・クーダーのスライドギターのギュイ~ンという独特の音感にあの映画を切なく悲しくサポートしていたBGMを思い出します。「Cancion Mixteca」は典型的なラテン演奏ですが、映画のとても大事な場面で流れていた曲で、8mmフィルムの粗い粒子感の中で描かれる幸せだった頃の家族の海水浴風景が脳裏をよぎり何度聴かせていただいても熱いものがこみ上げてきます。
この曲で一旦休憩、ティータイムとなりました。その後時間の許す限り私のソースをかけていただいたのですが、長くなってきましたので次回ということで。
という事でミリオンヒット自主企画も次回で終了です、よろしくお付き合いのほどを。